ノンマルトの使者

本日は、「ウルトラ問題作シリーズ第二弾」として「ウルトラセブン」第42話「ノンマルトの使者」をお送りします。

DVD ウルトラセブン Vol.11

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この作品で、人類は海底開発に着手します。この基地の隊員として登場するのが、「ウルトラマン」でイデ隊員を演じていた二瓶正也。今回もとぼけた味を出していますが、冒頭に登場しただけで基地が爆破されるので出番はごくわずかでした。


この事件に関し、ウルトラ警備隊と地球防衛軍に、一人の少年が警告を発していました。



「海底はノンマルトのものなんだ、侵略をやめないとたいへんなことになるよ」



ノンマルトとは、現在の地球人より以前に地球に生まれた先住民。
人類によって侵略され、海底に移住したという彼らの、そのネーミングは軍神マルスに「ノン」を接頭語として付け、「戦わない民族」という意味を持たせたものです。

脚本家の金城哲夫氏は沖縄出身の方でしたので、刀狩りを徹底していた琉球を連想させるネーミングですね。

金城哲夫 ウルトラマン島唄

金城哲夫 ウルトラマン島唄

そして、ノンマルトと人類との戦争が始まりますが、ノンマルトは無力な存在。
彼らの武器は、以前拿捕して奪取した原子力潜水艦1隻と、怪獣ガイロスのみ。所詮は絶望的な反抗に過ぎません。
警告を発していた少年、真市は、セブンに変身しようとするダンの前に現れます。


ノンマルトは強くないんだ、攻撃をやめてくれよー!ウルトラ警備隊のバカヤロー!


罵声を浴びながらも、ダンは「ぼくは戦うしかないんだ!」と変身。
海中でガイロスと戦い、アイスラッガーでバラバラにしてしまうセブン。

原潜も、ウルトラ警備隊の潜水艦によってあっさり撃沈され、海底都市まで完膚なきまでに破壊されます。
薩摩藩と明治政府によって侵略された琉球のように。


戦いに勝利し、「海底もわれわれ人類のものだ」と哄笑するキリヤマ隊長と、複雑な表情のアンヌ隊員。
今エピソードでは、ひし見ゆり子の魅力が冒頭の水着姿からたっぷり味わえます。


ラストシーンで、警告を発していた真市少年は、実は二年前に海で亡くなっていたことがわかります。
宿命的に対立する者たちの仲立ちをすることは、この世のものには荷が重過ぎるのでしょう。


琉球と大和の間でもがいていた、といわれる金城の思い入れが感じられます。



昨今、中国と日本、あるいは韓国と日本の間で領土や資源について対立が激しくなっています。海底ガス田なんて、まさにこの話そのものです
お互いの国民感情も、悪いことばかりが目に付きます。ネットだけ目にしていると、今にも戦争が始まりそうな勢いで罵り合っています。

そして、人々の苦悩を引き受け、代わりに戦ってくれるウルトラセブンはどこにもいないのです。


次回予告

明日は、問題作シリーズ第三弾として、いよいよウルトラ史上最大の問題作といわれる「帰ってきたウルトラマン」第33話「怪獣使いと少年」をお届けします。

DVD帰ってきたウルトラマン Vol.9

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