K-1罪と罰

さて「プロレス罪と罰」ですよ。

プロレス 罪と罰 (別冊宝島) (別冊宝島 1721 ノンフィクション)

プロレス 罪と罰 (別冊宝島) (別冊宝島 1721 ノンフィクション)

今回は、プロレス関係ではあまり目新しい話題がないのに対し、格闘技業界の凋落を報じる記事「経営危機説が囁かれるFEGの深刻「未払い金」事情」がとにかく衝撃的です。


昨年の大晦日に開催された「DYNAMITE!」のズンドコぶりは記憶に新しいところですが、思えば数年前の大晦日には、各テレビ局がこぞって格闘技イベントを中継していたものです。それが今ではTBS一局となり、内容もお寒い限り。視聴率もついに10%を割り込みました。


ここで、過去10年の大晦日テレビ視聴率を見てみましょう。

年度 NHK 日本テレビ TBS フジテレビ テレビ朝日 テレビ東京
2001 紅白歌合戦(48.5%) ナイナイの年忘れ!(6.9%) イノキボンバイエ(14.9%)安田vsバンナ 晦日スペシャル 限りなく挑み続ける人々(3.5%) ビートたけしの世界はこうしてダマされた!?(8.8%) 海の上のピアニスト』(2.7%)
2002 紅白歌合戦(47.3%) ラーメンベスト99(7.1%) イノキボンバイエ(16.5%)サップvs高山 プロ野球珍プレー好プレー(6.4%) ビートたけしの世界はこうしてダマされた!?(8.6%) めざせ3億円山分けスペシャル(2.7%)
2003 紅白歌合戦(45.9%) イノキボンバイエ(5.1%)ヒョードルvs永田 DYNAMITE!(19.5%)曙vsサップ PRIDE男祭り(17.2%)吉田vsホイス ビートたけしの世界はこうしてダマされた!?(6.1%) マジック格闘技「T-1 GRAND PRIX」(2.2%)
2004 紅白歌合戦(39.3%) ネタ芸人ベスト13(9.5%) DYNAMITE!(20.1%)曙vsホイス PRIDE男祭り(18.3%)ヒョードルvsノゲイラ TVタックル(7.8%) 元祖! でぶや「kui-1グランプリ」(3.1%)
2005 紅白歌合戦(42.9%) お笑い ネタのグランプリ(9・1%) DYNAMITE!(14.8%)KIDvs元気 PRIDE男祭り(17.0%)吉田vs小川 TVタックル(6.0%) クイズ敵か?味方か?(2.4%)
2006 紅白歌合戦(39.8%) ガキの使い 絶対に笑ってはいけない警察24時(10.2%) DYNAMITE!(19.9%)桜庭vs秋山ヌルヌル事件 フィギュアスケート夢の競演スペシャル(9.9%) TVタックル(5.3%) ガイアの夜明け(3.4%)
2007 紅白歌合戦(39.5%) ガキの使い 絶対に笑ってはいけない病院24時(12.4%) DYNAMITE!(14.7%)桜庭vs船木 爆笑問題の一億分の一の男(3.2%) よゐこ無人島0円生活(11.8%) みそかハッスル祭り2007(4.0%)
2008 紅白歌合戦(42.1%) ガキの使い 絶対に笑ってはいけない新聞社24時(15.4%) DYNAMITE!(12.9%)桜庭vs田村 FNS2008年クイズ!!(4.4%) Qさま! 大みそかスペシャル(7.5%) ハッスル・マニア2008(3.4%)
2009 紅白歌合戦(40.8%) ガキの使い 絶対に笑ってはいけないホテルマン24時(16.4%) DYNAMITE!(16.7%)石井vs吉田 奇跡体験! アンビリバボー大晦日スペシャル(8.9%) 痛快! ビッグダディ9 大晦日スペシャル(6.6%) ルビコンの決断晦日特別版 ニッポンの大決断〜2009政権交代〜(1.9%)
2010 紅白歌合戦(41.7%) ガキの使い 絶対に笑ってはいけないスパイ24時(15.3%) DYNAMITE!(9.8%)青木vs自演乙 奇跡体験! アンビリバボー大晦日スペシャル(7.1%) そうだったのか! 池上彰の学べるニュース晦日スペシャル(8.6%) カンブリア宮殿 大忘年会スペシャル(1.6%)

※数字はビデオ・リサーチ調べ


2003年には三局が格闘技番組を放送しましたが、日テレの猪木ボンバイエが歴史に残るズンドコ興行となったことが一つの転機となり、この興行の主催者だった川又誠也は出場選手らからギャラ不払いで訴えられ、その腹いせか「なんで俺だけ責められなきゃならんのだ」とばかりにPRIDEと暴力団の関係を暴露して、PRIDEを崩壊に追い込むという事態に発展します。


こうして唯一生き残ったDYNAMITE!およびK-1ではありますが、業界全体の地盤沈下により人気は低迷し、石井館長の脱税罰金支払いのため多額のロイヤリティを石井一族に吸い上げられるシステムを構築され、資金繰りはますます悪化。選手へのファイトマネーやスタッフへのギャラ未払いが多く伝えられ、日本最大の格闘技運営会社FEGの経営危機はいよいよ深刻なようです。


本書では、ボブ・サップの「敵前逃亡」についても、関係者の談話として「未払いギャラの清算を条件に試合を受けたものの、入金が確認されたとたんにトンズラした」という説を紹介しています。


いっぽう、サップ側はこんなコメントを出しているとか。


http://sadironman.seesaa.net/article/181442108.html

  • 「当初この試合を3万ドルでオファーされたが、日本に到着した直後に谷川から1万5000ドルにしてほしいと言われた。俺は(以前のファイトマネーの半分に相当する)2万5000ドルでどうかと対案を出したが拒否されたから欠場することにした。その後、試合開始まで別の関係者たちが次から次へと俺を説得しにやって来たが応じなかった。当初の契約が3万ドルであったことの証拠も持っている」
  • 「2000年代中盤の絶頂期のファイトマネーは35〜40万ドルだった」
  • 「その後、スポンサーが谷川の行為について謝罪し、ファイトマネーの同額のお金が支払われ帰国した。彼らはK-1がとんでもない状態になっていることについて謝罪していた。一番の問題はK-1に全く金がないということだ。当然DREAMにもない。彼らは半年ほど前から他のファイターのギャラも踏み倒している」

そもそもサップの対戦相手は、大麻で大相撲を解雇された元・若麒麟鈴川真一でした。実はこの試合だけIGF特別ルール(要するにプロレス)であり、かつて曙をKOしたサップに相撲上がりの鈴川がリベンジするというアングルが、鈴川のボスであるアントニオ猪木によって描かれていたとのこと。負けブックのうえ相手は執行猶予中の犯罪者とあってテレビでも放送されず、ファイトマネーは半額にされ、キャラクター商品のロイヤリティももらえないときたらそりゃキレるのも無理ないでしょう。サップは以前にも興行をドタキャンしたことがあり、試合のしょっぱさも年々ひどくなっていますが、運営側のナメた態度によるモチベーション低下という部分もあるのかもしれませんね。


サダハルンバ谷川はこのコメントに対しツイッターで反論しているそうですが、いよいよ泥仕合も本格化してまいりました。プロレス界では、数々の団体崩壊劇がファンの眼前で繰り広げられてきたものですが、格闘技業界も体質は変わらないようですねね。