マリアの香油
各地の寺社で、山門などに油のような液体が付着しているのが見つかり、ちょっとした騒ぎになっています。
さっそく「反日外国人による組織的犯行」などと騒いでるまとめサイトなんかもありますが、本当に事件性があるかどうかはまだわかりません。多数の観光客が訪れる場所ではさまざまな汚れも発生するでしょうし、どこかで「油がまかれたかも」と言い出したのを聞いたら、よそのお寺も「うちにもあるかも」と気になって探し始めて、見つけたら「あった!」と話題にするでしょうしね。ちょっと前に、ダイオウイカが各地の漁港で続々と水揚げされて「なぜ?」と話題になりましたが、さかなクンが「今までも網にかかっていたけど、食べられないけど漁師が捨てていただけ。話題になったからみんな港に持ってきただけ」と指摘したら多くの人が納得した、なんてこともありました。もうちょっと前には、各地のガードレールに金属片が挟まっているのが見つかり「子どもがひっかかって怪我をするように仕向ける、組織的なテロでは」と話題になりましたが、単に自動車が接触して破片が食い込んだもので、報道された効果でみんな気にするようになっただけ、なんて話もありました。「少年による凶悪犯罪が増えている」ってのと同じタイプの話ですが、今回の「油付着事件」も、それに近いヒステリア的なものを感じます。
んで、この油付着事件について、奈良在住の作家である寮美千子先生が、こんな考察をしています。
神社仏閣への油かけ案件って、外国人の信仰心が仇為す格好になっただけでは? - Togetterまとめ
- 作者: 寮美千子
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【東大寺の国宝・南大門に油か 大仏殿にも被害 】朝日 http://t.co/Wrzn2xR6ij 奈良県警は10日、奈良市の世界遺産・東大寺の南大門(国宝)や大仏殿(国宝)の須弥壇などで同様の被害が見つかったと発表 ←近いので確認しにいってみた
— 寮美千子 (@ryomichico) 2015, 4月 10
東大寺、国宝・金剛力士像の阿形像の木製の柵についた液体の跡、「アロマオイルの香りがした」と報道があり、確かめにいった。嗅いでみると、匂袋にも似た白檀系の香り。宗教儀礼などに使う香油の一種ではないだろうか。@ryomichico pic.twitter.com/kgOysIrm4w
— 寮美千子 (@ryomichico) 2015, 4月 10
東大寺にかけられた香油は白檀系の香りだった。アジア諸国では、仏像などに香油を掛ける祈りの形式がある。そのような習慣のある人々が日本を訪れ「祈り」のつもりで香油をかけている可能性が高い。報道しても外国人なので届かない。香油は禁止と、周知すべきだろう @ryomichico
— 寮美千子 (@ryomichico) 2015, 4月 10
「香油をかけると文化財が痛むので、絶対にかけないでください」と英語表示をし、外国語の旅行ガイドにも、大きく載せてもらうようにするべきだ。また海外からのツアーを企画しているツアー会社にも、周知すべき @ryomichico
— 寮美千子 (@ryomichico) 2015, 4月 10
文化財を傷つける意図がなく、深い祈りの気持ちで、わざわざ自分の国から香油を運んで、仏像などにかけているのだとしたら、非常に残念なことだ。悪意ではない可能性を充分考え、早急に対処すべきだと思う。@ryomichico
— 寮美千子 (@ryomichico) 2015, 4月 10
インドでは、石像や石のリンガ・ヨニなどに、香油を掛けて祈る姿を見た。ヒンドゥー教では特に多かったように思う。違う風習を持った外国の人が、祈りの気持ちを込めて、日本の寺院に香油を撒いている可能性もある。視野に入れて対処すべきだろう @ryomichico
— 寮美千子 (@ryomichico) 2015, 4月 10
神社仏閣の油かけ事件の報道を見ていると、新聞記者や寺院関係者も含めて「悪意」としか考えていない。異なる文化の習慣で「香油をかけて祈る」という可能性をまったく考慮していない。それだけ、日本人が異文化に無頓着であることの証だろう @ryomichico
— 寮美千子 (@ryomichico) 2015, 4月 10
ううむ、これは思いつかなかった。考えてみれば香油はキリスト教でも使われる、宗教の分野ではポピュラーなアイテムですしね。ラストのツイートによる指摘がまた重い。