Kill the king

http://d.hatena.ne.jp/FUKAMACHI/20060731
深町秋生先生のこちらのエントリを受けて、侍功夫師が書かれたエントリがこちら。
http://d.hatena.ne.jp/samurai_kung_fu/20060731#p1


「なぜ人を殺してはいけないのか」という問いは、ここ数年よく俎上に登る話題ですが、おそらく、誰もが納得する結論は誰にも提示できないもんなんでしょう。


でも、「プロレスとは何か」という問いに結論が出ないのは自明ですが、それを考えたことのないレスラーには決していい試合は
できない、とも言われています。

結論が出なくても、その問いについて思考をめぐらせること自体に価値がある、ということもありえますね。


そういうわけで、自分なりの考えをちょっと述べておこうかと。



なぜ、人は人を殺してはいけないのか。



わたしは、それを「王様だけの特権だから」だと考えています。



気に食わないヤツ、意に染まないヤツ、癪にさわるヤツを意のままに殺すことができ、しかもそれを「誅戮」なんて言葉で正当化して、誰からも咎められない。

それは、国家としての主権をわが手に握った「王様」にのみ許されることです。


それを、王ならぬ国民が行うのは、王様の権利を侵害する行為です。
だから罪とされ、罰せられるのです。



人を殺すこと自体がいけないのではありません。

だって、大義名分さえあれば人はたやすく人を殺しますし、罰せられることもありません。

「敵だから」「罪人だから」「テロリストだから」「売国奴だから」「反革命分子だから」という理由があれば人を殺してもいいのであれば、「人を殺してはいけない」なんて前提そのものがご都合主義にすぎないことになります。

ほんとうに「人を殺してはいけない」のであれば、どんな理由があったっていけないものはいけないはずでしょう?



人を殺すかどうかは王様が決めることです。大義名分は王様が与えるものです。

王様が「コイツを殺す」と決めてもいない人を、王様にもらった大義名分もなしに殺すのは、王様に逆らう行為だから罪なのです。




といっても、今の日本では、王様が「アイツを殺せ」と命令することはありません。

少なくとも、今の王様がそんな命令を下したことはないし、たぶん、次に王様になるジミー・ウォングによく似たあのお方もそんな命令はなさらないことでしょう。

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それは、あの方々が本当は王様でもなんでもないから、にすぎません。


今の日本では、王様の姿は誰にも見えません。


それは、特定の人間や組織・階層のことではなく、特定の思想や主義や宗教でもなく、それらを包括した社会の空気ですらない、もっと大きくておぞましい何かだから。



人を殺してはいけません。そんな疑問を持ってはいけません。

ワタシに逆らってはいけません。ワタシを疑ってはいけません。


王様は、いつもそう囁いている。