憎悪の化石
昨日の白昼、大阪の繁華街で通り魔殺人事件があり、2人が殺されました。
現行犯逮捕された容疑者は、覚醒剤取締法違反で刑務所を出たばかりで、住む場所も仕事もなく自暴自棄になり、死刑になりたくての犯行だったと供述しているそうです。
このような、自分の死を前提にしての殺人は「拡大自殺」と呼ばれ、古くは津山三十人殺しや、近年では池田小事件、秋葉原事件が思い浮かぶところです。
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http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120611-OYT1T00224.htm
知事がこんなこと言ったって、やりたい人は他人に迷惑をかけたいからやるのだから、何にもなりません。むしろ、社会への憎悪をさらに強め、第二第三の事件を誘発する発言です。
そればかりか、本当に困っている人にも「社会に迷惑をかけるな」という無用のプレッシャーを与えます。
相談窓口に来ればいい、と言いますが、行政による支援を受けることを恥と思え、というシュプレヒコールが全国で挙げられてるのにそんなこと言われても、ねえ。
でも、維新の会はこういう「本音」で支持を取り付けているという状況がありますから、この発言もまた人気アップにつながるんでしょうけどね。
んで、弱者切り捨てを熱心に訴えている片山さつき議員(2ちゃんまとめサイトで情報を収集するという斬新な活動で知られる)は、こんなことを言っています。
【これはひどい】片山さつき「遺族にご冥福」、松井知事「自分で死ねよ」…ミナミ通り魔 - Togetter
大阪の治安が悪化しているという根拠はどこにも示されないし、弱者切り捨てとマイノリティ迫害を旗印にしている議員がいう「再発防止」「治安改善」とはどういう策なんでしょう。どうせまた厳罰化と警察権力の強化でしょうが、死刑になりたいからやった、という人間にどんな厳罰を科すことで抑止力になると思っているんでしょうか。「絞首刑以上の残虐な刑を」と叫ぶお馬鹿さんは今回も多く見られますが(主に2ちゃんねるやmixiで。はてなでそんなことを言うお馬鹿さんはめったにいない)憲法では残虐な刑罰を禁じていますので、お馬鹿さんたちが望む酷刑の復活のためには、憲法を改正しなくてはいけません。
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2008年は通り魔事件の”当たり年”で、6月の秋葉原事件の他にも、3月の土浦連続殺傷事件、6月のマツダ本社工場殺傷事件などがありました。このときは、保守系論客がこぞって「昔はこんな事件はなかった」「戦前教育の復活を」などと訴えていたものです。おそらく今回も似たようなことをほざく輩が出てくることでしょう。そういう人には、『戦前の少年犯罪』を読んでもらえばいいでしょう。戦前は通り魔事件がたいへん多かったことがわかります。
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昨年、ノルウェーで排他主義者による大量殺戮事件がありましたが、ノルウェーの首相は「憎悪にはより強固な民主主義で報復する」とスピーチしたものでした。それに比べ、「死にたいなら一人で死ね」「警察権力を強化せよ」と叫ぶ人々のなんと醜悪なことでしょう。憎悪に憎悪で対抗して、それで社会が成立すると思うんでしょうか。彼等からは、単に権力をふるいたいという欲望以外の、何物も感じ取ることができません。でもこれが、我々の社会が選んだ「民意」なんですよねぇ。
社会を憎悪する人間には憎悪によって対抗し、社会による救済を求める人間にはスティグマを与え、マイノリティにはヘイトスピーチで対応する。それが「民意」なのだから、絶望する人間はますます増えることでしょう。この体たらくでは、年間3万人を超える自殺者が減ることは、おそらくないでしょうね。