邦題付け放題

妖婆 死棺の呪い [DVD]

妖婆 死棺の呪い [DVD]

この「妖婆死棺の呪い」という映画は、旧ソ連製の怪奇映画として文献によく登場します。
澁澤龍彦種村季弘、吉田八岑、唐沢俊一錚々たる面々が口を揃えて絶賛する主演女優ナターリア・ヴァルレイの美しさ、おどろおどろしく土着的な百鬼夜行の描写、いずれも高評価を得ています。

しかし、このタイトルはどうにかならんものか。

以前発売されていたビデオ版では「魔女伝説ヴィー」という原題に即したタイトル*1になっていたんですけどねぇ。

この邦題を付けたのが、かつて新東宝でエログロ路線を敷き、倒産・退社後は自ら大蔵映画を設立して怪談映画を制作・配給した大蔵貢という怪人物。この人のセンスは並ではありません。

エドガー・アラン・ポーの「大鴉」をロジャー・コーマンが映画化したものを公開したときは「忍者と悪女」になりました。もちろんショー・コスギは出ません(笑)
他にも「姦婦の生き埋葬」やら「性本能と原爆戦」やら「原子怪獣と裸女」やら、なんとも言えないジジイセンスです。


時代が下って70年代になると、東宝東和が大炸裂することになります。

70年代映画懐かし地獄―あの頃映画は爆発だった! (映画秘宝コレクション21)

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こちらは独特の片仮名センスがあり、原題とは似ても似つかない、しかしインパクトのあるタイトルを付けています。

基本は「ン」を入れることと濁点をつけること。こうして生まれたのが「サンゲリア」(原題は「Zombie」)や「サランドラ」(原題は「Hills have eyes」)です。

サンゲリア [DVD]

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この「サンゲリア」の方は傑作(わたし基準)ですが、「サランドラ」の方は誇大広告が過ぎて怒った客が看板を壊したといういわくつきの作品で、DVDはたぶん永久に出ないでしょう。

最近は原題をそのまま片仮名表記にしただけの素っ気無い邦題が多く、こういうパワフルな邦題にはお目にかかれないのが残念なところです。

「Last house on the left」が「鮮血の美学」になったり、「I drink your blood」が「処刑軍団ザップ」になったりした時代はもはや遠くなりにけり、と寂しく思う今日この頃なのでした。

鮮血の美学 [DVD]

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*1:原題は「ヴィー」、原作はロシアの文豪ゴーゴリ