「最初で最後の大舞台」

本日はフジテレビが久方ぶりにボクシング中継に乗り出しました。高校7冠の超新星井上尚弥と、ロンドン五輪ミドル級金メダリストの村田諒太を2大スターとして擁し、亀田一家のTBS、山中慎介の日テレ、内山高志テレビ東京に対抗すべく、大々的な売出しを開始したわけです。


後楽園ホールから、村田のプロテスト模擬試合と、井上vs佐野友樹(日本ライトフライ級1位)の2戦を放送。スタジオでは千原ジュニアら芸能人と元王者軍団がコメントするという、バラエティとボクシングのミックス構造はまぁ他局とほぼ同じです。


んでまあ、肝心の試合ですが。


村田のほうは、アマチュアあがりの堅実なボクサーというイメージを払拭すべく、左手のガードを下げたヒットマン・スタイルからフリッカー・ジャブを連発するという意外な戦いぶりを見せます。パートナーを務めた、元日本ミドル級王者の佐々木左之介を相手に強烈なパンチを次々ヒットさせ、ぐらつかせる場面もありました。オーソドックスなジャブとストレート、接近して右のショートアッパー、体を入れ替えながら打つ左フック、ノーモーションの右ストレートなどパンチは実に多彩。プロテストのスパーリングということで意図的にテクニックを見せた部分もあるでしょうが、正直なところ、ここまでプロ向きの戦い方ができるようになっているとは思っていませんでした。さすが金メダリストはモノが違うなぁ。こりゃプロでもいいところ行くぜ。


で、井上ですよ。

ザ・ベスト

ザ・ベスト

どういうわけかワム!の“フリーダム”で入場するという謎のセンスはともかく、リングに上がると持前のスピードで佐野を圧倒。早々に佐野の右目上をカットし、2ラウンドにはタイミング抜群の左フックでダウンを奪うなど、立ち上がりは文句なしでした。


ところが、3ラウンドあたりから右のパンチがぱったりと出なくなります。おそらく右手を痛めたのではないかと思われますが、タイトルマッチでもないのに生中継されるというせっかくの大舞台で怪我をするあたりは、ちょっと運のなさを感じるところです。
そこからはほぼ左手一本で戦い続け、強烈なスマッシュには目を見張りましたが、やはり左のみでは倒しきることができません。といって、佐野のほうも有効な反撃を見せることができず、不完全燃焼のワンサイドゲームというテレビ的にかなりまずい試合になってしまいました。


最終的には、ポイントで大差がついた最終ラウンド、井上の左フックがヒットして佐野がぐらついたところでレフェリーストップ。ちょうど放送終了一分前で、村田のプロテスト合格発表が入るというタイミングにはややテレビ的な作為を感じなくもないですが、まぁ試合を止めたこと自体は正当でしょう。会場ではブーイングもあったけど。


今回の中継では、どうしても許せないことがひとつありました。


30歳の佐野友樹は、これまで脚光を浴びることは少なかったし、この先の選手生活もそれほど長くはない。だから今日の試合にすべてを賭ける、という意気込みを語っていました。それはそれでいいんです。
ところが、実況の竹下陽平アナウンサーは「最初で最後の大舞台!」と何度も連呼するんですよ。ちょっと待てや
佐野は別にこの試合で引退するとか言ってないだろ! この試合で佐野がもし勝ったら、一躍脚光を浴びる可能性だってあったじゃないか。それなのに「最初で最後」と決めつけんなよ! フジテレビは「お前みたいな凡ボクサーをゴールデンタイムに出してやるだけありがたく思え」とでも考えてんのかね? こういう感覚で、「スターが噛ませ犬を倒すトコさえ見せとけば視聴者は喜ぶ」という、ナメた番組作りをされちゃ困るんだよね。
あと解説の西岡利晃、言葉に自信がないからって「どうでしょう」ばっかり言うな。


ホンッッッと、地上波のボクシング中継ってアナウンサーも解説者もダメすぎて話にならん。少しはエキサイトマッチの鉄壁トリオを見習ってほしいです。

ボクシング珍談奇談

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ダジャレを言えとはいわないからさあ。