もし平山夢明が桃太郎を書いたら

もし大藪春彦が桃太郎を書いたら - 男の魂に火をつけろ!
第二弾。

もし平山夢明が桃太郎を書いたら

 日本人って昔からキビ団子が好きじゃないですか。どのぐらい好きかっていうと桃太郎が鬼のアジトを襲撃するときの報酬に使われるぐらいです。だいたい猿とキジはともかく、犬ってのは肉食動物で、煮込んだスジ肉だの生きたネズミだの近所のガキのふくらはぎだのをむしゃむしゃ食べるのが本来の姿ですよ。そいつにキビ団子という肉々しさのカケラもないシロモノを差し出して、強盗の片棒を担がせようってんだから昔の人は何かと豪快でしたよね。というわけで平山です。お元気ですか?
 小学生のころ、同級生に「ヒラヤマくん、ぼく実は桃太郎なんだ」と言い出したヤツがいたんです。まあこちらも小学生とはいえそのテの物件を扱うやり方は本能的に会得していましたから、「てめえウソ言ってんじゃねえよぶっ殺すぞ」という本音を包茎Pの先っぽみたいに包み隠して、なになにどういうことなの、と話に乗ってやったんですよ。そうしたら、「うちの親は本当の親じゃないんだ。ぼくは川で拾われたんだ。いつか鬼の財宝を手に入れて見返してやるんだ」とか言うわけです。まあこちとら他人の家庭の事情に首を突っ込めるほど余裕のある生活をしていたわけでもありませんでしたから、ふうんそれは大変だねえ、とかテキトーな相槌を打ってたんですよね。するとそいつは「ヒラヤマくん、君なら信じてくれると思ったのに、やっぱりウソだと思うんだろう」とか、パープーの割にはマトモなことを言い出すんです。オイラも図星を突かれましたからしどろもどろになっていると、「今から証拠を見せてやる」といって、近所でものすごくデカイ犬を飼っている家に行ったんですよ。
 その犬は、今から思えば土佐犬となんだかわかんない犬の雑種で、とにかく凶暴で近所の犬を片っ端から噛み殺していると評判だったんですが、そのモモタローは家の庭に勝手に入って行って、「このキビ団子でこの犬を手下にしてやる」とか言うんですよ。キビ団子といっても駄菓子屋で売ってる黒っぽくて粉っぽいあの謎の食いモンです。そいつを差し出して「さあ鬼退治に行こう」なんて酔っ払いみたいなことを言うんですが、犬としてはそんな食いモンに何の興味もないわけで、ぐるるぁああとかそんな鳴き声を挙げながらそいつのキンタマに齧り付いたんです。そいつもぐぎぇえええとかそんな鳴き声を挙げてのたうちまわって、、オイラとしてはその鳴き声のハーモニーが織りなすエンターテインメントを楽しんでいたわけですが、犬の飼い主であるその家のババアが飛び出してきて「何やってんの!」と叫ぶや、モモタローを植木バサミの柄でもってぶん殴りまくったんですよ。そうこうしていたら近所のオッサン連中が集まってきて、「ダメだよフキコさん子ども相手に」とか言いながらババアを家の中に押し込んで、モモタローを道路に放り投げて何事もなかったように解散したんですね。
 モモタローは本当の親じゃないはずの親に病院に連れて行かれて、キンタマを片方取ったのなんだのという騒ぎになったんですが、土佐犬が保健所に連れて行かれることもババアが捕まるようなこともなかったんだからいい時代だったんですね。モモタローも中学に上がるころには青春リビドーにどっぷり支配され、片キンながら毎日大量の白濁液を生産するようになったものでした。ほんと、桃太郎ってのもどうかと思いますが、面白いモンです。

どうかと思うが、面白い

どうかと思うが、面白い


※注:この文章はわたくしがテキトーに書いたもので、実在する平山夢明先生とは何の関係もありません。


ちなみに、今度の土曜日には「せんだい文学塾」の講師として平山先生をお迎えします。近所の方は遊びにきてね!


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