空にそびえる鉄の城

以前、友人と最強のモビルスーツについての論争を繰り広げていたら、同席していた女性から「なんでそんなにロボットが好きなの?」と真顔で尋ねられたことがありました。


男はどうしてロボットが好きなのか。


男性にとって「ロボット好き」は当然の前提ですが、女性にとっては謎なのでしょう。


さて。

ロボットアニメ、なんて言いますが実は大半の作品にロボットは出てこない、というのは皆さんご周知のことだと思います。

ロボットはもともと人造人間を指す言葉ですので、自分で考えて行動するアトムやトランスフォーマーマイトガインとかはたしかにロボットです。
しかし、「マジンガーZ」以来ロボットアニメの主流となった「人間が操縦する」ものは人型の乗り物であってロボットとはいえません。
では、なぜこちらが圧倒的に支持されているのでしょうか。


マジンガーZ」「機動戦士ガンダム」「新世紀エヴァンゲリオン」という70年代・80年代・90年代をそれぞれ代表するロボットアニメについて考えてみましょう。

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共通していることとして、

  • 主人公は思春期の少年である
  • 父(または祖父)が作ったロボットに乗る

ということに注目します。

思春期の少年は、声変わりし、ヒゲや体毛が生え、体格が逞しく変わってきます。
その、男の肉体は父親から受け継いだもの。

父からもらった巨大な人型の機械に乗り込む、というのは主人公の第二次性徴を暗示している、と考えられるのではないでしょうか。

そう考えると、ロボットの多くが頭にツノを持っていることの意味もわかりますね。
「空にそびえる鉄の城」というのは、実に露骨なファルスの比喩表現ではないでしょうか。

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映画「マジンガーZ対暗黒大将軍」には、敗色濃厚となった兜甲児が、脱出することを拒み「逃げるくらいなら最後までマジンガーZとともに戦う」と徹底抗戦するという、男の魂に火をつける名シーンがあります。ガンダム」にも、脱走の罪で営倉入りになったアムロが「ボクがガンダムを一番上手く使えるんだ」と叫ぶシーンがありますし、「エヴァンゲリオン」でも、あれほど闘いを恐怖しイヤがっていたシンジが、ネルフの危機に駆けつけてくるという場面がありました。


彼らにとって、ロボットを失うことは「去勢」に他ならないのです。


装甲騎兵ボトムズ」のキリコ・キュービィと比べると、さらによくわかります。

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キリコは、アームド・トルーパーにまったく固着せず、乗り捨てにしています。
それは、彼はすでに幾多の戦場を経験した、れっきとした「大人」であり、もはやメカによって成長を装う必要がないからです。


ことほどさように、ロボットアニメには性的なメタファーが多く見られます。
エヴァ」は、母の子宮であるエントリープラグ(羊水であるLCL溶液で満たされている、という徹底ぶり)を介して母と一体化し、父親と闘うというエディプス・コンプレックスの権化のごとき作品でしたし、「ガンダム」では、モビルスーツの多くに雌雄の区別がある(ミニスカートから太い足を露出させた太めの女性からドムを連想しないことは困難)のを意識するとまた違った面白さです。


また、「ゲッターロボ」以来の定番システム「合体」というのも実に露骨な表現ですね。
創聖のアクエリオン」を観ればどんなにぶい人でも分かるでしょう。



今回はフロイト調でお届けしました。
ちなみに、最強のロボットはダイオージャです。
だって、「最強ロボ ダイオージャ」ですから。

じゃぁ、「熱血最強ゴウザウラー」とどっちが強いんでしょうか。

「無敵ロボ トライダーG7」と「絶対無敵ライジンオー」というのもあるなぁ。


・・・イイ大人が何を言ってるんでしょうねぇ。