明日のエースは君だ!
中期ウルトラマンシリーズを支えた脚本家のひとりである、石堂淑朗の訃報は記憶に新しいところですが、今度は市川森一まで亡くなるとは。
http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/111210/ent11121010310008-n1.htm
市川森一が手がけたウルトラシリーズでは、『ウルトラセブン』第37話「盗まれたウルトラ・アイ」や『帰ってきたウルトラマン』第25話「ふるさと地球を去る」が有名です。
マーティン・スコセッシの『タクシードライバー』を先取りしたともいえる「ふるさと地球を去る」については、こちらをどうぞ。
男の魂に火をつけろ! - ふるさと地球を去る
そして、市川森一がメインライターを務めたシリーズが『ウルトラマンA』です。
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ここには、クリスチャンである市川の思想が出ていて、男と女、すなわちアダムとその肋骨から生まれたエヴァが融合することによって人間は完全な姿になり、性別を超越した光の超人が生まれるというものです。そのため、エースのデザインや体型は、丸みをおびた中性的なものになっています。たくましく男性的なウルトラセブンとは対照的です。
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イエスを堕落させようとするサタンの姿は、『帰ってきたウルトラマン』第31話「悪魔と天使の間に…」や、『ウルトラマンA』最終回「明日のエースは君だ!」などで繰り返し描かれています。
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そして、どちらの作品でも無垢を装った悪は滅びますが、その代償として、ウルトラマンは正体を暴かれてしまうのです。
(『帰ってきたウルトラマン』では直接そう描かれていないが、郷秀樹隊員と伊吹隊長とのやり取りや、第33話「怪獣使いと少年」における伊吹隊長の行動からみて、隊長だけはウルトラマンの正体を知っていると考えざるを得ない)
『ウルトラマンA』は最後に地球を去るとき、子どもたちにこんな言葉を残していきます。
優しさを失わないでくれ。
弱い者をいたわり、互いに助け合い、どこの国の人たちとも、友だちになろうとする気持ちを、失わないでくれ。
たとえその気持ちが、何百回裏切られようと。
それが私の、最後の願いだ。
この台詞はのちの『ウルトラマンメビウス』でも繰り返されており、ファンに強い印象を残していますが、これも新約聖書「マタイの福音書」におけるペテロとイエスの問答(「主よ、私の兄弟が罪を犯したら、七度まで赦すべきでしょうか」「いや、七度の七十倍までだ」)をもとにしている、と切通理作が指摘しています。
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子ども番組でも「子どもだまし」にはせずに、キリスト教的モチーフを用いながらしっかりと骨太なドラマを届けてくれた、後進に大きな影響を与えた作家でした。ご冥福をお祈りします、というより、市川森一の魂が神のみもとにありますように。