One more red nightmare
昨今ではハードボイルド小説というと、犯罪者や捜査官の悲哀を描いたノワール的なものを思い浮かべる人が多いと思いますが、1970年代ごろ、まだライトノベルなんて言葉がなかったころには、超人的な戦闘能力を持ったスパイや殺し屋が、犯罪者やテロリストをばっかんばっかん殺しまくる小説が量産されておりました。
イアン・フレミングが007シリーズ第一作『カジノ・ロワイヤル』を発表したのが1953年。
- 作者: イアン・フレミング,井上一夫
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/06/27
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 8回
- この商品を含むブログ (24件) を見る
ドナルド・ハミルトンの”マット・ヘルム”シリーズなど、後発の作品がいくつも出ますがやがて飽きられ、70年代に入る頃には、とにかく暴力と殺戮をパワーアップさせたハードアクション小説がどんどん発表されました。
このジャンルの先駆けとなったのが、フランスのジェラール・ド・ヴィリエによる”プリンス・マルコ”シリーズ。
SASセーシェル沖暗礁地帯 (創元推理文庫 197-1 プリンス・マルコ・シリーズ)
- 作者: ジェラール・ド・ヴィリエ,伊東守男
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1978/12
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (1件) を見る
主人公の”プリンス”ことマルコ・リンゲが、神聖ローマ帝国第18代大公殿下でありながら、先祖伝来の居城にかかる莫大な維持費のため、CIA特務諜報員として世界を股にかけ、テロリストと戦ったり東側の陰謀を阻止したり美女と熱い一夜を過ごしたりするという、実に荒唐無稽なものです。
このヒットを受け、アメリカではドン・ペンドルトンによる”
- 作者: ドン・ペンドルトン,池央耿
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1973/04
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (1件) を見る
スチュアート・ジェイスンによる”
(屠殺人シリーズは絶版)
最後に地獄を見た男 (創元推理文庫―インクィジター (214‐1))
- 作者: サイモン・クイン,水野谷とおる
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1984/07
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (1件) を見る
復讐のブラックゴールド (創元推理文庫 195-1 破壊工作班)
- 作者: リチャード L.グレーヴズ,佐和誠
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1979/08
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (1件) を見る
デストロイヤーの誕生 (創元推理文庫 159-1 殺人機械シリーズ 1)
- 作者: リチャード・サピア,ウォーレン・マーフィー,佐和誠
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1974/10
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (1件) を見る
- 作者: ジョゼフ・ローゼンバーガー,小鷹信光
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1981/09
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (2件) を見る
んで、彼らは世界を股にかけて活躍するので日本を舞台にした作品もあり、かつ、時代性を取り入れているので、70年代日本のテロリストといえば連合赤軍・日本赤軍なわけです。
SAS/日本連合赤軍の挑戦 (1979年) (創元推理文庫―プリンス・マルコ・シリーズ)
- 作者: ジェラール・ド・ヴィリエ,鈴木豊
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1979/06
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 1回
- この商品を含むブログ (1件) を見る
なんて安直なネーミングなんだ。
デス・マーチャント/悪夢の日本連合赤軍 (1982年) (創元推理文庫)
- 作者: ジョゼフ・ローゼンバーガー,伊藤哲
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1982/02
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 2回
- この商品を含むブログ (1件) を見る
そして、デス・マーチャントことリチャード・カメリオンとその仲間たちは、赤坂にある北朝鮮大使館に潜入し、激闘を繰り広げるのですが、この作者は日本と北朝鮮に国交がないことを知らなかったんですね。
現実的に考えると、ここで舞台になるのは千代田区富士見にある朝鮮総連中央本部のはずなんですが、あそこはいちおう民間団体だから、さすがにそれはまずいだろうなぁ。
それと、この作品が書かれた1978年にはとっくに連合赤軍は壊滅していますね。
- 作者: 山本直樹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/09/21
- メディア: コミック
- 購入: 15人 クリック: 221回
- この商品を含むブログ (168件) を見る
この小説の巻頭には、岡本公三の言葉が引用されていますが、そこでも彼の所属を「連合赤軍」と書いています。
この当時、中東で幾多のテロを行っていたのは「日本赤軍」ですからね。お間違えのないよう。
- 作者: 日本赤軍
- 出版社/メーカー: 話の特集
- 発売日: 1993/05
- メディア: 単行本
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (1件) を見る