狼は泣かず

仙台市の桜井薬局セントラルホールで、三年ぶりに復活した覆面上映を観てきたッス。


千葉真一主演の『ウルフガイ 燃えろ狼男』でした。

ルポライター犬神明を主人公とする、平井和正のアダルト・ウルフガイシリーズが原作。『虎よ、虎よ!』を中心に、『狼よ、故郷を見よ』もちょっぴり入れてあります。”虎を飼う女”*1ミキ(奈美悦子)と”犬神明の妻”たか(渡辺やよい)が対決するあたりは原作ファンにとって衝撃的な場面ですが、『狼よ、故郷を見よ』の部分はラスト15分ぐらいしかないので、原作未読の人からすれば、いきなり出てきた女がいきなり正ヒロインになったとか言われてもわけわかんないと思います。


犬神明とミキを利用しようとするJCIAの高官に室田日出男、犬神と同業のトップ屋に曽根晴美、悪徳芸能プロの社長に名和弘、GSくずれのチンピラに安岡力也というキャスティングはまぁいつもの東映プログラムピクチュアという感じです。


犬神明銭形平次みたいにコインを投げる(原作では指で弾く)ところとか、仲間の曽根晴美が首を吊られそうになっているのになかなか助けないで結局死なせてしまうところとかツッコミどころも満点。名和弘が拘束台にくくりつけられて、奈美悦子の超能力(虎のスタンドを出す)で血みどろになって死ぬあたりも思わず笑いを誘います。


この映画はソフト化されていません。大手芸能プロを思わせる「タナベプロ」が大物政治家を思わせる「福中」の手先となって悪事をはたらくあたりがマズかったのか、それとも原作を大いに破壊した内容に平井和正が怒ったのか、その辺はわかりませんが、ヤング犬神明(志垣太郎)がライオン丸みたいに変身して羽黒獰(松田優作)を串刺しにする『狼の紋章』の方はソフト化されているのだから、こっちも出してほしいですね。

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ちなみに、こちらで神明(アダルト犬神明とほぼ同一人物)を演じているのは黒沢年男。原作では「痩せぎすのジャン=ポール・ベルモンド」と描写されている犬神明ですが、当時の日本で再現するとむちゃ濃くなったんですね。

*1:平井和正はこの話がお気に入りで、池上遼一版『スパイダーマン』にも出てくる