2014いい肉の日

本日は11月29日、いい肉の日です。というわけで、仙台市のイタリア料理店「ハミングバード ヴェッキオ」に予約を入れ、「東北怪談同盟」の盟友である根多加良くん(id:netaka)と、熟成肉のステーキを喰ってきたッス。

和牛サーロイン。柔らかくジューシーで美味しゅうございました。



和牛もも肉。赤身のうまみが充分に味わえて美味しゅうございました。




珍しい熟成牛タン。タン先はコリコリと、根本の部分はプリプリとした歯ごたえで(違いがちゃんと表現できてるか不安だ)美味しゅうございました。



シメのドルチエ盛り合わせも美味しゅうございました。いい肉の日を、心から満喫した夜でございました。去年は根多加くんとサシで、柔道部の合宿みたいにむさ苦しかったので、今回は彼の知り合いである若くて可愛い女の子に同席してもらったんですが、最近このブログがアダルトビデオのレビューブログと化していることも当然バレていて、モノスゴク冷たい視線を浴びたです。いいんだいいんだ、オレのレビュー記事を春原未来さん本人のブログで紹介してもらったし。


http://blog.livedoor.jp/sunohara_miki/archives/42131856.html
何だろう、この恥ずかしさは。耳元で「わたしのビデオ見て興奮したんでしょ、ウフフ」と囁かれているような気持ちです(この人はそういうビデオもいっぱいやっていて、ものすごくうまいのである)。


しかしアレですね。『春原未来のすべて』を観返してみて思ったんですけど、これがなぜ革新的なビデオなのか、やっとわかりました。

春原未来という被写体のポテンシャルはもちろんズバ抜けているんですが、タートル今田監督の撮り方も、通常のドキュメンタリー系AVとは違うんですよ。


ああいう、ちょっと変わったことを言う女優を被写体とする、ドキュメンタリーAVはしばしばあるんですけど(有名な、アテナ映像の「飛影はそんなこと言わない」のビデオもそう。同じシリーズのビデオはとっくにデジタル化されてるのに、アレだけいつになっても配信されないが、やっぱり権利関係でマズいんだろうか)、だいたいの監督は、そういう子を「なんとかしよう」としちゃうんですよ。AV監督に限らず、だいたいの人は「私なんか生きてても仕方ない」みたいなことを言う相手には「そんなことないよ」って言ってやりたくなるじゃないですか。でも今田監督は、彼女の話すにまかせるだけで、決して否定しようとしない。
たとえばこれが代々木忠だったら、絶対に、彼女のトラウマ体験を聞き出して、それを克服させる展開になるだろうと思うんですよね。

代々木忠 虚実皮膜  AVドキュメンタリーの映像世界

代々木忠 虚実皮膜  AVドキュメンタリーの映像世界

代々木忠ほど露骨ではないにせよ、ほかの監督でも彼女のことを「なんとかしてやろう」とすると思うんです。実際、春原未来が出演したドキュメンタリー仕立てのビデオは何本かあるんですが(元女優の女流監督、真咲南朋が撮ったレズ3部作もかなりの傑作である)、だいたいの作品で、彼女のネガティブな発想や、自分を苦しめているプロ意識を変えようとする場面があるんですよね。


でも今田監督は、春原未来がしゃべることを否定せず、彼女の考えを変えさせようともせず、春原にずっとしゃべらせることで、彼女のやりたいことやなりたい姿について、彼女自身が気づくように仕向けているんですね。トラウマの解消ではなく、目的を重視しているというか。


つまり、従来のドキュメンタリービデオがフロイト的な方法論で撮られているのに対し、『春原未来のすべて』はアドラー心理学的なアプローチで作られている、といえるんじゃないですかね。

アドラー 人生を生き抜く心理学 NHKブックス

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まぁ別にフロイトアドラーでどっちが正しいか、という話ではないし、そもそもアダルトビデオの撮影は女優のカウンセリングではないんですけど、少なくとも、これまでのAVとは方法論が違う、というのはたしかです。


ちなみに、タートル今田監督は日本映画学校(現:日本映画大学)出身で原一男の教え子であり、やはり授業を持っていた森達也とともにオウム真理教の施設を取材しに回っていたこともあるとのこと。卒業制作はハンセン病施設で隔離されてきた老人たちのドキュメンタリー『熊笹の遺言』で、劇場公開や映画祭出品もされてけっこうな話題になりました。

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全身小説家 [DVD]

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映画チラシ 「熊笹の遺言」監督 今田哲史

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そりゃぁ、春原未来がいかに深い闇を抱えていたとしても、奥崎謙三井上光晴オウム信者ハンセン病患者に比べれば、だんぜん撮りやすい題材でしょうなあ。