もえあがれ!ガンダム

いつの世も、革新的なものというのはなかなか理解されないものです。

機動戦士ガンダム」といえば、日本アニメ史上最大のエポックメイキングであるといっても過言ではないでしょう。「侵略宇宙人」やら「世界征服を企む悪の組織」やらではない、「国と国との戦争」を描いたことは画期的でした。

カニックやコスチュームの描写、青や緑の髪のキャラクターなどビジュアル面でもガンダムは斬新でしたが、最も革新的だったのは主人公のヘタレっぷりでしょう。

先行していたサンライズ・富野作品「無敵超人ザンボット3」や「無敵鋼人ダイターン3」と比べても、アムロの内向的な性格は際立ったものでした。
現在では、ロボットといえば内向的な少年、というぐらいに定着していますが、当時はなかなか受け容れられなかったでしょう。

この漫画は、放送当時(昭和54年)「冒険王」に連載されたコミカライズ版。
ストーリー自体は無難にテレビ版をなぞっていますが、細かい描写のはしばしに解釈の古さが滲み出ています。
ザクが足の裏からジェット噴射して飛び出す、とか(本当は背中のランドセルから)、ガンダムパンチでザクを撃破したりとかするのは当時のロボットアニメの文法にのっとったものといえるでしょう。作画の岡崎氏はダイナミックプロ出身の方なので、そちら方面の影響もあるのかもしれません。


しかし、何よりも違和感があるのがアムロが熱く燃える男だということです。


出撃するときには「アムロ、行きまーす!」ならぬ


ガンダム、ゴーッ!」


と叫び、「キサマらの思いどおりにはさせんぞ!ガンダムが相手だ!」と大見得を切ってガンダムハンマーでジオンのモビルスーツをバッタバッタとなぎ倒すというあたりもすごいですが、

ガルマ・ザビ国葬での、ギレン総帥の演説(「坊やだからさ」のアレ)とジークジオンの大合唱をテレビで見せられたアムロ。アニメやオリジンならビビりまくるところですが、この版では、


「うおーーっ!!」


と叫んでモニターに怒りの鉄拳をブチ込んで破壊。
拳を握り締め「負けんぞ・・・絶対にキサマらなどに負けるものか・・・!!」と気合を入れています。


・・・こんなのアムロじゃない。


革新的なものが受け容れられるまでには時間がかかるものなのですね。
ガンダムの顔にしても、当時のアニメーターには「描きにくい」と不評で、「最終回でジオングに吹っ飛ばされたときはみんなでバンザイをしました」と言っていた方もいたくらいです。


熱すぎるアムロに感じた違和感は、こちらで癒すと良いでしょう。

ガンダムの漫画版はいくつか出ていますが、安彦良和先生によるこれはやはり圧倒的に「本物」感がありますな。