おくりびとにAiを

昨日は、仙台市で開かれた海堂尊講演会”おくりびとにAiを”に行ってまいりました。


死因不明社会―Aiが拓く新しい医療 (ブルーバックス)

死因不明社会―Aiが拓く新しい医療 (ブルーバックス)


今回の講演会は東北大学医学部同窓会の催しなので、作家としてではなく医師として、Ai(Autopusy imaging:死亡時画像診断)の重要性を訴えるという内容でした。


ジェネラル・ルージュの凱旋』にも、幼児の死に不審を抱いた速水医師が、遺体をCT撮影する場面がありましたね。

ジェネラル・ルージュの凱旋(上) (宝島社文庫)

ジェネラル・ルージュの凱旋(上) (宝島社文庫)

で、この行為は医療ではない(生きた患者を対象としないものは医療行為に含まれない)ので、どこからもお金が出ないという問題があるわけです。


この問題について、海堂先生は「解剖ありきの法医学でなく、放射線科医師によるシステムを確立せよ」と主張されていて、東大のエライ先生から訴訟を起こされたのもそのためだそうです。


お医者さんの間では「屍は活ける師なり」といい、解剖は医学の基礎であり医療はその上に拠って建つものと考えられているとのこと。Aiはその公理を揺るがすパラダイムシフトなので、なにかと風当たりが強いらしいです。素人にはいいことずくめのように思われますが(遺体が傷つかない、判断が容易、費用が安い、裁判で証拠として使用しても裁判員に与えるショックが少ない)、業界には色々なしがらみもあるんでしょうね。


作家業界は、医療業界に比べると風通しがよいのかどうか知りませんが、「仙台は伊坂幸太郎の地元なので、敵地に乗り込む若武者の気持ちでやってきた(でもルックス的にはむこうの方が若武者っぽいけど)」とか、「映画『ジェネラル・ルージュの凱旋』は『おくりびと』の影にかすんでしまったので、復讐のために今回の講演の副題を”おくりびとにAiを”にした」「Aiが普及したら、横山秀夫の『臨場』は成り立たない話になる」などなど、グッとくる発言がいくつも聞かれました。

臨場 (光文社文庫)

臨場 (光文社文庫)

聴衆はほとんどが医療関係者、といういささか特殊な催しだったので、いろいろ話しやすかったんでしょうか。