美しきもの、汝の名は葵

名古屋の警察署がこんなパトロールをやっているそうな。


http://www.asahi.com/national/update/1125/NGY200911250001.html

スラリ女装警官、出動中 ひったくり犯覚悟!

 腕力の弱い女性を狙うひったくり犯を逮捕しようと、愛知県警の男性警察官が女性に扮して夜間パトロールに10月下旬から出動している。細身にカツラをつけ、スカートやパンストをはいての変身ぶりは、一般男性から「ナンパされる」ほど。しかし、ほとんどが武道の有段者で、「女装ポリス」たちは「絶対に捕まえてやる」と闘志を燃やしている。

 県警中署の地域課特別警戒隊に所属する20代の男性警察官4人が女装して、10月20日から不定期に出動。繁華街の路地裏などひったくりが多発する場所を深夜から未明にかけて歩く。犯人が接触したら、周囲に潜む助っ人警察官とともに逮捕する手はずだ。

 4人は、若くて細身の女性らしい体形を「基準」に、剣道や柔道の有段者を中心に選ばれた。カツラやスカートを身につけ、ブランドのバッグを肩にかけて女装。5回の出動経験がある鈴木孝義巡査(25)=身長170センチ、体重53.5キロ、剣道初段=は、内股で歩く徹底ぶり。車の男性から「お嬢さん、送ってあげようか」と声をかけられ慌てたこともある。

 「女装警官」の1人、曽我部一浩巡査長(26)=同171センチ、61キロ、柔道初段=は「力が弱い女性を狙うのは卑劣。自分を狙ってきたら、投げ飛ばしてやります」と力強い。

 県警によると、県内では10月末までに1309件のひったくりが発生。前年同期より6%少ないが、中署管内の名古屋市中区では45%増の172件。西三河尾張東部、知多地域でも件数が増えた。被害者の9割は女性。午後8時〜午前2時に被害の半数が集中する。帰宅途中の若い女性が狙われるという。

 ただ、これまでに女装チームは7回出動したが、まだ逮捕実績はゼロ。もっと大勢を投入したいところだが、「すぐ男性とバレるような、ごつい警察官に任せるわけにはいかない」(中署)。「基準」に達する人材は、4人がやっとだという。

これ考えた人、絶対に藤島康介の『逮捕しちゃうぞ』ファンだと思うんですけど。

逮捕しちゃうぞ (4)

逮捕しちゃうぞ (4)


逮捕しちゃうぞ』は、1986年から92年まで、講談社の今はなき「パーティー」誌(コミックモーニング増刊)に連載されました。著者にとってはじめての連載であり、人物の顔が毎回別人のように変わるなど絵柄は安定していません(ちなみに初期は頼子の苗字まで「伊集院」だったり「鳥羽」だったりして安定せず、「二階堂」に落ち着くまでしばらくかかった)が、軽やかなお色気と緻密なメカ描写は現在の萌え漫画に多大な影響を及ぼしています。


で、この作品に「葵双葉」という女装警察官が登場します。


愛知県警の人たちと同じようにおとり捜査で女装したのがクセになり、フルタイムで女装するようになったこの人。女性の制服で「婦人警官」として勤務し、私服も女性のものを身につけています。婦警仲間からは「葵ちゃん」と呼ばれ、更衣室もいっしょに使うほど受け容れられていました。


この辺は、掘り下げて考えると笑い事ではすまされない話ですが、この漫画では一種のギャグとして扱われ、それほど深刻には描かれていません。原作では見た目は完全に女性だったものの、しゃべるとすぐ男性とバレる描写がありましたが、アニメ版ではやや男性の面影を残した風貌で、声は松本梨香が演じており、ハスキーで男性っぽい声を再現しています。ちなみにドラマ版では登場しませんでした。


葵ちゃんは女性の服を身につけていますが、ホルモン剤の投与や性器の手術などは受けておらず、下着も男性用のトランクスをはいています。性同一性障害としては軽い部類に入るでしょうね。性嗜好の対象は明示されておらず、ノリで「彼氏ほしい」と言う場面はあったものの、特定の男性に好意を持ったり交際したりする描写はありません。以前は女性と交際していたらしく、学生時代は「女ぐせが悪い」という評判があったとされています。


原作の終盤では、主人公の夏実(ドラマでは伊東美咲が演じていた)が酒に酔い、この人に肉体関係を迫る場面もありました。ここは倒錯した色気があってなかなか悪くなかったなぁ。