関東鬼相撲篇
- 作者: 永井豪
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1998/03
- メディア: コミック
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大地震により崩壊した関東は、暴力が支配する無法地帯になってた。
その一角に住む、元「鬼川部屋」の力士たちは、孤児となった子供たちをさらってきては食料の調達などをさせ、酷使している。
少年たちのリーダーである海堂猛志は。そんな日々に耐えかねて絶望的な反逆を試みる。
しかし、所詮は体力に差がありすぎ、勝てるはずもなかった。殺される寸前の彼を救ったのは、謎めいた巨人。バイオレンスジャックその人である。
部屋へ戻った猛志とジャックは、子供たちが皆殺しにされているのを目にする。
「女の子を裸にして木から吊るし、ダーツの的にする」というものすごい虐待が行われます。
そして、猛志は復讐を決意しますが、所詮勝ち目はありません。
ジャックは彼を止めます。「お前にも奴らに勝てる方法がひとつだけある」と。
自分ができないなら、人を雇えばいい。
そこで二人の間にかわされる契約は男泣きです。
猛志「あんただ!あんたなら奴らに勝てる。オレはあんたをやとうぞ!」
ジャック「人をやとうには報酬を払わねばならん。お前はオレを満足させるだけのものを払えるか?」
猛志「オレに払えるものがたった一つだけある。命だ!このオレの命だ!」
ジャックにすがりつく猛志。
「たのむよー!もらってくれーっ!オレにはもうこれしかないんだーっ!」
そんな猛志に対し、ジャックは笑みを浮かべて答えます。
「フフフ・・・お前の命か・・・ずいぶんとオレを高くやとってくれるじゃないか!」
一度は、こんな風に言えるくらいの給料を貰ってみたいものですな。
そして、ジャックは鬼川部屋の力士たちを巨大なジャックナイフで皆殺しにしていきます。
そのとき、下っ端の力士はこう言い訳しました。
「オレは好きでやったんじゃないんだ!相撲界では兄弟子の命令は絶対なんだ!」
秩序の崩壊したこの世界で、なおも「兄弟子」という古いしきたりに囚われている彼は、暴力を振るう兄弟子とはまた違った意味で「悪しきオトナ」の象徴なのではないでしょうか。
また、この言い訳は姉妹篇である「デビルマン」にも登場します。
- 作者: 永井豪,ダイナミックプロ
- 出版社/メーカー: コミックス
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そこへ乗り込んでいった不動明に、追い詰められた執行吏はやはり言い訳します。
「俺たちも好きでやったんじゃないんだ、上からの命令なんだ」
この言い訳は、組織犯罪や国家の戦争犯罪などによく見られますね。
有名なところでは、ナチスドイツでアウシュビッツ収容所を運営していたアイヒマンのそれがあります。
- 作者: ハンナ・アーレント,大久保和郎
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たしかに、国家の政策として行われた蛮行に対し、実行した個人がどこまで責任を負うのか、というのは難しい問題です。
また、アイヒマンに関しては、アルゼンチンにいた彼を、現地の政府や警察をまったく無視してイスラエル政府が逮捕・国外連行したというその手続きにも問題があったといわれます。
しかし、豪ちゃんワールドではそんな言い訳は一切通用しないんです!
デビルマンは、「俺は体は悪魔になったが、人間の心を失わなかった!貴様らは人間の体を持ちながら悪魔に!悪魔になったんだぞ!」と叫び、「地獄へおちろ人間ども!」と火を吐いて魔女狩り部隊を焼き尽くしますし、バイオレンスジャックもまったく言い訳に耳を貸さずに首をはねます。
そして、力士を皆殺しにしたジャックは、猛志から約束どおり命を貰うことにします。
「海堂猛志よ、これからはどんなに苦しくとも、今からオレの言うとおりに生きるのだ!」
そして、震える猛志に、
「心・・・正しく生きよ!」
とだけ告げると、ジャックはどこへとも知れず姿を消すのでした。
・・・くぅぅぅうう(男泣きの音)
猛志は、のちに関東の覇王逞馬竜の右腕となり、魔王スラムキングを倒す上で重要な役割を演じます。こういう大河ドラマ的展開は、あまり長い連載の少ない永井豪作品では貴重ですね。
「バイオレンスジャック」は、現在「新バイオレンスジャック」として「コッミックバンチ」に連載されていますが、そこでは「バイオレンスジャック対三国志」というトンデモない話が展開されています。
・・・とりあえず様子を見よう。