劇画 プロレス地獄変

今日は68回目の終戦記念日であり、戦争の犠牲になった人々を追悼する祈りが日本各地でささげられたが……平和な時代を生きる我々にとって最も身近な戦場といえば、やはりマット界にほかならない!
リング上での闘いのみならず……そこで繰り広げられる奇々怪々の人間模様! 魑魅魍魎が跋扈するさまはまさに地獄の戦場


その地獄を、ベテランの筆であますところなく劇画化した、別冊宝島収録の劇画シリーズ『プロレス地獄変』が……新たに一冊のコンビニコミックとしてまとまり、このほど発売!

劇画 プロレス地獄変

劇画 プロレス地獄変


狂乱の1980年代初頭!

梶原一騎原作の『プロレススーパースター列伝』および梶原の自伝的作品『男の星座』でヒットを飛ばすものの……その後はヒット作に恵まれずセミ・リタイア状態にあった、その人の名は原田久仁信! 故郷で大衆食堂を経営し、料理人として腕をふるっていた彼を宝島社がかき口説いて、「別冊宝島」ムック誌上で現役に復帰させたのが2007年のこと!
ラッシャー木村、阿修羅原、アンドレ・ザ・ジャイアントらを題材にした、ブルースの味わい溢れる作品を発表するものの、復帰当初はブランクを埋めきることができず、作画の面でも構成の面でも満足いく出来ではなかったが……2009年のムック「プロレス下流地帯」に掲載された「地獄のど真ん中」で、WJ時代の長州力永島勝司を題材にしたところ、その絵柄が生み出すおじさんグルーヴと、モデルになった人々が持つズンドコの味わいが見事に融合! 永島の台詞はとくに好評を呼び……一部ファンの間で「カテエ」旋風が吹き荒れた!

プロレス 下流地帯 (別冊宝島 1599 ノンフィクション)

プロレス 下流地帯 (別冊宝島 1599 ノンフィクション)

手応えを感じた別冊宝島は、それまでに掲載された作品を一挙収録したうえ、「地獄のど真ん中」前篇を加えた『プロレス地獄変』を大型ムックとして刊行! これがまた大評判を呼び、心あるファンは原田久仁信の完全復活を確信したのである!
プロレス「地獄変」 (別冊宝島 1630 ノンフィクション)

プロレス「地獄変」 (別冊宝島 1630 ノンフィクション)

原田はこの後も「別冊宝島」誌上に作品を発表し続け、好評のまま2012年を迎える! 宝島社は新単行本『プロレス夢十夜』を刊行するが……まさに好事魔多し! これが残酷な致命傷となった!
劇画 プロレス夢十夜

劇画 プロレス夢十夜

前宣伝では、新作をいくつも収録するとされていたのだが、いざフタを開けてみれば……なんとこれが既発作品の再録ばかり! サギ寸前のやり方に読者は「金返せっ!」「読者をナメるなっ!」と激怒! 別冊宝島自体のスキャンダル偏重姿勢もファンの反感を買い……「失速」「劣化」との大批判は避けられない結果となった! 悪評フンプンのこの作品、売れ行きも芳しくはなかったという……。なにしろ、わたくしも買い求めることを避けたほどである! (鷲羽大介:談)


原田久仁信別冊宝島への連載を休止し……かつて『男の星座』でも描いた題材であるところの、力道山vs木村政彦の「昭和の巌流島の決闘」を検証し直す、増田俊也の『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』を劇画化した『KIMURA』を「週刊大衆」誌上に連載開始!

木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか

木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか

こちらはズンドコ感を排し、シリアスで正統派のスポ根展開が好評を博しているものの……柳澤健が同誌に連載している『1964年のジャイアント馬場』内で、木村史観に真っ向から反論をぶつけられるなど、相変わらずスキャンダラスな味わいは健在!



そしてこのほど、廉価版として、これまでの作品をすべて収録した『劇画 プロレス地獄変』の発売を見たのである!

劇画 プロレス地獄変

劇画 プロレス地獄変

廉価版ということで、まず紙質はよくない! 印刷も決して上質とはいえず、原稿ではなく印刷物から起こしたかのように見える! 原稿の保存状態に疑問がわくほど、クオリティは高くないが……とにかく手軽に読めるのがありがたい!


巨額の詐欺に遭った泉田純の悲劇! サダハルンバ谷川がコンビニ弁当を食する毎日! ターザン山本の死ぬほどどうでもいい離婚歴! これらのエピソードも収録された本作を……手頃な価格でもあり、ぜひプロレス初心者にも手に取っていただきたい! そして戦場に散った人々に思いを馳せてもらいたいのである! ゴマシオとか!(死んでない)