You Shook Me All Night Long

政治用語で「お前らの意見は聞かん」の意味を表す「法に則って粛々と」という言葉があります。2010年に、当時の法務大臣だった民主党柳田稔議員が「法務大臣は『個別の事案についてはお答えを差し控えます』と『法と証拠に基づいて適切にやっております』の2つ覚えればいい」と発言して批判を浴び、大臣を辞職したことがありましたが、自民党では「粛々と」が好まれているようです。


んで、4月5日に沖縄県の翁長知事と自民党のガースー黒光り官房長官が、普天間飛行場移設問題をめぐって会談したさい、この「粛々と」という言葉遣いについて、かつて沖縄の自治権を「神話だ」と評したキャラウェイ高等弁務官に重なるとして翁長知事が批判し、官房長官は「この言葉は使わない」との考えを示しました。


そして、そのわずか2日後。


安倍首相、普天間移設は「粛々と」 参院予算委で答弁:朝日新聞デジタル 安倍首相、普天間移設は「粛々と」 参院予算委で答弁:朝日新聞デジタル

 安倍晋三首相は8日の参院予算委員会で、米軍普天間飛行場沖縄県宜野湾市)の移設工事について、「粛々と進めている」と述べた。日本を元気にする会の松田公太氏の質問に答えた。
 沖縄県翁長雄志(おながたけし)知事が5日、菅義偉官房長官が使った「粛々」という言葉に対し「上から目線」と批判。菅氏は6日の会見で「不快な思いを与えたということであれば、使うべきではない」と述べ、今後は使わない考えを示していた。

 松田氏が、同県名護市辺野古に基地を設置するための法整備の必要性を問いただしたのに対し、首相は「すでにある法令にのっとって、これは粛々と進めているので、上乗せして法律を作る必要はない」と答弁した。

この人はホント、いま日本で何が問題になっているのかなんて、まったく興味ないんでしょうねえ。何も考えずただテンプレを述べているだけで、なぜ批判されたのか理解する気もないんでしょう。ガースー黒光り官房長官の主な業務のひとつに、首相や閣僚が失言したときに記者会見で「問題ない」とフォローするという仕事がありますが、今回もできるんでしょうか。


それにしてもねえ。いまさら安倍さんを批判してもしょうがないけど、世間ではこういった一連のやり取りも「言葉狩り」だの「揚げ足取り」だのと矮小化する人が少なくないんですよね。そっちのほうがげんなりしますね。


だってね、これは「粛々と」という言葉だけが問題になってるわけじゃなくて、そこに込められている「黙ってお上に従っておれ」という態度そのものが批判されているわけでしょう。
「お国に逆らう非国民」と言いたいなら言えばいいのに、そうは言いづらいから言葉の問題に押し込めようとするわけですよ。


それにね、最近はとくに、抗議の声をあげたマイノリティに対して「言葉遣いが悪い。そんなやり方では支持者を減らすだけだ」みたいな嘲笑を浴びせる人が多いじゃないですか。
それなのに、権力者がどんな暴言を吐いても「問題の本質はそこじゃない。そんな批判のやり方では支持者を減らすだけだ」みたいな擁護論がどんどん出てくるんですよね。何だよそのダブルスタンダード、ってやっぱり思っちゃいますね。



権力者の内心を勝手に忖度してあげたところで、自分がそっち側の人間になれるわけじゃないのにねえ。