文学史修正主義

やっと東北でも『靖国』の上映が始まりました。

http://www.yasukuni-movie.com/contents/theater.html

宮城 仙台フォーラム:7月5日〜11日
山形 山形フォーラム:7月5日〜11日
岩手 盛岡フォーラム:7月5日〜11日
青森 八戸フォーラム:7月19日〜25日
福島 福島フォーラム:8月2日〜8日

一週間しかやりません。お見逃しのなきよう。


また、7月19日〜25日の一週間は、桜井薬局セントラルホールで『蟹工船』が上映されます。

http://www.sakura-centralhall.jp/lineup.html

蟹工船 [DVD]

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どうせだったら、今井正監督の『小林多喜二』もやってほしいですね。

70年代映画懐かし地獄―あの頃映画は爆発だった! (映画秘宝コレクション21)

70年代映画懐かし地獄―あの頃映画は爆発だった! (映画秘宝コレクション21)

この本でBAZILさんが紹介してる記事しか読んだことないんですけど、幼少のBAZIL氏が、実物の小林多喜二そっくりの左翼おじさんといっしょに、多喜二(演じるのは、左翼役の定番・山本圭)が特高警察に拷問虐殺される場面から始まるこの映画を観たのが、はじめての映画体験だったというエピソードは味わい深いですね。


拷問虐殺といえば、「小林多喜二特高に虐殺された」というのは歴史的常識だと思ってたんですが。


wikipediaを見ると、「取調べ中に心臓麻痺で死亡した」と書かれてたのでビックリ。ええーっ、そんな大本営発表を鵜呑みにしたような記述アリなの。


と思って履歴を見たら、どうも編集合戦があったようです。


「小林多喜二」の変更履歴 - Wikipedia

これを見ると、7月2日までは

激しい拷問により全身を殴打され腫れ上がり、獄中死した。この拷問では縄で縛り上げて宙にぶら下げる「飛行機モノ」もされている

だったのが、改変されて

取調べ中に心臓麻痺で死亡した

になり、7月4日にはカウンター編集されて

築地警察署内において4時間にもわたる惨虐な拷問を受けて虐殺された。この拷問では、縄で縛り上げて宙にぶら下げる「飛行機モノ」もされている。絶命したのは午後7時45分だった。特高警察は心臓麻痺と発表したが、翌日遺族に返された多喜二の遺体は、全身が拷問によって異常に腫れ上がり、特に下半身は内出血によりどす黒く腫れ上がっていた。しかし、どこの病院も特高警察を恐れて遺体の解剖を断った

となり、反動でさらに描写が過激になっているのがわかると思います。



文学史にまで、歴史修正主義の手が迫っているんですかね。



小林多喜二といえば、個人的にちょっとした思い出がありまして。



ぼくが若い頃、当時親しくしていた女性と「この世でいちばん痛い拷問は何か」って話になりまして(なんつう話をしてるのだ)。

ぼくが、小林多喜二の『一九二八年三月一五日』にあった拷問の描写、

渡は、だが、今度のにはこたえた。それは畳屋の使う太い針を身体に刺す。一刺しされるたびに、彼は強烈な電気に触れたように、自分の身体が句読点ぐらいにギュンと瞬間縮まる、と思った。彼は吊されている身体をくねらし、口をギュッとくいしばり、大声で叫んだ。
「殺せ、殺せーえ、殺せーえ!!」

がすごく印象的だった、と言いましたら、相手の女性に、

小林多喜二…? 学校で習ったかも。たしかなんとかニアとかいう…


わかった! メソポタミア文明の人でしょ!

と、自信たっぷりな態度で言われまして。


いつも、「女の子はバカの方が可愛い、なんてのは女を下に置きたがるマッチョ主義者の妄言」とか言ってるぼくですが、そのときは、ぼくの中の萌え回路が発動するのを押しとどめることができませんでした。