地獄の鎮魂歌

『新カラテ地獄変』の抜けていた巻を入手し、やっとシリーズコンプ。
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この巻では、主人公の大東徹源は、南米アマゾンの奥地に、ナチス残党狩りに行き消息を絶った恋人のユダヤ人美女フォアラを救出に向かいます。

すると、そこでは元ナチス将校カール・ローハン大佐と娘が、元捕虜収容所の女看守長コッポラ(ダイアン・ソーンみたいにエロくない、デブのおばはん。モデルはイルゼ・コッホ)をメイドがわりにして暮らしていたのですが、ローハン大佐は原住民を自分の私兵として訓練しており、フォアラと仲間たちを返り討ちにして、監禁・陵辱していたのでした。


本文中では「蛮人」と思いっきり書いてます。


そして、徹源は大佐の娘を人質にとり、フォアラとの交換に臨みますが、奪還寸前でコッポラが裏切り、大佐を射殺してフォアラを取り返し、原住民たちを指揮しはじめます。

かねがね蛮人どもの酋長は蕩しこんどいたのさ!

これでも白人女の肉体でねッ これからはコッポラ様が女帝だよ!

かくして、徹源は蛮人の大酋長と対決することになるわけですが、梶原一騎の持つ素朴な人種感が浮き彫りになるエピソードですね。


有色人種は白人の肉体に憧れ、欲望を抱いているという。

グリフィスの『国民の創生』みたいなモンですね。

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これより数年前に書かれた『あしたのジョー』では、ホセ・メンドーサコークスクリュー・パンチで廃人になったカーロス・リベラが、ジョーの試合のリングサイドに現れる場面で、観客が

クロンボのこじきか?

とも言ってましたからねぇ。

あしたのジョー (19) (KCデラックス (373))

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(↑現行版では修正済み)

黒人差別をなくす会」の活動についてはあまりいい印象を持っていないんですが、少なくとも彼らの登場以前と以後で出版のコードが変わったことは事実ですね。


それ以前の、劇画作家の人権感覚を物語る貴重な資料といえるでしょう。


でも、金竜飛に対して「このチョン公!」とはさすがに言わないんですけどね。

矢口高雄作画の『おとこ道』で、戦後の韓国人を悪として描き、抗議を受けた経験が生きていたんでしょうか。
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このときは、「差別の意図はない、自分は大山倍達と義兄弟だ」と言ったら納得して帰っていったそうですけどね。

大山倍達正伝

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