三大推理作家あれこれ

球形の荒野 (上) 長篇ミステリー傑作選 (文春文庫)

球形の荒野 (上) 長篇ミステリー傑作選 (文春文庫)

松本清張の『球形の荒野』が、中国でベストセラーになっているとか。


http://jp.xinhuanet.com/2012-04/07/c_131511976.htm

松本清張作品、中国語名変更でベストセラーに

世界三大推理小説作家とされる松本清張の代表作「球形の荒野」は、中国発売当初、まったく注目されなかった。出版会社の北京読客図書有限公司が今年、同書の書名を「一個背叛日本的日本人(日本を裏切った日本人)」と改め中国で再出版すると、カルチャー系SNS「豆瓣」の新書欄トップページに掲載され、10点満点で9.2点の高得点を獲得した。長江日報が報じた。

有名小説が中国で不評となった例は他にもある。「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」の発行部数は日本で100万部を突破し、2011年のベストセラーとなった。しかし北京新華書店のデータによると、同書の2月の発行部数は、北京市全体で4部のみであった。米国の歴史上、「聖書」に次ぐ大ベストセラーを記録した「肩をすくめるアトラス」は、米国で最大の影響力を持つ10大図書の一つとされ、発行部数8000万部を記録した。しかし同書の1月の発行部数は、北京市全体で3部のみであった。「薔薇の名前」は1980年に出版され、発行部数1600万部を記録した名作で、現在まで35ヶ国語に翻訳されており、海外では「ダ・ヴィンチ・コード」の評価を大きく上回るが、北京市での発行部数は数ヶ月に渡り一桁台と低迷している。

読客図書の関係者は、「名作が売れない理由はさまざまだが、最大の原因は、読者がイメージしにくい難解な書名である。『球形の荒野』を再出版する際、当社は書名を『日本を裏切った日本人』と改めた。この書名は物語の内容を正確に要約しており、シンプルで読者も一目で理解することができる。当社は装幀のデザインにもこだわり、表紙では、純白をバックとした真っ赤な日の丸が刀に切り裂かれている。第二次世界大戦の敗戦前夜、ある日本人外交官の生死を賭けた闘いに関する物語の魅力が、読者に十分伝わってくる」と語った。

(人民網日本語版)

中国では翻訳小説があまり売れてないようですが、それにしても4部とか3部という数字は尋常じゃないですね。おそらく「発行部数」と「販売部数」がごっちゃになっていて、しかも北京市内の書店どこか一軒だけの数字じゃないかと思うんですが。


でもこのタイトルだと、ノンフィクションだと誤解する人もいそうですね。売るほうもそれを見込んでセンセーショナルな名前を付けたんでしょうけど。まぁ清張の作品はどれもタイトルが抽象的で、訳したらキャッチーじゃなくなるのはわかるんですけどね。


それにしても、清張が「世界三大推理小説作家」だとは知りませんでした。


ふつう、三大推理作家といったらアガサ・クリスティエラリー・クイーン、ジョン・ディクスン・カーじゃないかと思うんですけど。

ABC殺人事件 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

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エジプト十字架の謎 (創元推理文庫)

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火刑法廷[新訳版] (ハヤカワ・ミステリ文庫)

火刑法廷[新訳版] (ハヤカワ・ミステリ文庫)


ちなみに世界三大SF作家は、アイザック・アシモフアーサー・C・クラーク、ロバート・A・ハインラインといわれています。

幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)

幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)

月は無慈悲な夜の女王 (ハヤカワ文庫 SF 1748)

月は無慈悲な夜の女王 (ハヤカワ文庫 SF 1748)



日本で、ミステリの「三大○○」といった場合は、まず小栗虫太郎の『黒死館殺人事件』、夢野久作の『ドグラ・マグラ』、中井英夫の『虚無への供物』からなる「三大奇書」が挙げられるところです。

黒死館殺人事件 (河出文庫)

黒死館殺人事件 (河出文庫)

ドグラ・マグラ (ハヤカワ・ミステリ 276)

ドグラ・マグラ (ハヤカワ・ミステリ 276)

虚無への供物 (講談社文庫)

虚無への供物 (講談社文庫)

近年では、これに竹本健治の『匣の中の失楽』を加えて「四大奇書」と呼ぶこともあるようです。
匣の中の失楽 (双葉文庫)

匣の中の失楽 (双葉文庫)


「三大名探偵」といった場合は、これは明智小五郎金田一耕助、神津恭介で決まりでしょう。

本陣殺人事件 (角川文庫)

本陣殺人事件 (角川文庫)

刺青殺人事件 新装版 (光文社文庫)

刺青殺人事件 新装版 (光文社文庫)

世代が新しくなると、新本格ムーヴメント以降はまた多くの名探偵が生まれましたが、三大名探偵を選出する動きはいまのところ見られないようです。榎木津礼二郎(もしくは中禅寺秋彦)、湯川学、犀川創平あたりが妥当かと思いますが、もう少し世代の古い、亜愛一郎、御手洗潔、沢崎あたりも個人的には外したくない。


作品の量産と一般からの支持でいえば、浅見光彦十津川警部三毛猫ホームズも外せないところですが、ミステリファンの支持という点では弱いですね。


では日本三大推理作家といったら、これは江戸川乱歩横溝正史松本清張というのが妥当でしょう。異論はそんなに出ないと思います。
現役の三大作家は、これは異論がたくさん出てくると思いますが、個人的には伊坂幸太郎東野圭吾宮部みゆきといったところです。


ハードボイルド/冒険小説のジャンルでは、北方謙三大沢在昌逢坂剛が挙げられるでしょうか。それに志水辰夫船戸与一佐々木譲も外せないところです。ちょっと世代が下がると馳星周楡周平今野敏ということになるでしょうか。


あと、山形三大推理作家というのもいて、これは長岡弘樹柚月裕子、そして深町秋生です。

傍聞き (双葉文庫)

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検事の本懐

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アウトクラッシュ 組織犯罪対策課 八神瑛子? (幻冬舎文庫)

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