記憶の遠近法

記憶の遠近法 (河出文庫)

記憶の遠近法 (河出文庫)

漆間副長官の発言が話題になっています。


http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090309-OYT1T00843.htm

漆間副長官「そういう発言したことないという記憶になった」

 漆間(うるま)巌官房副長官は9日午後、首相官邸で記者会見し、西松建設の違法献金事件を巡る東京地検の捜査が自民党には及ばないとする見通しを示した自らの発言について、「私と3人の秘書官の記憶を突き合わせた結果、そういう発言はしたことはないという記憶になった」と述べ、発言自体を否定した。一方で、「メモを取っていたわけではないし、録音もしていない。もし私の記憶に誤りがあれば(事実と)違うのかもしれない」と語り、記憶にあいまいな部分が残ることも認めた。

 漆間氏は5日のオフレコの記者懇談で、「自民党の方にまで波及する可能性はないと思う」と述べ、報道各社が「政府筋」の発言などとして一斉に報じた。

 この日の記者会見では、記者側が、発言のきっかけとなった懇談での記者の質問は自民党に捜査が及ぶかどうかを明確に聞いたものだったとして見解をただした。しかし、漆間氏は「直接、政党名を挙げて聞かれた記憶もない」と述べたうえで、特定政党に絡んで捜査の見通しを述べたのではないと重ねて強調した。

 一方で、「一般論であっても捜査に関する話をしない方が良かった。多くの皆さんに迷惑をかけて申し訳ない気持ちでいる」と陳謝した。自らの進退については、「少なくとも任命権者が辞めろと言えば従うつもりだ」と語り、麻生首相の判断に委ねる考えを示した。

 漆間氏はこれに先立ち、9日午前の参院予算委員会でも、「特定政党の議員に捜査が及ぶかどうか述べた記憶は全くない」などと釈明した。午後も同委員会に出席し、記者会見はこれを挟んで断続的に行われた。

 漆間氏の釈明について、野党は「不十分だ」とし、さらに追及する構えだ。

 民主党鳩山幹事長は9日、山形市内で記者団に、「必要に応じて(辞任要求が)出てくる可能性がある」と語った。共産党市田書記局長は同日の記者会見で、「記憶のない人なのに、検察の捜査の中立性、公平性を否定する発言はしていないと覚えている。不自然だ」と述べたうえで、証人喚問などを求めることもあり得るとする考えを示した。

このニュースを見まして、「オフレコ」という、曖昧を尊ぶ日本的文化の精髄ともいうべき暗黙の了解が通用しなくなってきているのではないかとも思ったのですが、それにしても「そういう記憶になった」という言い回しが面白すぎて。
ロッキード事件のときは、小佐野賢治が連発した「記憶にございません」が言い逃れの代名詞になりましたが、今度のはさらに露骨ですからねぇ。


ところで。


ぼくは昔からあまり「少年サンデー」の漫画を読んでおらず、ゆうきまさみ椎名高志藤田和日郎もあまりなじみがなかったりするのですが、そんなぼくが今になってハマっているのが、石渡治の『B・B』だったりするんです。

ちゃんと通して読んだことなかったんですが、いやー、これはスゴいわ。


あまりに波乱万丈すぎるので、要点を箇条書きにしていきます。

  • 主人公の高樹翎(通称「B・B」”バーニング・ブラッド”)は、天才ボクサー森山仁と出会い、宿命のライバルとなる
  • 打倒森山のため、特訓により必殺パンチ「10センチの爆弾」(ボディに喰らった相手は、大量の血を吐きながらリング下に吹っ飛ぶ)を会得
  • いよいよ森山との対戦に挑むものの、準決勝で森山が卑劣な罠にはまり敗北
  • 森山をはめた相手の控え室に殴りこみ、ハサミで襲い掛かる相手の顔面に10センチの爆弾を炸裂させる
  • 喰らった相手は『カラテ地獄変』みたいに目ん玉を飛び出させて即死
  • そのまま出頭すれば数年の少年院行きで済むのに、なぜかアメリカへ密航する
  • 出航前に、恋人と一発かましていく
  • アメリカでマフィア主催の闇ボクシングに出場し、片腕の牧師とか身長7mぐらいある黒人とかと戦う
  • 日本に残してきた彼女は一発で妊娠しており、女の子を産む
  • しかし、マフィアの跡目争いに巻き込まれにっちもさっちもいかなくなる
  • たまたま知り合った凄腕の傭兵に「市民権をやる」とスカウトされ、戦場へいく
  • 戦場でも銃は使わず、10センチの爆弾で敵を次々に撲殺
  • しかし、度重なる戦闘と殺人のストレスによって精神に異常をきたす
  • そのせいで要人救出のミッションに失敗、手榴弾の爆発に巻き込まれて重傷を負い、ソ連軍の捕虜になる
  • 爆発のショックで記憶喪失になったところをソ連軍に洗脳され、ウズベク人「アレクセイ・ポリャンスキー」という偽りの記憶を植えつけられる


完全にボクシング漫画じゃなくなってしまうのでした。
漆間副長官も、「そういう記憶になった」というのはきっと誰かに洗脳されたんじゃないかと思います。



『B・B』の方は、その後いろいろあって記憶を取り戻し別人としてのパスポートも手に入れるものの、彼女が再会直前にトラックにひかれて死んだり、最初の殺人が正当防衛と認められてすべてが徒労だったと知らされたりと悲惨の極致を描いた末に、最後はなぜか「リングで闘うことによって地球環境を救いたい」とか言い出す宗教漫画になってしまうのでした。