夏の漫画2014

最近読んだ漫画。


三家本礼の『血まみれスケバンチェーンソー』8巻。『ゾンビ屋れい子』にも出てくるお得意のネタ「ゾンビ化した幼児殺害犯」が今回も登場。「身体を液状化して攻撃を無効化する」という、『ONE PIECE』の自然系能力者みたいな技を使うのだが、この設定はどの辺が元祖なのだろう。日本では、東宝の特撮映画『美女と液体人間』あたりかなあ。バトル漫画では『HELLSING』のアーカードが広めたような気がする。


あと、『めしばな刑事タチバナ』14巻。

今回は、5話という全体の半分近い話数を費やして「はたしてチャーハンはパラパラであるべきなのか」という大問題に挑む、大作がフィーチュアされている。死ぬほどどうでもいいことを、大のオトナが警察署の会議室で話し合うというくだらなさが最高。ちなみに、オレ的にはチャーハンはパラパラでもしっとりでもいいし、卵はトロトロでもフンワリでもしっかりでもいい。ただひとつ、具のチャーシューにしっかり味が浸み込んでいることが最重要課題だと思う。


まだ単行本が出ていない作品では、高遠るいの『はぐれアイドル地獄変』(別冊漫画ゴラク)と、永井豪の『激マン! マジンガーZ篇』(週刊漫画ゴラク)というゴラク系の2本に注目している。

『はぐれアイドル地獄変』は、売れないグラビアアイドル(Kカップ巨乳の黒ギャルという通好みなデザイン)が、悪徳社長にAVデビューさせられそうになるなどしながら、得意の琉球空手を武器に芸能界で大暴れするという内容。理屈っぽい作品が多いこの作家にしては、かなりのザックリ感にあふれており、雑誌のカラーにしっかり合わせるプロ意識の高さを感じさせる、痛快お色気ギャグ格闘漫画である。
さらに面白いのが、モブキャラのほとんどが実在の芸能人をモデルにした似顔絵になっていること。主人公のAVデビュー作品は「100人組手で負けたら即レイプ」という、SODへのリスペクトを詰め込んだ企画なのだが、彼女に襲い掛かる汁男優たちは

などのお笑い芸人たちにそっくりで、監督は『戦国自衛隊』の千葉真一そのものになっている。

戦国自衛隊 ブルーレイ [Blu-ray]

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グラップラー刃牙』にせよ『高校鉄拳伝タフ』にせよ、格闘漫画では実在の人物をデフォルメして描くことが多いが(格闘家のみならず、政治家とかタレントもよく出てくる)本作『はぐれアイドル地獄変』もその例に漏れないということであろう。

いま発売中の9月号に掲載されている第4話では、バイきんぐ小峠にそっくりなバラエティ番組のディレクターが、ヒロインの巨乳を活かした企画のムチャ振りをしてくるのだが、あの特徴的な声が聞こえてきそうなぐらいそっくりなのであった。


『激マン!』は、以前に連載された『デビルマン篇』に続く第2弾で、今度は『マジンガーZ』の誕生秘話を描いている。

激マン! 6 (ニチブンコミックス)

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現在も日本のアニメ界に連綿と続く「人間が乗って戦うロボット」というコンセプトを生み出した記念碑的作品である『マジンガーZ』だが、豪ちゃん先生がアイディアを思いついた1972年当時は、ロボット漫画は古いジャンルとされていて(『鉄人28号』や『鉄腕アトム』のように)企画が通らず、マネージャーが先に東映動画にデザインのラフ画を持ち込むところから始まっている。


で、主人公の「ナガイ激」は『デビルマン篇』の主人公「ながい激」とは別人として描かれており、「永井豪は作品によって人格を切り替えていた」という設定になっている。
デビルマン』を描いていた激は、ストーリー漫画を描きたい、誰も描いたことのない人間の醜さを描きたい、と深く苦悩する人物だったが、『マジンガーZ』を描く激は、巨大ロボットの重量や材質、エネルギー源などの問題を「いんだよ細けえことは」で済ませるノリの軽い人になっている。
ノリが軽くなるあまりに、前回は「少年キャンプ」「少年マンガ人」「少年ヨンデー」「少年チャンポン」「少年ゴング」と仮名だった雑誌名が、つい実名になっているあたりも、マジンガー特有のザックリ感をいや増しているというべきか。

この「いん細」精神で、「超合金」「光子力エネルギー」などの用語を次々に生み出していくあたりが実にダイナミックだが、当初は「バイクに乗った主人公がロボットの頭部に登って合体し、操縦する」というアイディアだったのが、親会社の東映本社から「バイクは『仮面ライダー』で使っているからダメ」という理由で却下されるあたりの大人の事情もまた味わい深い。


デビルマン篇』では、あのあまりにも有名な結末へ向かって突き進む姿が壮絶だったが、『マジンガーZ』は豪ちゃんがどこまで構想したものだったのか、当初の予定ではどんな結末が考えられていたのか、現在に至っても謎が多いので、その辺が明かされるのも楽しみである。
なお、『激マン! マジンガーZ篇』は今週号で週刊連載がいったん休止となり、9月から隔週連載で再開されるとのこと。気長に待とう。