大東北四谷怪談
宮城県栗原市の17歳女性が、岩手県川井村の小川で遺体となって発見されるという殺人事件がありました。
身元特定の決め手になったのは、遺体に残されていたバラと蝶のタトゥーだそうです。
で、事件への関与を疑われていた被害者の知人男性が、田野畑村の海岸から飛び降り自殺したような形跡が見つかりましたが、これは偽装の可能性が高く、警察はさらにその足取りを追っているそうです。
現時点での最新情報が、こちら。
http://www.kahoku.co.jp/news/2008/07/20080706t33019.htm
友人に「殺されるかも」 岩手・川井殺害女性
宮城県栗原市若柳の無職佐藤梢さん(17)が殺害され、岩手県川井村田代の沢に遺棄された事件で、佐藤さんは殺される数日前に「殺されるかもしれない」と言い残し、事件に関与しているとみられる同県田野畑村出身の男性(28)に会いにいっていたことが5日、関係者の話で分かった。
佐藤さんは6月28日、友人女性の知人であるこの男性に「(恋愛関係で)相談に乗ってほしい」と岩手に呼び出された。この時、佐藤さんは「友達の元彼に会う」「私、殺されるかもしれない」と友人男性に話したという。
その後、佐藤さんは同日午後10時ごろに男性との待ち合わせ場所である登米市内のコンビニ店へ向かった。
佐藤さんは30日から7月1日にかけて殺害されており、直前の足取りに男性が深くかかわっていたことが強まった。
さらにこの男性は昨年12月まで半年間、登米市内に住んでいたことも判明。友人の飲食店従業員のアパートに転がり込み、同居していたらしい。
宮古署捜査本部のこれまでの調べでは、押収した男性所有の乗用車は事故車両だったが、男性自身が田野畑村内の県道で事故を起こし放置していた車だった。車にあった女性用の履物が佐藤さんのものだったかは、まだ確認できていない。
男性は2日から3日にかけて、実家近くの「鵜の巣断崖(うのすだんがい)」で飛び降りたか、自殺の偽装を図り逃走している可能性が高い。
自殺を偽装して逃亡、というネタはディケンズの『バーナビー・ラッジ』以来のミステリの定番ですが、現実の事件では滅多にお目にかかれませんね。
実際にあった例というと、ちょっとニュアンスは違いますがこの事件ぐらいでしょうか。
http://yabusaka.moo.jp/onishikatsumi.htm
警察庁の総合特別手配第一号となった大西克己は、養父母を毒殺して逃亡しながら、さらに二人の男性を殺害して被害者の戸籍を奪い、他人になりすまして生活していました。
この事件では、二審の国選弁護人が「死刑が当然」と弁護を拒否し、民事で賠償命令を受けるという顛末もありましたので、昨今の吊るせ吊るせ派のみなさんが「昔の弁護士は立派だった」と引き合いに出すこともしばしばあります。
本格ミステリに話を戻しますと。
5月に容疑者が逮捕された江東区マンション女性殺害事件では、ディクスン・カーの『妖魔の森の家』みたいだなー、と思ったぼくですが、今回の事件でも古典の推理小説を思い出しました。
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そして、松下の学友である、天才数学者にして名探偵、神津恭介の推理により事件は解決します。
※以下ネタバレ
実は、殺されたのは絹枝の双子の妹の珠枝であり、絹枝は自分が殺されたように偽装して、愛人と逃亡しようとしていたのでした。
胴体がなかったのは、珠枝が違う刺青を入れていたからです。
この小説は、昭和21年という、日本に本格推理小説が根付いていないころに書かれたものなので、今になって読むとかなり古めかしいですね。
双子が出てきたら、その時点で「あぁ入れ替わるんだろうなぁ」と思うでしょ、今の読者は。
密室トリックにしても、針と糸を使うというのは当時としても思いっきり古かったと思いますね。ヴァン・ダインの『カナリヤ殺人事件』で同じようなトリックを使ってたのが、この小説よりもう20年も前だったでしょ。
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まぁ、ヴァンスや神津は素人探偵ですから何を証拠に推理したっていいんですけど、警察がそんなのを証拠にして逮捕されるんじゃ、たまったもんじゃねえよなぁ。