対岸の彼女

先週の土日は、仙台と山形で角田光代先生の講座を受けてまいりました。


仙台の講座の模様は、こちらをご参照ください。
第一線で活躍中のプロ作家から学べる文学講座 せんだい文学塾/社会って、そもそもなんだろう?|宮城の新聞


翌日の山形では、地元の山形西高校から文芸部の女子高生が十人も参加して、いつもとは一味ちがう華やいだ雰囲気の中で講座が開かれたのですが、角田先生は、前日には仙台で講座の後に11時過ぎまで懇親会で飲み、山形に移動して12時過ぎにラーメンを召し上がってから宿泊、当日は正午から市内の書店でサイン会をこなした後に講座にいらっしゃるというそのハードスケジュールを感じさせないバイタリティで、受講生から提出された作品に講評を加えられていました。


今回の講座のポイントは、作品を生み出すモチベーションについて。


角田先生の場合、その根底には”怒り”があるとのこと。たとえば、映画化もされるヒット作『八日目の蝉』は、柳澤伯夫厚生労働大臣(当時)の「産む機械」発言に代表される、世間にはびこる母性の神話への反感が原動力になって書かれたそうです。

八日目の蝉 (中公文庫)

八日目の蝉 (中公文庫)

ただし、着想の原点が怒りにあったとしても、プロットに落とし込むときにはその”怒り”を削ぎ落とさなければ、作品が臭くなるとのこと。自分の正義を読者に押し付けるような小説では、ストーリーの面白さを語ることはできません。


作中人物に、著者の思想や信条をそのまま語らせてしまうような、そんな小説も世間にはまま見られますが、書くときにはそこから一歩引いて自分を客観視することが必要なんですね。


で、どんな小説をどんなふうに書けばいいのか知るためには、やはりたくさんの本を読むことが大切で、時間も必要です。角田先生も、文体の癖をおさえてストーリーで語らせる書き方が出来るようになったのは、デビューから何年も経った『対岸の彼女』のころからだった、とのこと。

対岸の彼女 (文春文庫)

対岸の彼女 (文春文庫)


とはいっても、血気盛んな若い人は「本を読め」とか言われれば反発したくなるもの。角田先生も、海燕新人賞でデビューしたてのころに先輩作家や評論家からそう言われて、「なんで他人の文章を読まなければいけないんですか」と反発したそうです。


今の若い人からもそういう反応が来ることがあり、角田先生が学生向けの講義で「ライトノベルが好きな人も、それ以外のジャンルもたくさん読んだほうがいいですよ」とアドバイスしたら、学生から「先生こそ、最近のライトノベルを読んでみてください!」と返されたといいますから怖いもの知らずもいるものだというか、若さってなんだ振り向かないことさというか、若さゆえのあやまちというのは認めたくないものだなといいますか。


というわけで、来月の告知を。

せんだい文学塾

http://www.lit.city.sendai.jp/guide/access.html

稲穂の海

稲穂の海

  • 受講料:一般2000円、学生1000円、高校生以下無料
  • 定員:90名
  • お問い合わせ・申し込み先:せんだい文学塾運営委員会sendaibungakujuku@gmail.com

(電話の場合、(有)荒蝦夷内 せんだい文学塾事務局 022-298-8455)

小説家になろう講座

  • 日時:2月27日(日)14時〜16時開講
  • 会場:遊学館山形県立図書館) 〒990-0041 山形市緑町1丁目2番36号 TEL 023-625-6411

http://www.gakushubunka.jp/yugakukan/

武士道シックスティーン (文春文庫)

武士道シックスティーン (文春文庫)

TEL023-628-3911(平日 10:00〜18:00)、問い合わせ専用アドレス sakka@sakuranbo.co.jp

この講座について

  • 文芸評論家の池上冬樹先生が、コーディネーターを務められます。仙台と山形で運営母体は異なりますが、雰囲気や内容はほぼ共通しています。
  • 山形の講座からは、「このミス大賞」出身作家の深町秋生さんと柚月裕子さん、『ガラスの煉獄』で新潮社よりデビューされた壇上志保さん、竹書房より『実話怪談 震』を刊行された黒木あるじさんを輩出しています。
  • 受講生から提出されたテキスト(短編小説、エッセイなど)を教材として採用しております。テキストは当日も配布いたしますが、希望者には事前にメール配信もいたします。一流の作家や評論家に自作を読んでもらえる、めったにない機会です。 創作をされる方は、いちど提出してみては。
  • 講座の進行としては、まず受講生にテキストを読んでの感想・作者への質問などを求めます。ついで作者による解説、それから講師による講評という流れで進めます。無言で参加することもできますが、なるべく発言したほうがより楽しめます。
  • 講座終了後には、講師の先生を交えての懇親会も開催します(会費は4000〜5000円ていど)。こちらへも参加されると、より深く楽しめます。
  • 近郊にお住まいで文芸に興味のある方、土日に東北へ旅行される方、ついでにワッシュ手作りのお菓子に興味がおありの方は、どうぞご参加ください。