人間以外の俺になれ

そうそう、平野耕太の『ドリフターズ』5巻を読んだんですよ。

世界観がよくわからなかったので(主人公たちのいるオルテ帝国以外に国はいくつあるのか、そもそもこの世界の地球は丸いのか、信長たちと黒王たちがそれぞれいる場所はどのぐらい離れているのか、ジャンヌや土方はどうやって豊久たちのところにきてどうやってすぐ帰ったのか、などなど疑問はいくつもある)4巻まではいまいちノれませんでしたが、5巻までかかってやっとエンジンがかかってきた感があります。ようやく豊久や信長がオルテ帝国を完全に掌握して、ほかの国は黒王軍に蹂躙されつくしたので、敵と味方の陣容がはっきりしたというか、物語の枠組みがくっきりしたというか。この世界の中で、ストーリーに関係ある領域はどこからどこまでなのか、その辺がやっとつかめてきたように思いましたね。


古今東西の英雄や将軍が集う「漂流者」と「廃棄物」の両陣営ですが、ふつうに考えて、戦略を練る将軍の立場にある人間は、あとの時代から来た人ほど有利になるわけですよね。古代ローマと20世紀では、歴史に学ぶケーススタディが桁違いなわけですから。となると、山口多聞が戦略面では明らかにいちばん有利な人物であり、かつ、両陣営メンバー全員の人となりをちゃんと知っている(ブッチ・キャシディサンダンス・キッドのことは知らないかもしれないけど)人物が出てきたことで、劇中に、読者とある程度同じ目線が入るわけです。これで物語全体がつかめるようになりました。(サン・ジェルミ伯は謎が多く、読者の共感を得づらい人物である)


それにしても、古代ローマとか源平合戦とか戦国時代とか、幕末ぐらいまでなら実在の人物を好き勝手に書いても心配ないでしょうけど、近しい遺族がまだ存命であろう山口多聞や菅野直を、こういうバトル漫画に出すってのはかなり思い切ったやり方だよなあ、と改めて思いましたね。だって菅野なんて明らかなバカに描かれてるんだもん。いろんな人に怒られるんじゃないかと心配になりました。