高田龍のすべて

さて、タートル今田監督の「あの娘のドキュメント」最新作『江波りゅうのすべて』を鑑賞したッス。

【mp4】あの娘のドキュメント AV女優 江波りゅうのすべて | SHOP | HMJM | 面白いAVはここにある | ハマジム


ぼくがこのビデオに興味を持った経緯は、こちらを参照。
カテエ龍のすべて - 男の魂に火をつけろ! カテエ龍のすべて - 男の魂に火をつけろ!


主役の江波りゅうは、春原未来のようにパッと華やかな美人タイプではないけど、愛嬌があって、見ているうちに味わいが増してくる感じです。
小林まことの漫画に、よく「そんなに美人じゃないけど可愛らしくてムチムチ」という女性キャラが出てきますが、そういうタイプの人ですね。


その江波りゅうと、タートル今田監督が旅をして、語り合いながらハメ撮りをするという構成は『春原未来のすべて』と同じですが、江波さんは春原さんほど気難しくないので、インタビューでも反応に困るような発言はとくにありません。「子どものころから写真に撮られるのが好きだった」「高校を中退してブラブラしていたけど、友だちに連れられて高田龍社長のお店に来て、そこで働くようになった」「AVは楽しい」と、実に朗らかかつサバサバしているので、春原未来とは逆の意味でAVらしくない、といえるかもしれません。


インタビューでの見どころは、江波りゅうのサバサバした話しぶりより、むしろ高田社長のブルージーなしゃべりでしょうね。


ここで、プロレス界で明かされている高田社長の履歴と、ビデオの中で語っている近況をつなぎ合わせて、「地獄のど真ん中」を経験した男の人生を浮き彫りにしてみましょう。

  • SWSを解散させた谷津嘉章が設立したSPWF(社会人プロレス連盟)の事務局長に就任
  • 谷津の無責任さに愛想を尽かし、茂木正淑三浦博文らを連れてSPWFを脱退。北関東で手広く事業を展開するオーナーの支援を受け、レッスル夢ファクトリーを旗揚げし社長に就任
  • インディ団体の中でも底辺に近い活動をしていたが、日大レスリング部出身の福田雅一が入団し、将来のエース候補として期待される。しかし社長としては「うちより他団体に行ったほうが」と、その才能を活かしきれないジレンマに苦しむ
  • 親会社の業績悪化にともない資金繰りが悪化。福田は「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア」に参戦して高い評価を受けた新日本プロレスへ円満移籍し、レッスル夢ファクトリーは解散
  • 新日本プロレスへ移籍した福田雅一が、硬膜下血腫による4ヶ月の欠場から復帰して間もなくの試合で、柴田勝頼のダイビング・エルボーを受け意識不明となり、そのまま5日後に死亡
  • 高田はプロレス界から離れ飲食店(キャバクラとか)を経営し、そこで江波りゅうと出会う
  • 借金返済のため懸命に働いていた高田だったが、夢ファク時代の恩人だったという元新日本プロレス取締役の永島勝司と、長州力の誘いもあってWJプロレスの設立に常務として参加
  • ゴマシオの無責任な運営、長州のカテエ頭、すぐ壊れる金網などにより、数々のズンドコ伝説を残してWJはあっという間に崩壊。高田が出資したおカネも帰ってこない、という辛酸を味わう
  • 今度こそプロレスの世界から足を洗い、飲食店の経営に専念。また、ホステスだった江波りゅうのナイスバディと人前に出るのが好きな性格を活かして、彼女をグラビアアイドルとしてデビューさせる
  • 当時は黎明期だった着エロのパイオニアとして活躍し、「着エロクイーン」と呼ばれるようになる。高田社長と江波はお互いに「エロい撮影はやるけど、AVはやらない」と約束する
  • 江波りゅうが体調を崩し、摂食障害で激やせ→激太りを経験する間も、父親のような優しさで彼女をサポートする(江波りゅうは幼いころに両親が離婚し、母親と生活していたので、彼女のほうでも高田社長を「父親みたいな存在」と語っている)
  • しかし、信じていたスタッフの裏切りに遭い、10店近く展開していたお店をすべて人手に渡すことになる
  • 着エロのギャラは安く、それだけでは生活できないので、江波りゅうの撮影期間中もお店の給料を支払って補填していたのだが、お店がなくなったのでそれもできなくなる
  • そんなところへ、SODから江波にAVデビューの依頼があり、かつての約束もあって悩んだものの、江波りゅうが乗り気だったためやむなく承諾
  • 娘同然だという江波りゅうをAV女優としてデビューさせ、その後も既存のプロダクションにまかせることはせず、高田龍が事務所の社長(所属女優は江波りゅう1人)とマネージャーを兼任して、二人三脚でAVの世界を歩むことになる


といった感じで、前半のインタビュー部分は、江波りゅうと高田龍の語りが半々ぐらいで進んでいきます。アダルトビデオなのに、アップでしゃべるおじさんの姿が長いこと収録されているので、知らずに見た人はびっくりすると思います。


前作『春原未来のすべて』では、春原さんが以前の撮影で訪れた思い出の地だという、北海道の小樽へ監督とふたりきりの旅行をしていましたが、今作では、江波さんが初めての写真集を撮影したという伊豆は下田を訪れ、そこでビデオの撮影をします。そんな今田監督と江波さんが旅館へ着くと、高田社長も合流して、3人でお酒を飲みながらお話をするので、ますますアダルトビデオの常識を逸脱した展開が続きます。



んで、さすがに父親同前の人がいる隣室でハメ撮りをする気にはなれないようで(これが「テレクラキャノンボール」の戦友であるビーバップ・みのる監督あたりだったら、隣室どころか高田さんに男優役をやらせるところだが、今田さんの芸風はそこまで鬼畜ではない)、離れた別室で1日目の絡みが行われ、2日目では温泉でのヌードイメージ撮影、3日目には江波さんの生まれ故郷だという埼玉県のときがわ町に行き、彼女とお母さんが昔住んでいた家まで行くという、プライベートに肉薄した撮影が続くわけです。絡みの内容は濃厚ですが、それより高田さんの印象が強すぎて続けて見ていたらなかなか興奮できないという事態に陥る人もいるでしょう。一気に見るより、何回かに分けて鑑賞したほうが楽しめるかもしれません。


これは推測ですけど、高田社長が、江波りゅうをホステス→着エロ→AVまでずっと手元に置いて、やったこともないAV事務所の仕事までやりながら彼女の面倒を見続けるのって、笑顔で送り出してやったはずの福田雅一リング禍で亡くなったことと、決して無縁ではないと思いますねえ。


今作では、江波さんのボディも、今田さんとの絡みも申し分のない内容なのですが、カテエ派プオタとしてはどうしても高田の龍ちゃんに注目してしまう、そんな業から逃れられないのでありました。

プロレス「地獄変」 (別冊宝島 1630 ノンフィクション)

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