すごい百合AVの話(後篇)
昨日に引き続き、春原未来のビデオレビュー記事です。18歳未満の方、ポルノが苦手な方、同性愛描写が嫌いな方はご遠慮ください。
真咲南朋監督・春原未来主演によるレズドキュメント三部作のラストを飾る『挑発』について語るにあたり、まずはもう1人の主人公である、新山かえでについて紹介しておきます。
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兄との体験は、客観的に見れば性的虐待以外の何物でもないんですけど、本人は「お兄ちゃんに感謝してる。胸が大きくなったのもお兄ちゃんのおかげ」といい思い出みたいに語っているので、これまた心配です。虐待を受けた人って、往々にしてその環境に過剰な適応をしちゃうことがあるじゃないですか。そんな感じがしますねえ。
過去のことはともかく、現在は売れっ子として活躍している新山かえで。春原未来とはほぼ同期デビューで活動領域も近く、ライバル的な存在といってもいいでしょう。
第一部『素顔』では引退間近の先輩、第二部『卒業』ではこれまた引退していく後輩を相手にした春原ですが、第三部『挑発』ではほぼ同格の女優が相手となります。
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新山かえでは、この作品の前にもレズものに出演したことはありましたが、彼女はもともと同性との人間関係が苦手ということもあって、女どうしでイったことがない、と語ります。
なので、この作品では「ガチでやりたい」「気持ちよくないのに気持ちいいとは言わない」「イったふりはしない」と取り決めをします。
(ワイルドっぽい新山かえでと、ガーリーな春原未来のコントラストがまた良い)
新山はものすごく緊張していて、第一部の春原と似たようなテンパり具合ですが、すでに何度もレズ撮影を経験し、そのテクニックにも磨きをかけている春原は余裕たっぷり。
もともと男性相手での(主に舌と唇を使う)テクニックでは業界トップクラスといわれる彼女だけに、女性が相手でもその技は抜群。小悪魔のような笑みを浮かべながら新山を攻めます。
新山かえでは「今回の撮影では、本気でイクのが目標」と意気込んでいたのですが、いざプレイが始まると、春原未来のテクニック(指や舌の動きのみならず、言葉で相手の緊張をほぐし気分を盛り上げる心遣いも含む)に、わずか10分であっけなくイカされてしまい、潮まで吹かされて「信じられない」と驚くのであります。
(下着の上から触られただけでイってしまった新山かえで)
そして、お返しに今度は新山が春原を攻めるのですが、どこか不完全燃焼で、春原未来を追いつめるには至りません。
今作の春原は「自分がリードして新山をイカせる」ことにこだわっており、新山の攻めを受け入れる心の準備が、充分にできていなかったんですね。
前2作では、相手の存在を全身で受け止めていた春原ですが、今回は、相手が同期の新山とあって、「優位に立ちたい」という思いがあったようです。
ホテルの部屋で一回目の絡み、屋外でのデート、部屋に戻って二回目の絡み、と撮影は続いていきます。
新山がどうしても春原の牙城を崩せず、悪戦苦闘している様子を見てとった真咲南朋監督は、いったん絡みをストップして、2人を風呂に入らせます。
広い風呂にゆったりとつかり、軽くお酒を飲んでリラックスした春原と新山は、この撮影について話し合います。
新山が攻めてきたときの感想を「もっとやってみなさいよ、って感じだった」と語る春原未来。タイトルの『挑発』はここから来ていますがしかし、春原はこの話し合いで、自分が新山を受け入れようとせず、壁を作っていたことに気づくんですね。
風呂を出てからのプレイは、どちらかがどちらかをイカせるということにこだわらず、2人で協力しながらエクスタシーを目指すという方向になります。
寄り添ってベッドに入り「ふつうのカップルって、どうやって始めるんだろう」「ずっと撮影でばかりセックスしてたから、やり方がわからなくなっちゃった」とささやく2人。この辺は、役柄を演じるのでもなく、「ひとりの女性としての素顔」をわざわざさらけ出して見せるのでもなく、現役で活動している「AV女優」の偽らざる姿を見ることができます。
AVの世界には「レズビデオとはこういうもの」というクリシェがあって、バイブレーターやペニスバンドを用いた派手なものや、あるいはその反対に、しっとりと優しく相手をいたわりつつ演じる「リアル」なものがあります。だいたいはどちらかに分類できるといえます。
しかし、この『挑発』の後半で春原未来と新山かえでが演じるプレイは、誇張された派手なプレイに走ることもなく、逆に「本物のレズビアンはしっとり静かに愛し合うもの」という固定観念にとらわれることもありません。本質的には異性愛者である彼女たちが、これまでAV女優として積み重ねてきたキャリアの中で、獲得してきた性のあり方を、お互いに開陳しあうようなものになっています。
前半では余裕を見せていた春原未来も、新山かえでの舌と唇のみならず、顔面全体をぐいぐい押しつけてくるクンニリングスにはたまらず、全身を紅潮させて叫び声を挙げます。テクニックに勝る春原を、パワーとガッツでくらいついていく新山が、やっと追いつめたという構図です。プロレスでいえば、1979年ごろのアントニオ猪木vsスタン・ハンセンといった感じでしょうか。この喩えで理解できる人はかなりどうかしていると思いますが、本当にそんな感じです。こうしてテンションを上げていった2人が、クライマックスに選んだプレイは何かというと。
これが、エアセックスなんですよ。
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2人の肉体的な接触部分を見ると、性的なことはいっさいしていないにも関わらず、身体の振動とお尻への打撃だけでここまで興奮が高まるというあたりは、セックスは性器だけではなく心でするものである、というテーマの表れだと思いますね。「夜景の見えるホテルの窓に手をついて立ちバック」というのは、典型的なアダルトビデオらしいプレイで、よく「現代の日本人のセックスはアダルトビデオに毒されている」なんていいますけど、毒されるというなら、現場の女優さんはいちばん毒されているということなんでしょうね。
新山かえでのエアピストン運動で息も絶え絶えになった春原未来は、ソファに横たわると、性器を触る新山の手をつかんで、自分の首を絞めさせます。これは彼女が感極まったときに見せる行動で、最初はギョッとしますが、慣れてくると「あぁ、今日も満足のいくプレイができたんだな」と安心するようになるから不思議なものです。
こうしてプレイを終えた2人は、抱き合って涙を流しながら「ありがとう」「今日の撮影をやって、本当によかった」と健闘を讃えあうのでありました。
(AVではよく「パケ写詐欺」なんていって、商品パッケージに出る女優の写真が修正されすぎていて、実際の中身と違う顔になっていることを揶揄するが、春原未来の場合は、1本のビデオでも最初と最後でぜんぜん違う顔になることも多い。本気でセックスをしていれば、それぐらいのことは起こるものである)
レズAVというものは、演じる女優が本当のレズビアンであることはきわめて少なく、男性向けに誇張されデフォルメされたプレイを演じるのが常です。
このビデオの場合もそうで、春原未来と新山かえでは同性愛を演じるというより、相互にオナニーの手伝いをしあい、男女のそれに近い疑似セックスをしています。実際のレズビアンから見れば、これはリアルではない、と感じられるでしょう。
でも、本人たちが本当のレズビアンでない以上、無理に「リアルな同性愛」を演じるよりも、彼女たちなりの性のあり方を表現したほうがよりリアルであり、ドキュメントとして良い作品になるし、演者たちの魅力もより伝わるものになると思いますね。
この三部作は、リアルな同性愛を描くことではなく、アダルトビデオという特殊な世界において、女性たちがそれぞれの肉体への愛着と、同じ境遇にある女性へのシンパシーを表現するその姿を描いた作品だと思います。だから「レズAV」というより「百合AV」と呼んだほうがしっくり来る気がしますね。
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それにしても、この11月から12月にかけて、オレはもう春原未来にすっかり夢中で、ツイッターでも、『春原未来のすべて』を見た人たち(id:katokitizさんとかid:DieSixxさんとか)と「アレよかったよね」と熱く語り合うなどしていて、もう完全にどうかしています。来年でもう40歳だというのに、今さらAV女優のファンになってどうするのだ、オレよ。