野蛮の園

木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか

木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか

増田俊也の『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』がAmazonから届いたわけですが。

厚っ。


すごいなぁ。原稿用紙およそ1600枚、二段組で700頁という大作です。まだやっと四分の一しか読んでいないのですが、石原莞爾がオレの先生の先生の先生の先生だったことがわかりました。

石原莞爾 その虚飾 (講談社文庫)

石原莞爾 その虚飾 (講談社文庫)


序盤は、木村政彦先生が寝技を学び、著者も北海道大学時代に経験した「高専柔道」がいかに強かったかをひたすら強調していて、柔道界にある講道館史観に真っ向から挑戦する内容になっていました。
高専柔道というのは旧制高校旧制専門学校(現在の大学の前身)で行われていた寝技中心の柔道で、寝技への引き込みが許されているうえに膠着状態での「待て」もない、現在のブラジリアン柔術に近い格闘技です。今の学校教育法における高専高等専門学校)とはまったく関係ないがこれを混同している人は意外に多い、と著者は書いています。


2003年に亡くなったプロレスラーのジャイアント落合についても、

高専柔道出身を売りにしたプロレスラーだったが、これも高専柔道ではなく、現在ある秋田工業高等専門学校の柔道部で普通の柔道をやっていただけである。

と、ちょっぴり触れています。たしかに「全国高専柔道大会四連覇」(これは事実)を売りにしてましたが、そこに誤解を誘う意図がなかったかどうかは今となっては確かめようもありません。普通の柔道だったことはオレが身をもって証明できますけどね(対戦経験アリ)。


ただ、高専の柔道が高専柔道の影響をまったく受けていないかというと必ずしもそうではなく、ルールこそ講道館ルールではあるものの、現在の七帝柔道にも受け継がれている「1チーム15人での勝ち抜き戦」という試合形式もありました。


ぼくが高専の柔道部に所属していたころは、宮城高専(現・仙台高専名取キャンパス)・仙台電波高専(現・仙台高専広瀬キャンパス)・一関高専の三校による定期戦が毎年秋にあって、柔道部は「1チーム15人の勝ち抜き戦」という試合形式でした。高専はほとんどが国立なので、国立大学による七帝柔道からの影響かもしれませんけどね。

野蛮の園 3 (ジェッツコミックス)

野蛮の園 3 (ジェッツコミックス)

とはいっても、どこの高専も部員不足に悩まされていて全員でも15人に満たないチームが多く、しかも、柔道をやるために高専に来る人はいませんからそのレベルは低く、中学時代からの柔道経験者が何人いるかによって勝敗はやる前からほぼ決まっているようなシロモノでした。ぼくも一度だけ出たことがあり、そのときは四人抜きしましたが、相手は全員はじめて試合に出る白帯だったのでまったく自慢にもなりません。



その三校定期戦も、宮城高専と仙台電波高専の合併によってか、今はもう開催されていません。時の過ぎるのは早いものです。


まぁ何にせよ、しばらくはこの本につきっきりの日々を過ごすことになりそうです。