カステラと革命

速水健朗さん(id:gotanda6)の『ラーメンと愛国』を読んだッス。

ラーメンと愛国 (講談社現代新書)

ラーメンと愛国 (講談社現代新書)

ラーメンを縦糸にして戦後史を読み解くという意欲的な試みで、アメリカが大量の小麦を輸出したことで麺食やパン食が広まったこと、チキンラーメンの発明と発展がそのまま日本の工業が大量生産技術を得ていった歴史に重なること(ドラッカーの仲間であるデミング博士による生産管理手法の指導が大きく寄与した)、ご当地ラーメンの出現は地方の文化的独立ではなくむしろファスト風土化の一環であること、などなど実に興味深い内容でした。最終章で出すはずだった結論が東日本大震災のため変更を余儀なくされ、やや駆け足な印象を与えるという瑕疵はあるものの、面白かったです。


日清 カップヌードル 77g×20個

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インスタントラーメンやカップ麺の発達についても深く考察されており、あさま山荘事件で機動隊が極寒の中カップヌードルを食べていたという有名なエピソードに対し、山荘内にいた連合赤軍の五人も中でインスタントラーメンを食べていたというカウンターのエピソードを持ってくるあたりはさすがだと思いました。
実録・連合赤軍 あさま山荘への道程 [DVD]

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連合赤軍の兵士たちは長く山岳ベースにこもっていて慢性的な栄養失調状態にあり、食べ物への執着がかなり強かったと伝わっています。山荘内にあった食料はリーダーの坂口弘によって厳しく分配されましたが、坂東國男が割り当てを無視してカステラを食べたため吉野雅邦が激怒し、ライフルを突きつけて総括をせまったというから恐ろしい。
「あさま山荘」籠城―無期懲役囚・吉野雅邦ノート (祥伝社文庫)

「あさま山荘」籠城―無期懲役囚・吉野雅邦ノート (祥伝社文庫)

いまは無期懲役囚として千葉刑務所に服役している吉野ですが、坂東への怒りはいまだ納まっていないといいますから、食べ物の恨みというのはまことに恐ろしいものです。