金メダリストの選択
ロンドン五輪ボクシングミドル級金メダリストの村田諒太が、プロ転向の意志を示しましたが、これにアマ連盟が猛反発しているようです。
http://mainichi.jp/sports/news/20130203k0000m050068000c.html
ボクシング:村田「アマ追放」 背景にプロ側への不信感
プロ転向に動いた村田諒大(27)=東洋大職=に対し、日本アマチュアボクシング連盟(日連)が「アマ追放」とも呼べる厳しい姿勢を取った。背景には(1)プロ側への不信感(2)国際アマチュアボクシング連盟(AIBA)との関係−−の2点がある。
日連は90年代半ばからプロとの交流を事実上断絶していたが、11年2月就任の山根明会長がプロ・アマ協調路線に転換。ロンドン五輪前に代表選手がプロの世界王者らとスパーリングを行うなど交流を推進し、プロ側が求めた「引退したプロ選手のアマ指導者・役員への登録」も認めた。
山根会長には「プロ側は日連強化選手の引き抜きなどはせず、共存共栄を図る」という「紳士協定」を結んでいた認識があった。それだけに「選手の意思は尊重するので、村田本人には『分かった、プロで頑張れ』と言った。だが、プロ側には裏切られた」と憤る。
また、山根会長は02年までAIBA常務理事を8年間務め、AIBA執行部と太いパイプを持つ。同五輪バンタム級2回戦で、判定負けを不服とした清水聡(自衛隊)の抗議をAIBAが受け入れ、勝敗が逆転したのも「山根会長とAIBA執行部との良好な関係のおかげ」(日連幹部)という見方がある。AIBAから名指しでAPB(AIBAが設立するプロ団体)への参加要請があった村田のプロ転向に、日連内ではAIBAとの関係悪化を懸念する意見が強く、村田に厳しい態度を打ち出す必要があった。
ただし、プロ側には「五輪前に引き抜くのは問題だが、五輪後ならば構わないではないか」(日本プロボクシング協会幹部)との論理もある。プロ・アマ間のルール作りの必要性が浮き彫りになった。【来住哲司】
http://mainichi.jp/sports/news/20130203k0000m050063000c.html
ボクシング:村田転向ならアマ追放 日本連盟が引退勧告へ
日本アマチュアボクシング連盟(日連、山根明会長)は2日、大阪市内で理事会を開き、ロンドン五輪男子ミドル級金メダリストで、三迫ジムからプロ転向する意向の村田諒太(27)=東洋大職=について、アマチュア選手としての引退勧告をすることを全会一致で決めた。プロ転向に踏み切った場合、アマチュア界との関わりを認めない方針で、事実上アマチュア界からの追放となる。日連によると、選手への引退勧告は初めて。
非公開での会合後、取材に応じた山根会長らによると、村田にはロンドン五輪後、国際アマチュアボクシング連盟(AIBA)が設立するプロ団体(APB)への参加の打診があったが、引退を理由に日連を通じて辞退。その一方で、プロ転向の意向を示したことがこの日の理事会で報告されたことから、「約束違反で国際連盟に対する信用の問題がある」として勧告を決議したという。
山根会長は村田について「連盟の宝。(アマチュア界で)指導者になってもらいたいと希望を持っていた」とこれまでの期待の大きさを語り、プロ転向せずにアマチュアで現役続行する場合については「やりたいというのであれば、あかんとは言えない」と容認する姿勢を示した。【細谷拓海】
村田諒太 今の段階では(プロに)行きたいという気持ちはある。ただ、皆さんに応援してもらう状況などもつくらなければならず、それができないのであれば行かなくてもいい。
サッカーのようにプロとアマが積極的に交流しているスポーツもありますが、多くの種目はプロとアマを厳密に区別しています。とくに厳しいのが野球とボクシングで、以前はプロ経験者がアマに指導することも禁止されていました。近年は多少緩和され、村田もロンドンに行く前にはワタナベジムや帝拳ジムで練習していますが、やはりアマ有望選手のプロ転向となると態度も硬化するようです。
村田は昨年、オリンピック後に引退の意向を示していましたが、心境の変化があったのか、今年になって現役続行とプロ転向を表明しました。
裏ではフジテレビが動いているという噂もありますが、ルックスも良く実力も充分の村田ですから、テレビ局がつくのもうなづけます。しかし、AIBAと日本アマチュアボクシング連盟の動きにはややキナ臭いものを感じます。
今朝のスポーツ紙で報じられたのが、このニュース。
http://www.sponichi.co.jp/battle/news/2013/02/02/kiji/K20130202005106750.html
日本アマボクシング連盟 国際連盟のプロ団体APB参加へ
日本アマチュアボクシング連盟が、国際連盟(AIBA)が独自に設立するプロ団体(APB)に、日本選手の参加を認める方針を固めたことが1日、関係者への取材で分かった。
AIBAは既に、APBに所属するプロ選手の16年リオデジャネイロ五輪出場を認可する方針を示している。しかし、WBAやWBCなどプロ主要4団体は五輪出場の対象外のため、国内トップアマがAPBに加わるかどうか、今後の動向が注目される。
日本連盟はこれまでAPBへの参加に慎重な姿勢を示していたが、AIBA側から強い要請があり、受け入れることになった。
そして、その数時間後に村田のプロ転向とアマ“追放”が取沙汰されたわけですよ。
村田がAPBへの参加を辞退したのも、日本連盟がAPBへの参加を渋っていた、その意向を汲んでのことと考えるのが自然でしょう。
もちろん、本人が「話は聞いているが、どういうものかわからないから」と話していたのも、おそらくは本心と考えられます。
APBは、
- 参加資格はAPBとの契約選手のみ。
- 契約金は約440万円で期間は4年間。
- 毎月約30万円が支払われ、試合ごとにファイトマネーも支給。
- プロ同様の採点法を採用。
- ヘッドギア非着用。
などの概要を検討しているといいます。参加選手に毎月30万円を支給するというのは、世界王者クラスしかボクシングで生計を立てられない現状を思えば素晴らしいことに思えますが、どこまで現実性があるのかは疑問です。村田が胡散臭さを感じたとしても、無理はありません。
村田がプロに転向するのも、このまま続行したらAPBに参加させられるから、それを嫌ってのことと考えるべきでしょう。
批判されるべきは村田ではなく、日本アマ連盟の“変節”じゃないんですかね?
連盟の意図もあってAPB参加を固辞してきたのに、その連盟が「やっぱAPB参加するわ、お前も来るよな」とか言い出したら、村田だって不信感を持つでしょう。それなのに、まるで村田がわがままで連盟との約束を反故にしたような言い方をするのは、フェアじゃないですよ。
すでに27歳の村田ですが、三迫ジムの大先輩でもある輪島功一は25歳でプロデビューして王者になっています。3月には、同じミドル級で37歳の石田順裕がWBA世界王者ゲンナジー・ゴロフキンに挑戦します。アマ時代の実績を考えれば、デビュー後の下積みは短くて済むでしょうから、年齢的に遅すぎるということはないでしょう。ミドル級は激戦区であり、世界に出ていくのは実力的にも政治的にも容易ではありませんが、ファンとしては村田の挑戦を応援したいものです。