人間牧場

女装した美少年が女子高に潜入する『乙女はお姉さまに恋してる』というエロゲがありまして、「おとめはボクにこいしてる」、略して「おとボク」と呼ばれております。

乙女はお姉さまに恋してる

乙女はお姉さまに恋してる


で、その「おとボク」が独自ドメインを取得したのかと思ってしまう、こんなサイトがありました。


http://otoboku.jp/


サイバーエージェントが開発した、女性どうしで男性の情報を共有しあう携帯サイト、その名も男の子牧場です。


ここでは、男性は馬や羊などの家畜アイコンで表され、今はやりの「草食系男子」を肉食系女子が喰らう、という構造があるようですね。ミスター草食系男子と呼ばれるぼくとしては、無関心ではいられません。


このサイトは、男性ネットユーザーから猛烈な反発を受け、「男性差別だ!」というお決まりの反応も見られます。
女性が男性を品定めすることについて、ものすごく過敏に反応する人たちっていますからねぇ。


ぼくとしては、このセンスはひどいと思うけど、でも本気になって「男性差別だ!」と叫ぶのもみっともないと思うなぁ。


カウンターとして「女の子牧場」なんてのを作ってる人もいるけど、そっちは実際にあったらシャレにならないですよね。でも「男の子牧場」はシャレとして済ませるのが男の器量だと思います。


だって、女性があたかも家畜か商品のように(それも主に性的魅力によって)品定めされランク分けされる、というのは現実の社会にある権力構造を反映していますけど、男をランク分けするなんてのはせいぜい女性同士での井戸端会議に過ぎず、そこに搾取の構造はそれほど見て取れませんからね。



んで、ここ十日ほどホットになっているこんな話題もあるんですが。


http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090507-OYT1T01111.htm

日本製「性暴力ゲーム」欧米で販売中止、人権団体が抗議活動

少女を含む女性3人をレイプして妊娠や中絶をさせるという内容の日本製のパソコンゲームソフトに海外で批判が高まっている。


 日本での販売中止を求める抗議活動を国際人権団体が始めた。このゲームは2月に英国の国会で問題になり、ビデオ・書籍のネット販売大手「アマゾン」が扱いを中止した。しかし、児童ポルノなどの規制が緩い日本では今でも流通している。

 このゲームは、未成年と見られる女子2人とその母親を電車内で痴漢した後にレイプし妊娠や中絶をさせるまでを、コンピューターグラフィックスを使った画像で疑似体験するという内容。横浜市のゲームソフトメーカーが2006年に売り出した。

 今年に入り海外の人権団体で問題視されるようになり、英国ではこのゲームをアマゾンで入手できることに驚いた国会議員らが同国内での流通に反対する動議を提出した。こうした動きが英国などのメディアで報じられ、英国アマゾンは2月にこのゲームの取り扱いを中止。米国のアマゾン本社も取り扱いの中止を公表した。

 しかし、日本では児童ポルノなどの法規制が緩く、日本の「アマゾン・ジャパン」は最近、このゲームの販売を中止したが、ほかの通信販売では今も入手できる。

 抗議活動を始めた国際人権団体「イクオリティ・ナウ」(本部・ニューヨーク)は「女性や少女への暴力をテーマにした産業が日本で高収益を上げ、『ロリコン』と呼ばれる少女の児童ポルノ市場も巨大化している」との声明を発表。「日本政府はなぜレイプを奨励するかのようなゲームの流通を止めないのか」と政府の対応にも批判を向ける。

 同団体は6日、このゲームを含むレイプ、監禁などの性暴力ゲームの制作会社や販売会社、麻生首相ら日本政府の要人らに抗議文を出すように、160か国の会員3万人に呼びかけ始めた。国内の人権団体の関係者なども、こうした活動を機に、販売会社などへ働きかけを行っている。

これは『レイプレイ』というゲームだそうですが、たしかにぼくもこのテのゲームは嫌悪を感じます。エロはいいけど、女性をいたぶったり凌辱したりするのはぼくの好みではないし、ましてや「孕ませ」というジャンルには気持ち悪さしか感じられません。


でも、その内容がいかに酷くて低レベルでクソみたいなものであろうと、だからといって「人目につかない地下で流通させろ」だの「表現の自由を云々するなら芸術的なものを創れ」だの「なにそれこわい」だのという論調にはまったく同意できません。表現の自由というのは、イイものにだけ許す・ダメなものには許さない、なんてものではないし、イイものとダメなものを区別する権利は受け手それぞれが持つものであり、権力によってそれを規定されるのは絶対に受け容れられないことだからです。




とはいえ、抗議している側の論理にも少しは耳を傾ける必要はあると思います。


ここで本当に問題になっているのは、単にひどいゲームが売られているということではなく、女性が性暴力の被害に遭うことが男性のエロスを喚起するという、その権力構造なんですよね。つまりさっきと同じ問題なわけで。
男が女から性的搾取されるというフィクションはファンタジーでしかありませんが、女が被害に遭うものは現実の性意識を反映したものであり、フィクションが犯罪を増長しているかそれとも抑制しているかはここでは問題になっておらず、フィクションを生み出している男性の意識が批判されている、ということなわけです。


女性差別とかセクハラとか、そういう問題はみんなこの男→女という権力構造から生まれているのであって、そこを理解していない男の子たちが「男の方が差別されている」と吹き上がっているんですね。



まぁ、ぼくはべつに小倉千加子ファンでもないのでカタい話はもうこのくらいにします。



男の子牧場」をネタ化したパロディ記事では、これが秀逸でした。


キミも「男の子牧場」の牧場主になってカワイイ男の子をいっぱい飼育しちゃおう! - 米


ネタの面白さもさることながら、男の子たちの可愛らしさがたまりません。うし君の股間から絞ったミルクを、冷凍して販売するというのは実際の畜産業ではごくふつうですけどね。四月には、宮崎県で「ブランド和牛の冷凍精液盗難事件」なんてのもありましたし。


あと、「男の子牧場」というネーミングは『ウルトラセブン』第22話「人間牧場」を思わせるものがありました。

ウルトラセブン Vol.6 [DVD]

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佐藤まさあきの『堕靡泥の星』にも「人間牧場」というエピソードがありました。多数の女性を拉致して監禁するの。でもこれは、レイプものとはいってもエロより悪魔的狂気を描いているものなので、ちょっとニュアンスが異なりますけどね。


んで、これらについて調べようとググったら、北軽井沢に「人間牧場」という施設が実在するという驚愕の事実にブチ当たりました。


http://www.kaze3.cc/07-gaido/08-farm/ningen/ningen.htm

人間は放牧されてませんが、マス釣りができるそうです。