鮎のふるさと
市橋達也の『逮捕されるまで』を読みました。
- 作者: 市橋達也
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2011/01/26
- メディア: 単行本
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前半は幻覚まじりのホームレス生活、後半はリアリティのある労働生活という構成は、吾妻ひでおの『失踪日記』に通じるものもあります。
- 作者: 吾妻ひでお
- 出版社/メーカー: イースト・プレス
- 発売日: 2005/03/01
- メディア: コミック
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逃亡中、建築や解体の現場で働きながら、自分のことを伝えるニュースを見る場面も、また興味深い。彼の足取りがつかめなかった当時、「女装して男娼をしている」「親から金をもらっている」「友人の助けで海外へ逃げている」などと憶測で報道されていましたが、それらはすべてデタラメでした。とくに女装説には怒りをあらわにしており、「僕はそんなことしてない!」「たとえ生きるためだって、そんなことするぐらいなら僕はもうとっくに死んでる!」「僕は性的倒錯者じゃない」などと、ゲイフォビアまじりの強い口調で書いています。冷静に考えれば、同性愛より強姦致死の方がよっぽど深い性的倒錯だと思うのですが、まぁ本人がそう感じたのなら仕方ありません。思うに、この報道を否定したいというのが、彼がこの手記を発表する動機のひとつだったのではないでしょうか。ぼくも、あのキャンペーンは逃亡中の市橋に対する嫌がらせとしか思えませんでしたからねぇ。
本文中では、映画や本や漫画への言及もいくつか出てきます。事件直後、警官に囲まれたマンションから逃走する場面では、マイケル・マン監督の『ヒート』のセリフ「警察が踏み込んだら、30秒でドロンする」というのを引き合いに出したり、ジュード・ロウ主演の『クロコダイルの涙』という映画のタイトルが「うそつきの涙」(ワニが獲物を飲み込むときに出る涙)を意味すると知って自分の正体に気づいた、というあたりの引用も、やや文学的誇張を感じなくもありませんが効果的です。
- 出版社/メーカー: 東北新社
- 発売日: 2008/06/13
- メディア: DVD
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- 出版社/メーカー: パイオニアLDC
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漫画については、不衛生なホームレス生活をしていたとき、公園に放置されていた『こち亀』の単行本を読んで
主人公の両津勘吉は汚い生活にさらされ続けた結果、体の中の免疫が強くなって風邪をひかない、そんな話だった。自分の体を慣れさせて強くすればいいんだって妙に納得した。もちろんマンガの話だってことはわかってる。でもそれからはトンネルの中を歩くことは苦じゃなくなった。考え方ひとつなんだなと思った。
−本書p82
これは、コミックス70巻に収録されているエピソード「秘薬リョーツGPXの巻」ですね。
こちら葛飾区亀有公園前派出所 70 (ジャンプ・コミックス)
- 作者: 秋本治
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1991/07/10
- メディア: コミック
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他には、『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』の「罪には罰なんだよ」というセリフを思い出してみたり、
ムヒョとロージーの魔法律相談事務所 1 (ジャンプコミックス)
- 作者: 西義之
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2005/05/02
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『バキ』を読んだりします。
四万十川に着く前に、古本屋でマンガ『バキ』を買った。地下闘技場戦士が五人の死刑囚と戦う話の箇所を選んで買った。自分も捕まったら死刑囚になる。強くならないといけない。強い死刑囚を見て、自分を励ますためだった。
−本書p94
いやいやいや達ツァンよ、死刑囚は結局みんなやられちゃうじゃん!
バキ―New grappler Baki (No.9) (少年チャンピオン・コミックス)
- 作者: 板垣恵介
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 2001/07
- メディア: コミック
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高知県に入ったときには、「広末涼子の出身地だったし」という謎の理由で緊張したり、四万十川の川辺の茂みで二日間もバキを読みながら過ごしたり、と妙にのんびりした様子を見せます。どうせだったら、四万十川の鮎を天ぷらにして食べ、号泣するという展開も欲しかったですね。
- 作者: 雁屋哲
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 1986/12/01
- メディア: コミック
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まぁ、実際に市橋被告が書いた手記そのままではなく、ゴーストライターによる手直しがかなり入っていることは容易に想像がつきますが、それにしても読み応えのある本でした。市橋が逮捕されたとき、その頬のこけたルックスが水嶋ヒロに似ていると話題になったものですが、この本に比べると水嶋さんの『KAGEROU』はカスや。なんちゅう本を読ませてくれたんや…