欲望の司祭たち

※今日はエロのお話です。



はてな匿名ダイアリーの、この記事が注目を集めています。
ソープに200万ほど使ったのでセックスについて書く


ソープ通いを続けた男性が、ソープ嬢に「気持ちのよいセックスとは何か?」と質問していろいろ教わった知識を開陳しているもの。泡姫たちからは「気持ちのよいセックス」より「痛いセックス」の話ばかり出てくる、というあたりは興味深いですね。まぁ全体として「繊細に、優しく」という結論を導き出しているのはだいたいあってると思いますが、たとえ話にところどころ「?」な部分もあります。女性を抱きしめるときは「お気に入りのエロゲのパッケージを開けるとき」「精巧なフィギュアを扱うときぐらいの感覚で」、下着を脱がせるときには「買ったばかりのフィギュアをキャストオフするかの心境で」、と語っているのですがそりゃ逆だろふつう。エロゲをプレイするときは本当に女を抱く気持ちでやれ! とかフィギュアをキャストオフするときは実際の女性を脱がせる気持ちでやれ! というんならわかりますけど、その辺の倒錯がちょっと不気味というか、オタクのステロタイプだなぁと感じなくもないです。


ところで、ちょっと古い本ですがこんなのがありまして。

性商伝 (徳間文庫)

性商伝 (徳間文庫)

性産業の成功者たちにインタビューした、1990年の本です。この中に、ソープランド大手の角海老グループ会長(当時)、鈴木正雄氏(ボクシングファンには角海老宝石ジムの会長としておなじみだった)のお話も載っています。


角海老グループでは、全店で一日一万枚に及ぶタオルやシーツを自前で洗濯するリネン工場を持ち(今もあるかは知らんけど)、鈴木会長も週の半分はそこで汗をかいて働いていたとか。そんな鈴木会長が、1990年ごろになると時代の変化を感じ始めたそうな。

 おふろの中がだよ、ちょっと変なんだ。女も客もだ。
 おれは、例の工場でタオルやシーツのもみ洗いして気づくんだがね、昔のそれと”違い”となって現れてるんんだ。つい、このあいだもびっくりしたぜ。近頃の若い男も女も食い物がちがう。体力もってるから激しいのさ。だから男のあれも糊状でヘバリついてなかなかとれない。女の濡れだってぐっしょり、ベトついている。男は、客だから楽しむのはいい。けれど女は仕事だというのにすっかり気分出していってるんだ。体を売っても心を売らないのが、この世界。おつとめを忘れて気分出すっていうのは心もいくぶん売ったんじゃないか。すっかり意識が変わってあべこべだよ。セックスモラルが吹っ飛んだ、軽いんだな。目的なんて遠くにおいて腰かけのレジャー気分だろ。仕事も忘れて気分出してだ、はあはあ、これはいかん。

−本書p31

上で挙げた増田氏は、ソープ嬢にも気持ちよくなってもらおうと頑張っているようですが、お店の側から見るとそれはいかんことだったようですね。



ちなみにこの本には、AVの巨匠である代々木忠のインタビューも載っています。元増田氏も、女性に優しくないセックスが蔓延している元凶としてAVを挙げていますが、代々木監督のビデオはちょっと異色で、セックスを通して人間性の解放を目指そうとするラジカルなもの。女優の心を開かせ、正体を暴くことにエロスを求めるのが代々木監督の作風です。そんな代々木監督も、自分の正体を暴かれた経験談を話しています。


今から40年ほど前、当時30代だった代々木監督は、大阪のホテルに泊まって指圧師を呼びました。60歳過ぎぐらいのオバさんが来てマッサージをしてくれるのですが、そのオバさんは「お疲れやなア」なんて言いながら監督の股間に手をやり、「あら、お元気。やってあげましょ」とシゴき出します。
監督はさすがに「バアちゃん、いいよ」と断るのですが、バアちゃんは「年寄りバカにしちゃあかんよ」とかなんとかいいながらシゴキ続け、ついにはくわえこまれてしまったとのこと。
そのテクニックはすごくうまかったそうですが、「60過ぎのバアさんとしてるなんて」「こんな体験は誰にもいえない」と監督の内心では葛藤が渦を巻きます。バアさんは「あんた、素直になりなさい。気持ちええならおなごはんみたいに大声出したらええんや」と言いますが、監督の葛藤は続きます。体はイキそうなのに、どうしても素直になれません。黙っているとバアさんはこれでもか、これでもかと監督を攻めたてて…

 そこで最後にバアさんがこう言ったよ。「あんた、なんぼのもんや。あんたどれほどの男や」、と。
 もうバシーッときた。脳天がぶち割られたようなものだ。
 俺は、心の中で、人間を外面で差別しているな、とおもった。バアさんが神々しくみえて、もうおもいっきり気持ちよくなればいいとおもった途端、イッたんだ。そりゃ最高の射精だったよ。わんわん泣いた。泣くことは自分を許すことだ。
 あの体験は、いろんなものを俺に突きつけてきたね。今まで、どんなに格好ばかりを気にしていたか、中身を見られやしないかとおびえながら生きてきたか、それに気づいた。
 あのバアさんはしゃくだけど俺の師匠だよ。


−本書p53

これはなんとも味わい深いなぁ。代々木監督の半生を描いたドキュメンタリー『YOYOCHU SEXと代々木忠の世界』は、現在公開中です。


http://www.yoyochu.com/