ジョギリよ今夜も有難う

南京の真実 (講談社文庫)

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南京大虐殺を描いた映画『ジョン・ラーベ』が、日本での上映を断念したそうです。


http://www.excite.co.jp/News/china/20090401/Searchina_20090401082.html

南京大虐殺を描いた『ジョン・ラーベ』、日本で上映禁止

 中国、ドイツ、日本で上映を予定していた中国、ドイツ、フランス合作の『ジョン・ラーベ』が、日本での公開を断念したことが明らかになった。この中国版『シンドラーのリスト』は、国際的視点で南京大虐殺という歴史的事件を正面から描いていることから、日本での上映は全面的に禁止され、日本の映画配給会社も映画を見ることさえ断ったという。

このニュースは、中国政府の提供だそうなのでちょっと偏った書き方ですね。日本で「上映禁止」なんて措置をする権限はどの機関も持ってないんですけど。単に、配給会社が興味を示さなかっただけだと思いますけどね。


まぁ、買い手がつかなかったってのは作品が反日的だからとか質的に問題があったとかそういう理由より、「面倒くさそう」だからじゃないかというのは容易に想像が付くところです。『靖国』とか渡辺文樹の『天皇伝説』とかと同じような、ね。

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こういう事なかれ主義にはもう慣れっこになってしまいましたが、製作側としてはこの日本の対応をしたたかに利用しようとしているんじゃないでしょうか。


「日本で上映禁止になった」なんて宣伝すれば、ハクもつくでしょうしね。あちらのネトウヨさんも「ほーら、やっぱり日本は反省しない悪い国だ」つって大喜びしそうだ。



んで。



ヒルズ・ハブ・アイズ [DVD]

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ヒルズ・ハブ・アイズ』のリメイク元となった、『サランドラ』って映画があるんですけど。


この映画、元々は1977年にアメリカで公開されたものなんですが、評価が芳しくなかったため日本ではオクラ入りになり、1984年になってやっと東宝東和が公開したのでした。


7年も経って古びてしまったため、その宣伝に頭を痛めた東宝東和は、アメリカでは「12州でしか上映されなかった」という事実を逆転させ「38州で上映禁止になった」恐ろしい映画だとしてセンセーショナルに売り出し、さらに、実際の作中には出てこない「ジョギリ」なる巨大な刃物をポスターにデカデカと描き、「戦慄のジョギリ・ショックがやってくる!」というキャッチコピーで観客の期待感を煽る、という見事な誇大広告を完成させます。


80年代の東宝東和は、こういう「実際の作品に出てこない要素で宣伝する」という手法を好み、『サランドラ』の前年に公開した『バーニング』でも、作中ではちゃんと「クロプシー」という名前がある殺人鬼に、勝手に「バンボロ」という意味不明な名前を付けるという独自性にあふれるやり方でファンにトラウマをうえつけたものでした。

70年代映画懐かし地獄―あの頃映画は爆発だった! (映画秘宝コレクション21)

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(↑この本で、当時の東宝東和にいた宣伝マンたちが往年を回想しています)


『サランドラ』の公開初日には、東宝東和が作ったジョギリを看板につけておいたら、怒った観客が「ウソツキ」と落書きして折っていったという伝説が今に語り継がれていますが、『ジョン・ラーベ』の方にも、「一閃で中国人民100人の首を切り落とす東洋鬼刀!」とか言って看板を作り、怒った観客にへし折られるぐらいのバイタリティが欲しいところですね。

「百人斬り競争」と南京事件―史実の解明から歴史対話へ

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