黙秘権

さて今日のネタは。


http://www.asahi.com/national/update/1119/TKY200911190460.html

市橋容疑者「『黙っているなら親が死刑に』と言われた」

 千葉県市川市で07年3月、英会話講師の英国人女性(当時22)が遺体でみつかった事件で、死体遺棄容疑で逮捕された市橋達也容疑者(30)の弁護団が「不当な取り調べが行われている可能性がある」として、行徳署と千葉地検に調査を求める通告書を送った。弁護団が19日、千葉市内で会見して明らかにした。

 弁護団の菅野泰代表によると、市橋容疑者は18日に接見した弁護士に「(検察官の取り調べの際)『このまま黙っているなら、親が死刑になるべきだ』と言われた。そういうことを言われなければいけないのか」と疑問を呈したという。

 弁護団が市橋容疑者に取り調べの日時や、内容を書き込むために差し入れたノートには、県警、検察の取調官から「今のままの態度だと社会に出られない」「死刑もあり得る」と言われた、といった趣旨の記載もある、とした。

 また、逮捕後、絶食を続ける市橋容疑者は、ふらついた様子を見せたことから16日以降、栄養剤の注射を受けたことが捜査関係者への取材で判明しているが、弁護団によると、「強制的に注射されなければならないのか」と訴え、19日は投与を拒んだという。

 死体遺棄の容疑者には起訴前に国選弁護人をつけられず、市橋容疑者が両親に頼らない姿勢をみせ、経済的に私選弁護人をつけられない恐れがあることから、千葉県弁護士会が特例として、刑事弁護センターから弁護士6人を派遣、弁護団を結成している。県警などに取り調べの状況を、すべて録音録画するようにも申し入れている。

 千葉県警は「法にのっとり適正な取り調べをしていると思っている」としている。

えーと、そもそもこの市橋容疑者はあくまで死体遺棄の容疑でしか逮捕されてないわけで。この時点で「死刑もあり得る」というのは明らかに勇み足でしょう。2年半に及んだ逃亡生活ばかりが注目されていますが、その間に警察はどれだけ証拠集めをしていたんでしょうか。容疑を殺人に切り替えるのは、容疑者が逃亡中でも証拠さえあれば可能だったはずですが、もしかして「捕まえて自白さえさせればなんとかなる」という見通しだったわけじゃないでしょうね。


ぼくはこのニュース見て、狭山事件のことを思い出しました。


http://www.alpha-net.ne.jp/users2/knight9/sayama.htm


1963年に埼玉県で、女子高生が誘拐・殺害されたこの事件では、警察は身代金受け渡しに現れた犯人を取り逃がすなど失態を繰り返したあげく、被差別部落出身の青年を別件逮捕しました。


そして、抗議の絶食を続ける容疑者に対し、「別件だけでも10年は刑務所に入ることになる」「殺害を自供すれば10年で出してやる」「否認を続けるならお前の兄を逮捕する」などと圧力をかけ、教育を受けておらず自分の名前も漢字で書けなかった容疑者は、この脅しを真に受けて”自白”に及んだのでした。


事件はその後、被害者の親族や縁者が次々に変死するなど謎めいた展開を見せますが、裁判ではそれらは一顧だにされず、一審では死刑判決、控訴審では無期懲役判決が出て、最高裁で上告棄却され刑が確定。服役中、獄窓からの何度にもわたる再審請求はすべて却下され、仮出所してからも、元被告の無実を訴える活動は続けられています。


昨今は取り調べの可視化を求める声が高まっていますが、46年前の問題の多い事件と似たような捜査をいまだにやっているようでは、日本の司法もたかが知れたものといわざるを得ないですね。

狭山事件 ― 石川一雄、四十一年目の真実

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