三匹のおっさん

国会を連日にぎわせている安保法制ですが、さらに混迷を深めてまいりました。


自民の一部 安保関連法案は党議拘束外すべき NHKニュース 自民の一部 安保関連法案は党議拘束外すべき NHKニュース

 自民党の総務会が開かれ、衆議院憲法審査会の参考人質疑で、学識経験者3人全員が、安全保障関連法案を巡って、「憲法違反にあたる」という認識を示したことを受けて、出席者から、政府与党として、国民の理解を得られるよう、さらに努力すべきだという意見が出された一方、一部の議員は、法案の採決にあたって「党議拘束」を外すべきだと主張しました。
 この中で、丹羽・元総務会長は、安全保障関連法案について、「世論調査でも、説明不足だという意見が多くなってきているのではないか。国民の理解を得る努力が必要であり、気を引き締めて取り組んでほしい」と述べました。
 一方、村上・元行政改革担当大臣は、「学識経験者3人がそろって違憲だと発言したことは、法曹界の意見を代弁したものだ。それを政府・与党の幹部が、『学者の意見にすぎない』と一刀両断するのは正しいことなのか」と述べたうえで、関連法案の採決の際、党が決めた方針に従うよう求める「党議拘束」を外すべきだと主張しました。
 これに対し、高村副総裁は、「自衛隊が創設された時も、憲法学者は『違憲だ』と言っていたが、結果として、日本の平和と安全は守られた」と反論したうえで、関連法案を今の国会で成立させるため、政府与党が結束して、国会審議などに臨む必要があるという考えを示しました。

で、ここで造反ともとれる行動をした村上議員は、翌日に、日弁連の集会にも参加して、自民党執行部を激しく批判しています。


「あまりに傲慢」自民・村上議員が「安保法制反対集会」で自民党執行部を批判(全文)|弁護士ドットコムニュース 「あまりに傲慢」自民・村上議員が「安保法制反対集会」で自民党執行部を批判(全文)|弁護士ドットコムニュース

 もし憲法に書いていないことを、内閣の一部局である法制局が解釈で変えることができたら・・・。まあ、自民党にある方が「ナチス憲法のマネをしろ」と言ったんですが、もちろんナチス憲法はありません。戦前のドイツで、議会において、全権委任法を通して、民主的なワイマール憲法を葬り去ったという、一番悪しき例があるんです。


 すなわち、このことで突破口を開けば、たとえば主権在民基本的人権に至るまで、時の政府の恣意によって、実は憲法を曲げることができてしまう。たいへん、民主主義の危機にあるということです。

 私がいちばんいま危機を感じているのは、民主主義の危機、すなわちファシズムの危機であります。

 私が大学のときに、ある先生が言っていました。「当たり前のことが、当たり前でなくなるときが一番あぶない」。

 結論はどういうことかと言いますと、もしこういうことで突破されれば、次の世代は、アメリカの要求を断ることもできません。歯止めもありません。そういう中で、こういうような非常に不完全な法制というものを、短期間で180度転換するようなことを、軽々としていいものだろうか。

 最後に、もう本当にお願いします。弁護士の先生方。我々では説得する力がありません。自民党には、まともな大学で憲法を学んだ人が数います。そういう人たちひとり一人に説得していただきたい。

 そして、一番重要なのは、国民の皆さん方に、この法案ならびにいままでの手法が、どこに大きな間違いがあるかということを、やはり一人でも多くのみなさん方に伝えていただきたい。以上であります。

以前からこの方針には反対してきた村上議員ではありますが、かなり思い切った発言だなぁ。ただ、党としてはこれで村上議員を除名したりしたらさらなる批判が避けられないので、ある意味でチキンレースを繰り広げているような感じもします。メディアを制圧してわが世の春を謳歌してきた第2次安倍政権ですが、先日の参考人招致が決定的な失策になるかもしれんなあ。


んで。



国会では、こんな問答が繰り広げられておりました。


東京新聞:官房長官 合憲論学者「数ではない」 安保法案 与党、会期延長検討:政治(TOKYO Web) 東京新聞:官房長官 合憲論学者「数ではない」 安保法案 与党、会期延長検討:政治(TOKYO Web)

 他国を武力で守る集団的自衛権の行使を柱とする安全保障関連法案に関する衆院特別委員会は十日午前、関係閣僚が出席して一般質疑を行った。菅義偉(すがよしひで)官房長官は二百人以上の憲法学者が安保法案を違憲だと批判していることについて「数(の問題)ではない」と述べ、合憲の主張が少数派であることを認めた。その上で、合憲と主張する憲法学者三人の実名を挙げた。 
 三人は百地章日本大教授、長尾一紘中央大名誉教授、西修駒沢大名誉教授。菅氏は「憲法の番人は最高裁だから、その見解に基づき法案を提出した」と述べ、安保法案は合憲だと重ねて主張した。
 菅氏は、衆院憲法審査会で憲法学者三人が安保法案を「違憲」と批判したことを受け、四日の記者会見で「全く違憲でないと言う著名な憲法学者もたくさんいる」と反論していた。
 民主党辻元清美氏は質問で、二百十一人の憲法学者が安保法案は違憲だとの声明を発表していると指摘し、菅氏に「違憲ではないと発言している憲法学者の名前をいっぱい挙げてください」と迫った。政府見解に沿った意見を持つ学者を示せないなら「法案は撤回した方がいい」と要求した。
 これに関連し、中谷元・防衛相は法案成立を前提に違憲訴訟で敗訴した場合には「法治国家なので最高裁判断が出た時には適切に従っていく」と述べた。
 これに先立ち、自民、公明両党の幹事長らは東京都内のホテルで会談し、今月二十四日までの国会会期内に法案を衆院通過させることは困難だとの認識で一致。大幅に会期を延長する検討に着手した。一方、民主党安住淳国会対策委員長代理は「憲法違反の法案だから何時間審議してもダメだ」と記者団に述べた。

三匹のおっさん (新潮文庫)

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これね、ガースー黒光り官房長官が「たくさんいる」と言った直後から、「そんなの3人ぐらいしかいねえだろ」というツッコミが多く、「自民党では、3以上の数は『たくさん』なんじゃないか」なんて揶揄されていたモンですが、本当に3人しか挙げられず、言うに事欠いて「数の問題ではない」ってんだからもうズンドコもいいところです。数の力だけで何でも押し切ってきたくせに、都合が悪くなると「数ではない」ってんだからもう。あと、ハブられた八木秀次の反応が楽しみだ。


とはいえ、ガースー黒光り官房長官が、数に対してこのように極端な見解を持つのも、首領たる安倍晋三さんが数というものをどう認識していたかを思えば、納得のいくところであります。


2006年の12月、第1次安倍政権で玉座についていた安倍晋三さんは、毎年恒例の日本漢字能力検定協会今年の漢字」イベントで「命」が選ばれたことを受け、記者から「総理の、今年の漢字は何ですか」と問われました。ここで安倍総理は「一文字にすると『責任』ですかね」と答え、国民を唖然とさせたことを、ご記憶の方も多いでしょう。


首領さまからして、1と2のどっちが大きいかわからないのに、臣下の人間が3以上も数えるなんて、そんな不敬なマネができるわけもない!


ガースー黒光り官房長官にも、どうせ数を数えるのならば、このぐらいダイナミックにやってほしいですね。



(というか、今から断言しておくけど、今年の漢字は「憲」で決まりだよな)