オスプレイで賛否両論(軍事ではない)

昨年の2月、女子プロレス団体スターダムの後楽園ホール大会において、チャンピオンの世IV虎とチャレンジャー安川惡斗のタイトルマッチが開催されましたが、凄惨な喧嘩マッチとなった結果、安川が顔面骨折の重傷を負い、一般マスコミでも取り上げられプロレス界の枠を超えた話題になりました。

週刊プロレス 2015年 3/11 号 [雑誌]

週刊プロレス 2015年 3/11 号 [雑誌]

この試合は、実力が伴っていないレスラーを無理に売り出そうとしたこと、また信頼関係ができていないレスラー同士を無理に戦わせたことによる事故でしたが、「こんなのプロレスじゃない」という批判が、プロレスファン内外から多く集まりました。とはいえ、プロレスが人間と人間のぶつかり合いである以上、最大限避けなくてはいけない事態であるにしろ、これもまたプロレスの範囲内であることには違いないとぼくは思いました。


これもまたプロレス - 男の魂に火をつけろ! これもまたプロレス - 男の魂に火をつけろ!


なお、あくまで女優でありレスラーとしては実力不足だった安川は、眼の持病もあり2015年12月にレスラーを引退。また、所属団体との不和もあり引退した世?虎は、一度は業界から身を引いて社会人として働いていましたが、のち他団体に移籍し、リングネームも「世志琥」と改名してプロレスに復帰しております。



時は流れて、2016年5月の現在。



またプロレス界を大きく揺るがす、レスラーや関係者、ファンたちの賛否両論を巻き起こす試合が行われました。



5月27日、あの凄惨マッチと同じ後楽園ホールで開催された、新日本プロレスベスト・オブ・ザ・スーパージュニア」公式リーグ戦、リコシェvsウィル・オスプレイの一戦です。


全身バネのごとき高い身体能力から繰り出すアクロバティックファイトで、空中殺法ナンバーワンの名をほしいままにするリコシェ選手。そこに、イギリスからやってきた「エアリアル・アサシン(空飛ぶ暗殺者)」の異名を持つ若き新鋭、オスプレイが挑むという構図です。まさに、空中殺法世界一決定戦といってもいいでしょう。
この試合は、ツイッターでファンがアップした30秒の動画により、彼らの人間離れしたムーヴが広く知られることになりました。
赤いショートタイツに坊主頭の選手がリコシェ、紫のロングタイツに金髪の選手がオスプレイです。


このツイートは5万RT以上され、海外でも話題になりました。



そして、かつて日本でも大活躍した巨漢の強豪レスラー、ビッグバン・ベイダーがこれを見て「これは体操やダンスの動きで、レスリングとしては悲しく思う」とツイートいたしました。


この意見がファンの賛否両論を呼んで話題になり、オスプレイは翌日の試合でベイダーの得意技とパフォーマンスを見せ、豪胆さをアピールしています。


また、この議論にWWEジェネラルマネージャーのウィリアム・リーガルや、元WWEで現・鈴木軍のシェルトン・X・ベンジャミンも参戦。くわしくはこちらをどうぞ。


enuhito.club


日本のツイッターでも、プロレスファン以外の人も巻き込んだブームになり、中には「これは格闘技ではない」というような反応もまま見られました。



この話題性を受けて、新日本プロレスは動画配信サービス「新日本プロレスワールド」にて、期間限定無料配信に踏み切りました。あの30秒のアクロバットではわからない、ハードな戦いの様子が見られます。
第8試合 「BEST OF THE SUPER Jr. XXIII」Bブロック公式戦 リコシェ VS ウィル・オスプレイ
会員登録も不要で、誰でも見れます。ぜひ多くの人に見てほしい。とくに、プロレスを知らない、見たことないという人にこそ見てもらい、感想を聞かせてほしいですね。


プロレスのルールを知らない、という人は「相手に覆いかぶさり両肩をマットに押し付けて、レフェリーが3回マットを叩くまで保てばフォール勝ち」「絞め技や関節技でギブアップさせれば勝ち」「拳で殴るのは反則だが、1回ぐらいならレフェリーにちょっと注意される程度で済む」「リングの外に出て、レフェリーが20カウント数える間に帰ってこれなかったら負け。両者とも帰ってこれなかったら引き分け」これだけ覚えてくれれば充分です。


こうやってね、プロレスについて語る行為もまたプロレスである、というテーゼを古参プヲタは共有しているものでしてね。こういう盛り上がりこそプロレスの面白さですよ。「プロレスとは何か」という問いに答えなんて出るはずもないんだけど、敢えて言うなら「プロレスとは何か、と考えることこそがプロレスの本質である」ってことなんですよ。どんなプロレスラーに聞いても、誰もが納得する答えなんてあるはずはありません。ただわかっていることは、「プロレスとは何か」を考えていないレスラーなんていないし、深く考えれば考えるほどそのレスラーの試合には味わいが増す、という事実のみです。


なお、この試合はYouTubeでも公開されてます。

  • 2016.5.27 KORAKUEN Ricochet vs Will Ospreay



とにかくみんな見てほしい。初心者にこそ見てほしい。そして、どう思ったのか意見を寄せてください。