県警対非組織暴力

足利事件無期懲役が確定し、収監されていた菅家利和さんが、DNA鑑定の結果、無罪が確定的となって釈放されました。


で、事件当時に捜査の陣頭指揮をした栃木県警の元幹部が運営していたブログが炎上し、削除されたとのことです。


http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0906/05/news097.html


この元幹部は、昨年、再審請求が棄却されたときに「感慨無量であります」「最善の捜査を尽くしたものであり、誤りでないことを再確認していただいた」などとそれを歓迎するエントリを書いており、菅家さんが釈放されるや、その記事にコメントが殺到した模様。


書き込まれたコメントはたしかに悪質で(脅迫的なものも少なくない)、ネットイナゴの典型といわざるを得ないですが、でもこの老人は批判されてしかるべきだと思うなぁ。(あくまで正当な手段で、ね)


逮捕当時の報道では、取調べは朝から14時間にも及んで続けられ、夜の10時を過ぎてようやく「私がやりました」と自白した、とありましたがこれは警察の熱心な捜査を讃えるような論調で書かれており推定無罪という原則をまったく考慮しないマスコミの体質がうかがえます。

ちなみに、今回の報道では「足利事件」といった場合1990年に発生した4歳女児殺害事件を指していますが、足利市では1979年と84年にも女児が殺害される事件が発生しており、1987年と96年には近隣の群馬県太田市でも女児が殺害され、いずれの事件も未解決のままです。


菅家さんは79年と84年の事件でも被疑者とされ、一度は自供しましたが、アリバイを証明する目撃者の証言を撤回させるなど、県警が違法な捜査をしたこともあってこちらは不起訴となったのでした。


この辺をふまえて考えると、この元幹部の発言は、老人の思い出話としてもあまりに我田引水に過ぎるとの批判は避けられないと思います。


まぁ刑事というものは、自分の過去の捜査活動について否定的に言及はしないものなんでしょうけどね。

刑事一代―平塚八兵衛の昭和事件史 (新潮文庫)

刑事一代―平塚八兵衛の昭和事件史 (新潮文庫)

警視庁捜査一課の鬼刑事として知られた平塚八兵衛は、小平義男事件や吉展ちゃん事件などを解決に導いたとして名高いですが、帝銀事件では平沢貞通に対して拷問まがいの取調べを行い、コルサコフ症候群の後遺症で虚言癖のあった平沢の自白を証拠として、死刑確定にまで持ち込みました。平塚はこの功績によって警察庁長官から警察功労賞を受けており、退職後も、数少ない平沢クロ説の信奉者として本を書いたりしていたのでした。(↑こちらも、珍しく平沢クロ説を採用している本)


平塚八兵衛をモデルにした、渡辺謙主演のテレビドラマが6月20日と21日に放送されますが、こちらでは、榎木孝明が演じる平沢貞通が真犯人ということになっているんでしょうか。


http://www.tv-asahi.co.jp/ichidai/


また、平塚が捜査した事件の一つであるスチュワーデス殺人事件では、容疑者となったベルギー人神父は、血液型を知られることを嫌って、5日間にわたった取調べの間、一度もトイレにも行かず、出されたお茶やジュースにもまったく手を付けなかったことが知られています。


http://www.alpha-net.ne.jp/users2/knight9/stewardess.htm


当時はDNA鑑定なんて影も形もありませんでしたが、警戒心の強い人というのはいたんですねぇ。

黒い福音 (新潮文庫)

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この事件では、容疑者がカトリックの神父だったため、ヴァチカンから捜査当局に圧力がかかったとも言われています。
HELLSING 8 (ヤングキングコミックス)

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死んだ仏教徒だけがいい仏教徒だ!とかいってたりして。