沖縄のこの件について、ごく簡単に書いておきます。



機動隊員「土人」発言 激しい罵倒 その精神構造から見えるものは - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース 機動隊員「土人」発言 激しい罵倒 その精神構造から見えるものは - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース

 沖縄県の東村と国頭村に広がる米軍北部訓練場のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設に抗議する市民に対し、現場で警備に当たる機動隊員が18日、「土人」と発言したことに対し、市民や識者からは「沖縄への差別だ」「公務中の侮辱発言はおかしい」などと指摘する声が上がった。

 「土人」という発言は18日午後、金網越しに抗議行動をする市民らが「基地やめろ」と金網を揺らすなどしたのに対し、機動隊員が「おい、早く、立ち去りなさい」「立ち去れ」などと激しい命令口調で繰り返した。さらに「触るなくそ」「どこつかんどんじゃ、ぼけ」などと罵倒した後、「土人が」と吐き捨てるように発言した。
 これを受け、市民は「おい、ヤクザ」などと反発した。暴言を吐いた同じ機動隊員に蹴られたとの証言も複数市民から上がっている。
 発言を動画で撮影していた作家の目取真俊さんは「見下しており、沖縄に対する侮蔑だ。(このような発言をしても)何とも思わないことが時代の風潮になると怖い。このような機動隊に県民の税金を使わせていいのか」と強く批判した。
 現場近くのフェンス沿いで抗議に参加した名護市の30代女性は「大阪府警の機動隊だと思うが、巻き舌気味で全て脅しに聞こえた。まるで暴力団のようだった」と語った。
 横田達弁護士は「発言が侮辱罪に当たるかどうかは公然性があるかないかによる」と説明した上で「罪になるかどうか以前に、発言をした精神構造に問題がある。抗議市民を個人として見ていない。そもそも公務中の公務員が侮辱的な発言をすること自体がおかしい」と指摘した。
 精神科医香山リカ立教大教授は「市民を同じ人間として見ていないのだろう。発言した機動隊員だけの問題ではない。植民地のように扱ってきた沖縄への構造的差別が問題の根源にある」と分析した。

別の機動隊員は「シナ人」と暴言 北部訓練場、抗議市民に - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース 別の機動隊員は「シナ人」と暴言 北部訓練場、抗議市民に - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース

 米軍北部訓練場のヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)の建設を巡り、大阪府警の機動隊員が「黙れ、こら、シナ人」と暴言を吐いていたことが19日分かった。読者提供の動画などで本紙記者が確認した。県警は19日午後、「差別用語としてとられかねない不適切な言葉だ」との見解を示し、謝罪した。
 「シナ人」と発言したのは、「土人」と発言した機動隊員とは別だが、同じ大阪府警の機動隊に所属する20代の隊員。県警によると、18日午前9時ごろから米軍北部訓練場のN1ゲート付近で、政治団体と抗議活動参加者が口論したりもみ合うなどのトラブルがあった。その際、政治団体関係者から抗議参加者に対し「帰れ、シナ人」などと同様な罵声があったとし、「右翼関係者らの言動に影響された面は否めないが、いずれにしろ不適切な発言だ」とした。

 県警の聞き取り調査などに対し、機動隊員は事実関係を認めている。抗議参加者と政治団体とのもみ合いに大阪府警の機動隊十数人が間に入った際に、一人の抗議参加者に対して発言した。隊員は聞き取りに対し「興奮して思わず言ってしまった。差別的な認識はなかった」と釈明しているという。隊員は19日から警備現場を離れたというが、処分については「大阪府警が判断する」としている。

 辞書によると、「シナ」とは「外国人の中国に対する古い呼び名」としている。元々、外国人が中国を指して使う言葉として古くから使われていたが、戦後は侮蔑語として認識され、現在では使われていない。一方で、東シナ海など一部の言葉に残っている。


これらの暴言に対し「反対派も暴言を吐いている、売り言葉に買い言葉だ」とか「本来は差別用語ではない」などという擁護が少なからず出てきているようですが、いずれにしてもおおいに間違っています。


まず、警察は「やられたらやり返せ」が許されるような組織ではありません。国家権力と国民には途方もなく大きな非対称性があり、暴力装置を動かすためにはありとあらゆる局面で法的根拠が必要になります。その行動が不適切だったとき、「相手の責任だ」で済ませることはできないのです。「警察官もひとりの人間だ」というのは間違いではないのですが、公務中の警察官は、本来ならひとりの人間が持つことを許されないほどの力を、国家から仮託されているのです。


そして、「差別用語ではない」「言葉狩りだ」という意見は、決定的に誤っています。



たとえ「土人」が「先住民」、「シナ人」が「中華人民共和国籍をお持ちの方」に言い換えられたとしても、問題はそのまま残ります。ここにある問題は言葉のチョイスではなく、「植民地の人間のくせに、宗主国の権力に逆らうのはけしからん」という差別意識であり、「国家権力に逆らう人間は、外国人に違いない。それもわが国の仮想敵国である中国の人間だ」という、国家主義と権力の驕りにほかならないからです。



この問題は、単に該当の隊員をつるし上げるべきものではありません。警察という国家権力の実行部隊において、国家と国民の関係が根本的に理解されていないという、非常に深刻な問題であります。そして、これらの暴言を擁護し支持する向きも少なくないことを思えば、国民の間でも、民主主義という現代国家の原理原則が、あまりにも軽視されているということの証明でもあるのです。