修羅場の人生哲学

漫画家の新條まゆが、ツイッター上で締め切りをめぐるジョークを飛ばしたら、印刷所勤務の人に絡まれていました。


新條まゆ先生と印刷屋さん、締め切りを巡るやりとり - Togetter



んで、このやり取りはその後、印刷屋さんが「クソデータとクソ原稿と毎日戦ってる」と発言したことで、まゆたん先生が侮辱されたと感じたらしく相手をブロックし、結局それぞれの陣営に分かれて「アナタが正しいわ」的なツイートがいくつも投下されて終わっています。


漫画家の「締め切り」をめぐる修羅場は昔から漫画によく出てくるので、ファンが興味を持つネタではあります。かつて『サルまん』でも、締め切りとその後を描いたエピソードがありました。

漫画家が「修羅場」の末に原稿を上げ、満足げに眠るのを「いい気なモンだな、このガキッ!」と編集者が苦々しげに見て、編集部へ帰って校了作業を行い、やっと印刷屋さんに渡して満足げに眠る。今度は印刷屋さんが「いい気なモンだな、このガキッ!」と苦々しげに見て、デッドラインぎりぎりの綱渡りは続いてゆく、というお話です。編集、印刷、製本、と後の工程になるほどダイナマイトの導火線は短くなる、という、漫画のみならずどこの業界でも見られる構造的な恐ろしさが描かれておりました。


んで、今回ネタになったのがまゆたん先生だというところもミソです。新條まゆといえば、トンデモ漫画を連発して批評的にはまったく評価されていないのに、なぜか大ヒットを飛ばしているのでよくツッコミを浴びる作家です。

印刷屋さんも、「コイツは馬鹿な漫画を描いているから馬鹿に違いない」と思った部分はあったでしょう。このように、描いている漫画から作者の人物像を勝手に想像してしまうことはよくあります。


ツイッター上でときどき話題になる偽教授とかいう人がいて、統合失調症の体験とか生活保護の受給体験とかを話したり、子猫を拾ってカンパを募ったり、資産家の奥さんに逃げられて生活が困窮したと言ってカンパを募ったりとかいろいろアレな活動をしているようなのですが、この人もちょっと発言しておりました。



この人はいろいろ物を知ってるようですが、極道漫画にはあんまり詳しくないようですね。立原あゆみはもともと少女漫画出身の人で、近年は極道漫画を描いていますが本人がコワモテだとは聞いたこともありません。

極道の食卓獄中編 第1巻 (プレイコミックシリーズ)

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極道漫画を描いている人は怖い、という理屈を適用するならば、エロ漫画を描いている人は性犯罪者で、水木しげるは妖怪で、やなせたかしは小麦粉だということになってしまいますね。

「エロ漫画を描く人間は実際の性犯罪者!」という規制派の理屈を使うと……まとめ。 - Togetter
まぁ実際にも谷村ひとしはパチンカーで、矢口高雄は釣りキチで、小林まことは柔道部なんですけどね。あくまで作品と本人は別です。普通はね。


ただし極道劇画のジャンルには例外がある! 村上和彦である!

任侠塾―ヤクザに学ぶ修羅場の人生哲学

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村上和彦は「実話ドキュメント」などの極道雑誌に長年連載している、この分野の大御所で、任侠道を追求しすぎた挙句に現実の極道業界でも顔役となり、盃事の際には媒酌人を要請されることもあるほどの本物です。
任侠・盃事のすべて〈上〉親子結縁盃・義兄弟縁組盃

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立原あゆみならまだ絡みにいく人もいるかもしれませんが、村上和彦に絡む奴がいたらよほどの蛮勇か、もしくはヒットマンのたぐいでしょう。プロのレベルでしか手出しできない世界もあるのです。