告発の行方
例の「保育園落ちた日本死ね!」「#保育園落ちたの私だ」に対する反発や、同性婚への偏見を見てもわかるように、現代の保守層が重視する価値観のひとつが「家父長制度」であります。
戦後になって制度的には否定された家父長制ですが、近年、安倍自民党が推し進める改憲論議も、この価値観が根底にあることが草案などを見るとよくわかります。
で、日本の司法が、家族主義から個人主義を重視するようになった、象徴的な事件についての記事を紹介します。
「父殺しの女性」を救った日本初の法令違憲判決:日経ビジネスオンライン
1968年に栃木県で発生した、29歳の女性が同居していた父親を殺害した事件。逮捕された女性は、14歳のころから15年間にわたって実父に性行為を強要され、5人の子どもを出産し6度の妊娠中絶をさせられるという壮絶な人生を送っていました。長年にわたり続いた暴力がエスカレートした末の行動であり、情状酌量の余地は大きくありましたが、当時の刑法には尊属殺の規定があり、親を殺したものは死刑か無期懲役とされていました。そのため最大限に減刑したとしても実刑はまぬがれません。そこで、弁護人は尊属殺の規定が憲法に明記された法の下の平等に反する、と主張し、結果として、最高裁判所大法廷が違憲立法審査権を発動し、既存の法律を違憲と判断した最初の判例となりました。現代の法学において、重要な事件として名高い裁判です。
当時の判決文にある、
近代国家の憲法がひとしく右の意味での法の下の平等を尊重・確保すべきものとしたのは、封建時代の権威と隷従の関係を打破し、人間の個人としての尊厳と平等を回復し、個人がそれぞれ個人の尊厳の自覚のもとに平等の立場において相協力して、平和な社会・国家を形成すべきことを期待したものにほかならない。日本国憲法の精神もここにあるものと解すべきであろう。
記事の趣旨は、日本国憲法のもとで、個人の尊厳が家父長制を打破した記念すべき瞬間について、なんですけど、それとは別の切り口も見てみましょう。
オレはこの事件に関してひとつ、心の底から恐ろしいと思っていることがあるんですよ。
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被告となった女性は、父親との異常な関係について「父とのセックスに、快感がなかったと言ったら嘘になります」と話した、という記録が残っているんです。
度重なる妊娠中絶で身体に深いダメージを負い、不妊手術を受けて以降はまったく快感がなくなりセックスが苦痛になった、というんですが、それ以前には快感もあった、とのこと。
これって、ものすごく怖い話ですよ。そう思いませんか奥さん(誰に向かってしゃべってんだ)。
父親に犯され続けるという特異な状況下でも快感を見出す、女の性の深淵が恐ろしい、なんてゲスな話じゃないですよ、念のために言っておきますけど。
そんな記録が残っているということは、15年間も父親にレイプされ続けていた女性に「あなたも気持ちよかったんじゃないの?」と聞いた人がいる、ってことじゃないですか。
そんな怖い話、ありますか? そんな無神経が許されていいんですか? いくら40年以上前だといっても、あまりにもひどい話です。
家父長制と個人の尊厳については画期的な判決が出たこの事件ですが、性犯罪の取り扱いについては、まだまだ配慮がなかった時代なんだなあ。
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