“神の左”と“黄金の右”

今夜は、WBC世界バンタム級王者、山中慎介のV8防衛戦が行われました。


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150416-00000126-spnannex-fight

出た神の左!山中 2戦ぶりKOで8度目防衛成功


◇WBC世界バンタム級タイトルマッチ 王者・山中慎介―同級7位・ディエゴ・サンティリャン(2015年4月16日 大阪府立体育会館


 ボクシングのWBC世界バンタム級タイトルマッチが16日、大阪府立体育会館で行われ、王者の山中慎介(32=帝拳)が同級7位のディエゴ・サンティリャン(27=アルゼンチン)に7回36秒KO勝ちし、8度目の防衛に成功した。日本ジム所属選手としては、具志堅用高(13回)、長谷川穂積(10回)、勇利アルバチャコフ内山高志(9回)に続く5位タイの連続防衛記録となった。

 デビュー23連勝中の挑戦者を相手に、序盤から左フック、右のジャブを当てて優位に試合を進める山中。王者の圧力に、サンティリャンは早くも2回に鼻血を流し、顔面は赤く染まった。山中は4、5回と左をヒットさせて挑戦者にダメージを与えると、6回にはガードをかいくぐって左ストレートを顔面にヒットさせてこの試合初のダウンを奪う。7回開始直後にも“神の左”ストレートが顔面をとらえると、リングに尻もちをついたまま挑戦者は立ち上がれず。山中が圧倒的な強さで2戦ぶりKO勝ちし、8度目の防衛を飾った。

 通算戦績は山中が25戦23勝17KO2分け、サンティリャンが24戦23勝15KO1敗。

ここ何試合かの山中は、大詰めになると左ストレートにこだわりすぎて手が出なくなるきらいがありましたが、今夜の山中は右のリードブローがよく出ました。


挑戦者のサンティリャンは、身長161cmと低いわりにリーチが175.5cmある、という体格を生かして、山中の“神の左”を低い体勢のダッキングでかわしつつ、“ゴースト”と称される、死角から繰り出す右のオーバーハンドブロー(『はじめの一歩』で木村が使ったドラゴンフィッシュ・ブロー)を撃ち込むプランを立てていたようですが、山中は多彩な右のリードで中間距離を保ち続けてそのプランを潰し、試合の主導権を掌握します。


オーソドックスなまっすぐのジャブ、下から跳ね上がるフリッカー、距離を一歩詰めてのアッパーと次々に繰り出す山中の前に、サンティリャンは早いラウンドから鼻血を出し、顔面が大きく腫れるほどのダメージを受けます。挑戦者は苦し紛れか、烈海王ばりのぐるぐるパンチで王者に詰め寄りますが、山中は冷静に下がりつつ、密着した状態から右のフックで突き放して距離を取ります。


6ラウンドには、サンティリャンのガードの隙間にねじ込む、山中の真骨頂である左のコークスクリュー・ブローが炸裂。これが出ればもう山中の独壇場です。7ラウンドには右のフリッカー→体を入れ替えて反対の角度から“神の左”、という黄金のコンビネーションで、タフなサンティリャンをみごとノックアウトしたのでありました。


今夜の山中は、ここ数試合で見られた「右のバリエーションが少ない」という課題が完全にクリアされており、パーフェクトと言って差し支えない試合内容でありました。


以前から、山中には「他団体の王者と統一戦」「ラスベガスに渡ってビッグマッチ」などのプランが囁かれていますが、そろそろ本当に動かすべきじゃないかと思いますね。
国内のライバルでも、かつて山中に敗れた岩佐亮佑IBF王座への挑戦を目指して苦闘を続けていますが(相手側の都合で挑戦者決定戦がキャンセルになったりしている)、みごと戴冠のあかつきには、間違いなく王座統一を賭けて山中に挑んでくることでしょう。
WBCのスライマン会長は、WBAバンタム級スーパー王者ファン・カルロス・パヤノとの統一戦も目論んでいますし、ますます次の試合が楽しみになりました。


なお、同級でWBO王者と称する亀田和毅は、5月9日にWBA正規王者ジェイミー・マクドネルと「統一戦」をやると喧伝していますが、WBO事務局はマクドネルを王者と認めておらず(そもそもスーパー王者と正規王者と暫定王者の3人もチャンピオンを擁立するWBAの方針がおかしい)、試合を強行したら王座剥奪もあり得る、と強硬姿勢を取っています。JBCと揉めて日本から追放された亀田家ですが、今度はWBOからも追放されそうで、リング上での闘いに見る価値はないものの、相変わらずのズンドコぶりだけは注目に値します。