君死にたまふことなかれ

<昨日より続く>

瀕死の大東徹源の元に、彼に危機を救われツン→デレ化を完了させたサラ姫がお見舞いに訪れました。

その刹那、徹源はかつて特攻基地で愛読した、与謝野晶子の歌を思い出します。

やわ肌の 熱き血潮に触れも見で
悲しからずや 道を説く君

特攻隊員が与謝野晶子なんて読んでいいんでしょうか。

みだれ髪 (新潮文庫)

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その辺の考証はともかく、「死に臨んで嘘はつきたくありません」と正直になろうとする徹源。

正直になりすぎたあまり、

あの世の土産に、姫の肌の女である部分を…
この指で触れたい!

などと口走ってしまいます。

さすがに姫も一瞬困った表情を浮かべ、徹源もこの期に及んで選択肢を間違ったかと後悔。

「ただ死に臨んでは正直でありたい。い、いや正直でありすぎました」
「もはや色情狂の恥辱にまみれ死ぬのみ」
「そ、そしてこの痴人の無礼に酬ゆる刺客を遣わされ、すみやかに死の苦しみより解き放ちてくださるのも歓迎」
と、フォローになってるのかどうかわからない台詞を、なぜか文語体で吐きます。


しかし、姫は無言で徹源の手を取ると、その手を自らの股間に導きます。

ああ ッ!!

熱い感動の声を漏らす徹源。

これまで、レンガを粉砕したりビール瓶を切ったりレスラーをブチのめしたりと酷使してきた指が、こんな幸せに恵まれて、
「大東徹源のカラテ阿呆一代もまんざらではなかったか!」
と大感激、「これであの世へ旅立てます」と感謝します。


しかし、姫は「もっと愛を究めなさいませ」と、徹源の下着を脱がせ、マウントポジションを取ります。

重態のはずなのになぜかアームド&デンジャラスな状態になっている徹源の下半身。

法悦境!!

つぶやいて一戦を終え、正気を取り戻すと事の重大さに気付きます。

この国では不義密通は男女とも斬首、しかも相手は皇太子の婚約者。

徹源は、「GGAN」となぜか英字のオノマトペ付きで衝撃を受けます。



それから一ヶ月。



重態だった徹源は、姫から精気を吸引したかのごとく回復しますが、サラ姫の妊娠が発覚、皇太子に監禁されます。

このことを、世話人オスマンから聞かされた徹源。


ガーンと今度はカタカナのオノマトペ付きで衝撃を受け、大量の汗をかき始めます。
怪しすぎ。


しかし、ゴルゴの機転もあってなんとか皇太子の尋問を切り抜けた徹源。


サラ姫は、怒り狂う皇太子によって鞭打ち・逆さ吊り・水責めの拷問(こればっかりなんだ、この漫画)を受けますがそれでも密通の相手を白状しません。


そこで皇太子は責め方を変え、イランから石油の商談に来た使節が持ってきたという、強烈無比な催淫効果のあるお香を嗅がせます。

柳生忍法帖・下 (講談社ノベルス)

柳生忍法帖・下 (講談社ノベルス)

柳生忍法帖」に出てきた獣心香みたいなもんだと思うんですが、そんな媚薬は存在しないというツッコミは野暮というものでしょう。

危ない薬

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苦痛には耐え抜いたサラ姫も、この責めにはさすがに耐えられず、朦朧とする意識の中でついに白状します。



しかし、この後に及んでも徹源の名前は出さず、その媚薬を持ってきたイラン人に濡れ衣を着せ、「この薬を嗅がされ理性を失い、不義をいたしました」と大嘘の言い訳をします。



イラン人も拷問を受けて嘘の自白を余儀なくされ、錯乱し喚きながら、こちらは秘密を守った満足感で落ち着き払っているサラ姫ともども、斬首されてしまいました。



「媚薬ゆえなら皇太子の面目も立つ」
「イランとの関係を絶ちたい、国の方針に有益」

などと言い、「愛は強しですのう」と、姫の機転を涙ながらに讃えるゴルゴですがちょっと待てや。


それじゃサッコ=バンゼッティ事件じゃないの。
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政治的に好ましくない人物に、冤罪を着せて処刑するというのだからとんでもない人権侵害ですが、これを美談として語ってしまうのだからもうむちゃくちゃな話です。


姫の刑死をゴルゴから聞かされた徹源は、「GAAAAAN」とまたローマ字のオノマトペ付きで衝撃を受け、涙とともに「グ…エッ」とゲロを吐き、

  • ドターン(倒れる音)
  • スデーン(さらに転がる音)
  • ガッガッガッ(壁に頭突きをかます音)
  • ゴロゴロゴロ(転げまわる音)

とさまざまなオノマトペ付きで全身で悲哀を表し、

  • ウオオオオ
  • ワオオオオ
  • ウアアアア
  • グアアアア
  • ウアアアアアン
  • ウオオオオン

とさまざまなオノマトペ付きで泣き叫びます。

わが悲哀、かのイラン人に劣らじ!
かのイラン人のごとく吾も咆えて哭く!

↑そりゃねえだろ、自分の身代わりに死んだ男にそんな。

姫よ、サラとばれしひと
過ぎたるは及ばざるがごとし…


汝、美しすぎたり!

汝、気高すぎたり!


その気儘に翻弄されし男ども、ぶざまにただ咆えて哭くのみ!

なぜか完全に文語調になってます。



こうして、ひたすら泣きつづけて完全に腑抜けた徹源。


オスマンが大東空手アラビア支部道場を作ってくれてもまったく無反応、道場開きを記念して世界中からあらゆる格闘家を招聘しての一大トーナメントを開催すると聞いてもまったくモチベーションが上がりません。相棒のゴルゴは一人でテンション上げてますが徹源は無気力のまま。


それでも、香港カンフーやらカポエラ使いやらを無気力ファイトで倒し、決勝でドイツのキャッチ王者(明らかにローラン・ボックをモデルにしているが時代設定ははるかに古いはず)と戦うことになります。

このトーナメントに要したページ数は、わずか20。
幽☆遊☆白書」の魔界トーナメント並みのすっ飛ばしぶりでした。

幽・遊・白書 完全版 15 (ジャンプコミックス)

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