バールのようなもの
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いまだに「仙台では治安が悪化して無法地帯」なんていうデマもちらほら見かけますが(http://www.data-max.co.jp/2011/04/post_14408.html←福岡にいる人がオール伝聞で書いた記事。オレの知ってる国分町とはかけ離れた描写である)、被災地では実際に空き巣の被害が報告されており、米10袋と現金3万円を盗まれたという二瓶透さん(49)がリーダーとなって自警団を組織しているそうです。
http://www.news-postseven.com/archives/20110404_16614.html
また、女性を狙った性犯罪も危惧されており、こんな話も伝わっています。
http://www.news-postseven.com/archives/20110409_16879.html
自警団メンバーの青年はこう語る。
「夜に外を出歩いていて、急にお腹が痛くなった。公園の男性用トイレに入ろうとすると、ドアが開かない。壊れていると思って、やむを得ず女性用に入りました。すると、隣の男性用で、携帯電話でひそひそ話す男の声が聞こえる。
『ちっ! 男だから無理だな。戻るわ』
そして足音が遠ざかった。もしその時、女性が来ていたらどうなっていたのでしょうか……ぞっとする」
ほとんど平山夢明先生の『いま、殺りにゆきます』みたいな話で、ちょっと出来過ぎな感がありますが、こういう話がいかに被災地の人を脅えさせるものか、週刊ポストの人にも少しは考えてほしいものです。
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そして、シメにこんな記事まで。
http://www.news-postseven.com/archives/20110410_16894.html
岩手の自警団 バール振りまわす火事場泥棒をボコボコにする
被災地の荒れた道路で、灯のない暗闇の街をパトロールするのは危険も伴う。不測の事態に備えるため、自警団の多くは荷台に鉄パイプを積み込んでいる。地元住民の中には、自警団が鉄パイプを携行していることに対して、「警察でもないのに、行き過ぎでは?」と訝る声もある。仙台市宮城野区蒲生地区で自警団を結成した二瓶透さんがいう。
「鉄パイプは護身用のために持っているに過ぎない。基本的には、犯罪行為を眼にした場合は警察に連絡するようにしています。こちらが怪我をしたり傷ついたりしては大変。見守っているという事実で威圧感を与えられればと思っています」
一方、岩手県のある港町では自警団によるトラブルも報告されている。震災後、救援活動をするため現地に入り、自警団にも帯同していたというNPOスタッフのKさんが証言する。
「この港町も津波で壊滅的被害を受け、治安が悪化していました。そこで無事だった消防団のメンバーが、倒壊した家屋の多い地域を中心に巡回していたんです。トラブルが起こったのはパトロールを始めて2日目のことでした――」
深夜1時を回った頃、自警団は倒壊家屋の前に停まった不審車を発見した。家の中を覗くと、40過ぎの男が部屋を物色している。
「あいつ、誰だ?」
こちら側に気づくと、そのまま男は逃げようとした。
「火事場泥棒か!」
自警団5人は、男を取り囲んだ。すると男は手に持っていたバールを振り回す。
ただし、5人も護身用に鉄パイプを持っている。大立ち回りの末、男は自警団に取り押さえられたという。
問題はその後だった。
「男に対して5人は殴る蹴るの暴行を加えたんです。男は既に無抵抗だった。私は『もう、やめないと危ない』といったんですが、自警団のリーダーは『おう、こんな奴、死体にして転がしておいても、今ならわからんだろう』って。相当熱くなっていました」
結局、その場はKさんが諫め、後から呼んだ警察によって事態は収束に向かった。先に男がバールで暴れてきたため自警団側に“お咎め”はなかった。
これも丸っきり平山先生の世界だよ! もしくは『ヒーローショー』一歩手前だよ!
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ぼくが最も恐れていた事態に、近づいている気がしてなりません。「現地ではナイフを持った外国人がうろついている」などというウワサをまきちらすタレントもいるぐらいですし(http://d.hatena.ne.jp/washburn1975/20110323)、盗難被害に遭った人の怒り、正義のために武器を手にした人たちの高揚感、外部からやってくると想定されている「敵」の存在。それらが有機的に結びついたとき、いったいどんなことが起こってしまうのか。被災者が一転してリンチの加害者になってしまうことだけは、なんとしても避けてほしいものです。
見慣れない顔の人を見かけたら「4月22日、と言ってみろ」と命じて、「すがつにずうににづ」と答えなかったら鉄パイプを喰らわせる、なんてことだけはくれぐれも無いように。
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