若夫人狩り
性犯罪の厳罰化を検討する有識者会議が始まりましたが(もっとも、この検討会の設置を指示した松島みどり議員が、公職選挙法を遵守する精神の欠如により法務大臣の座を追われた、というミソはついているが)、この方針に対してこんな意見も出ています。
■被害者「実態知ってもらうきっかけに」
性犯罪の厳罰化をめぐる議論を、被害者はどう受け止めるのか。自らの被害を手記で公表している小林美佳さん(39)に聞いた。
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「厳罰化」に反対する理由は見当たらない。被害者は加害者の逆恨みを恐れており、刑の長さは安心につながる。性犯罪・性暴力への社会の理解は低い。今回の議論が多くの人に実態を知ってもらうきっかけになってほしい。
親告罪は難しい問題だ。性の虐待を受け続けた子どもは虐待を認識していない場合がある。(告訴なしで罪に問える)非親告罪になれば、周りの人が気づいて被害を訴えられる。一方で、強姦(ごうかん)などの被害者は「誰にも知られたくない」と思うのが大半。非親告罪になると、被害者が望まないなかで事件化され、裁判で事実が明かされるのでは、といった心配が生じる。配慮が必要だ。
より深刻な問題は、被害者の支援態勢が整っていないことだ。国の犯罪被害者等基本計画は、行政や病院、弁護士らが連携し、相談を受ける「ワンストップ支援センター」の設置促進を掲げたが、全国に広がっていない。相談できる場所がなく、被害者だけが苦しんでいる。だからこそ、個人である私に、約7千人からの相談が集まっている。
救われるべき被害者が苦しみ続けるのは理不尽だ。「打ち明けたい」と思った時に口にでき、それに周囲が手をさしのべる。そんな社会になるためには、性暴力被害への理解が欠かせない。(北沢拓也)
■専門医「厳罰化、根本的な解決にならない」
性犯罪者の治療に当たっている「性障害専門医療センター」代表理事で、精神科医の福井裕輝さんにも話を聞いた。
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厳罰化だけでは根本的な解決にならない。再犯防止の態勢をどうつくるかが最大の課題だ。
世界的には1980年代に厳罰化の流れが強まったが、再犯防止の効果はなかったといわれている。刑務所では模範囚として勤め上げ、釈放後に再犯をしてしまう場合が多い。
「性障害」という病気だという認識をきちんと持たなければならない。私は月間約200人を診ている。主な治療法は薬物療法と、認知行動療法と呼ばれるカウンセリング。性欲を減退させる薬物療法は効果が証明されている。性犯罪者の中にも「同じことを繰り返したくない」と自ら治療に訪れる人も少なくない。
被害者が厳罰化を求めることは当然であり、理解できる。性犯罪を減らすためにも、警察、医療、保護観察などの各関係者が一体となり、再犯防止の態勢をつくることが必要だ。
この会議で検討されている厳罰化というのは、それで性犯罪が防止できるという理屈ではなく、刑法において強姦が強盗より軽い罪とされている(強姦罪は3年以上20年以下の懲役、強盗は5年以上20年以下の懲役)ことの是正が目的なので、根本的な解決にならないのは仕方ないですね。
記事で紹介されている小林氏は、暴行されたときの警察の対応についても語っていますが、聴取時の質問にはショックによる混乱と恥ずかしさでうまく答えられず、とくに「何を入れられたの?」という質問がつらかったようです。
http://www8.cao.go.jp/hanzai/kou-kei/lecture/no4/
警察がこういう質問をしたのは、刑法における強姦とは膣にペニスを挿入する行為に限定されており、それが異物だったら強制わいせつとして処理され、量刑も3ヶ月以上10年以下の懲役、とガクンと下がってしまうからなんでしょうけど、被害者としてはつらい問答でしょう。
厳罰化と被害者支援と再発防止はそれぞれ別のレイヤーであって、別々に議論を進める必要があります。
では再発防止のためにどうするか、という話になりますが、やはり記事中で精神科医が言っているように、性障害が病気だという認識を深めて、投薬やカウンセリングをやっていくしかないでしょうね。性欲を減退させる薬というのは、常人の20倍は性欲が強いといわれるぼくにも投与するべきかもしれませんが、その辺は個人のQOLに関わる部分でもあるので、他人に迷惑をかけない限りは放っておいてもらいたいというか。性犯罪が起こるのは、強い性欲が原因というより、性衝動が暴力や支配欲と結びついた歪みによるものではないかと思われます。
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で、こういう「性犯罪の再発防止」という話になると、決まって「去勢しろ」という意見が出ます。この記事へのブックマークでも、いくつか見られますね。
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(最近は「プロファイリング」という言葉もすっかり聞かれなくなったケド)
これらの例を見てもわかるように、去勢は性犯罪を防止するのにはまったく役立たないどころか、むしろより凄惨な犯罪につながる可能性すらあるので、注意して発言しましょう。
余談ですが、朝日新聞のこの記事には「北沢拓也」という記者の署名がありますが、これ、2008年に亡くなった官能小説の大家と同姓同名ですね。
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