王妃の首飾り

雷句誠の漫画『金色のガッシュ!!』は、アニメ化もされたヒット作ですが、作者と版元の小学館との間でさまざまなトラブルが発生し、泥沼の法廷闘争を繰り広げたといういわくつきの作品です。

金色のガッシュ!!(1) (講談社漫画文庫)

金色のガッシュ!!(1) (講談社漫画文庫)

(いまは講談社から出ている)


んで、この作品をめぐって新たなトラブルが発覚しました。


「金色のガッシュ!!」使用料名目、2億円詐取容疑:朝日新聞デジタル 「金色のガッシュ!!」使用料名目、2億円詐取容疑:朝日新聞デジタル

 人気漫画「金色(こんじき)のガッシュ!!」のキャラクターの使用料などの名目で約2億円をだまし取ったとして、警視庁は8日、キャラクター商品の企画販売会社「MEDIL(メディル)」(東京都中央区)の元会長高津祥一郎容疑者(47)=埼玉県ふじみ野市=ら3人を詐欺などの疑いで逮捕し、発表した。

 他に逮捕されたのは、同社社長工藤慎吾(43)=埼玉県富士見市=と元社員豊平里志(35)=那覇市=の両容疑者。3人とも容疑を否認しているという。

 捜査2課によると、3人は、愛知県北名古屋市のパチンコ機器メーカーに対し、機器に「金色のガッシュ!!」のキャラクターを使う同意を原作者から得たとうそをつき、2010年4〜5月、許諾金や手数料の名目で計2億1千万円を詐取した疑いがある。

 作業が進まないことを不審に思ったメーカー側が容疑者に確認したところ、原作者を名乗る男が現れ、遅れを謝罪。本人に似ていなかったため、メーカーが直接原作者に確認し、偽物とわかった。

 「金色のガッシュ!!」は02年度の小学館漫画賞を受賞した少年向けのファンタジー漫画で、01〜07年に週刊少年サンデーで連載され、テレビアニメ化もされた。

この、逮捕された高津元会長って、以前はゲーム会社のSNK(現・SNKプレイモア)の広報担当だった人で、柴田亜美の『ドキばぐ』にも登場してた人ですね。

ドキばぐ (崖ッぷちでハロー編) (Beam comix)

ドキばぐ (崖ッぷちでハロー編) (Beam comix)

退社後はキャラクタービジネスを手がけていたようですが、今回の逮捕劇となりました。


被害に遭ったメーカーは、北名古屋市というと大一商会でしょう。台メーカーとしては中堅どころで、看板機種には「CR天才バカボン」シリーズがあります。高津元会長が以前在籍していたSNKのゲームともタイアップしており、「CR餓狼伝説」が発売されています。



それにしても、この詐欺の杜撰さはすごいですね。どうすればバレないと思ったんだろう。それより何より「ニセ雷句誠という人物像の禍々しさがすごすぎる。怖すぎるだろ!



フランス革命前夜の1785年、王妃マリー・アントワネットの友人と自称するジャンヌ・ド・ラ・モット伯爵夫人が、王妃に取り入ろうとするロアン枢機卿を騙して高額な首飾りを買わせ、それを騙し取るという詐欺事件がありました。この事件は映画や小説、漫画などでもよく題材になっていますが、ここでも首謀者のジャンヌは、王妃との謁見を求めるロアン枢機卿を、アントワネットに仕立て上げた娼婦と面会させ、信用を得ています。

マリー・アントワネットの首飾り [DVD]

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当時は写真もありませんでしたから、信用させることもできたでしょうけど、いまは写真どころかネットで画像検索できる時代だからなぁ。


ちなみに、ジャンヌは焼印を推されたうえでの終身刑に処されますが、王室に反感を持つ勢力の支援によりロンドンへ逃亡し、そこで「王妃とは同性愛関係にあった」とする著書を出版して、王妃をさらに中傷したのでした。これをうまくストーリーに取り入れたのが『ベルサイユのばら』で、法廷で王妃との関係を告白したジャンヌが「何の証拠があってそんなことを言うのか」と詰問されると、オスカルを指差して「あの人が何よりの証拠です。あんな、男の格好をした女を傍に置いておくなんて、普通じゃないでしょ」などと、作品の根幹をなす設定自体に、ミもフタもないツッコミを入れるのが印象的でしたなぁ。