イッツ・オーライ

古くから売れている本が新装版になると、表紙イラストが変わっていてとまどうことがあります。

http://d.hatena.ne.jp/nikuzombie/20070303
nikuzombieさんも言ってますが、

火星のプリンセス―合本版・火星シリーズ〈第1集〉 (創元SF文庫)

火星のプリンセス―合本版・火星シリーズ〈第1集〉 (創元SF文庫)

これが、
火星のプリンセス (冒険ファンタジー名作選(第1期))

火星のプリンセス (冒険ファンタジー名作選(第1期))

これに変わったのはまぁ「これはこれでアリ」という感じだと思います。


でも。



こないだ本屋で、笠井潔の「ヴァンパイヤー戦争」の文庫版を見かけたんですけどね。

何この萌え絵。


オレの知ってる「ヴァンパイヤー戦争」といえば、生頼範義先生の表紙イラストだったんですけどね。


近年の笠井先生は、TYPE-MOONの人たちと組んでいるらしいので、この講談社文庫版でも武内崇氏がイラストを手がけるようになったとのこと。


でもこの人の絵って、なんか「テキトーな絵だなー」という印象を受けるんですよね。

バイオレンスを全く感じさせないというか。


80年代ごろは、ライトノベル系の小説の中でも

  • SF&ファンタジー色の強いもの:文庫
  • 伝奇&バイオレンス色の強いもの:新書(ノベルズ)

という住み分けがありまして、新書の方では生頼先生とか天野喜孝先生とか永井豪ちゃん先生とかが表紙&挿絵を手がけ、エロス&バイオレンスの世界を余すところなく描き出していたものです。


最近は、ライトノベルといえば文庫の方が強いようですけどね。


もし「涼宮ハルヒの憂鬱」のイラストが生頼範義だったら、と想像するとおかしくてたまらない。


きっと売れなかっただろうなぁ。




まぁ「ヴァンパイヤー戦争」の表紙も、実はまだ許せる範囲だと思うんです。


どうしても許せないのが、角川文庫の現行版、横溝正史シリーズ。

殺人鬼 (角川文庫)

殺人鬼 (角川文庫)

いま売られている版では、表紙は味も素っ気もない一文字だけのものになっていますが、やはり角川の金田一耕助ものといえば、杉本一文画伯による美麗イラストが必要なのではないか、と強く訴えたいものであると!

http://www5d.biglobe.ne.jp/~mixed_up/yokomizo_gara_index.htm

しかも、10年ぐらい前(たしかトヨエツ版「八つ墓村」が公開されたころ)に「金田一耕助ファイル」として組みなおされたときからは、解説まで省かれてしまい、おおいに落胆したものです。


文庫本の解説というと、よくあるパターンとして

「解説から先に立ち読みしている人に告ぐ。すぐにこの本を買いなさい」

というのがまずあり、逆に購買意欲を殺がれるということもしばしば。


また、著者の知り合いが解説を書いてる場合などは、解説者がいかに著者と親しいかをアピールするような、内容にまったく関係のない思い出話に終始していることも多く、これまたなんだかなぁという感じを与えます。


しかし、横溝シリーズの解説は、その多くを中島河太郎か大坪直行が手がけており、収録作の初出や執筆の経緯などのデータに基づいた、しかし無味乾燥にならない味わいある文章は、まさに「これぞ解説」といいたいものでした。


巻末に「この作品には今日の人権擁護の観点からは好ましくない語句がうんぬん」なんてエクスキューズをわざわざ設けるぐらいなら、解説を収録しておいて欲しいんだけどなぁ。