愛と童貞の粟立ち

時代は2016年。とっくに40を過ぎたおじさんが、『キン肉マン』と『北斗の拳イチゴ味』のWEB連載を楽しみに読んでいるというのは異常事態というほかないですがが、まぁしょうがないよね。そういう人間、そういう人生なんですよオレは。


北斗の拳イチゴ味』も連載が長期化し、はや6巻。内容は安定のくだらなさで、「本編の単行本を見ながら真似して書く」作画もますます好調。ギャグ漫画なのでキャラが死なないという特性を活かし、「シュウvsトキ」「「サウザーvsハン」さまざまなドリームマッチを実現させてきたこの作品ですが、6巻では「ユダvsリュウガ」という、誰も想像すらしたことのない組み合わせが実現します。あとおまけの宣伝漫画で「エヴァンゲリオンvsサウザー」もあります。


南斗六星拳のうち、ひとりだけケンシロウの無想転生に入れないことを悩んでいたユダが、ケンシロウと戦うためのトレーニングとしてGOLANの大佐や拳王軍のリュウガと戦う、というストーリーはもはや誰が喜ぶのかわかりませんが、ギャグ漫画であるイチゴ味ではユダは使い勝手がいいらしく、出番は多めになっております。


また、ケンシロウへの報われぬ愛を秘めつつユリアに偽りの愛を向けるという、不毛な愛の生活を送っていたシンが、前巻で救出した天帝ルイ(子どものうちに救出したので目も健康)の保護者として「シンお兄ちゃん」と呼ばれるうちに新たなよろこびを知る、というあたりは、本編では全体の構想ができる前に登場し退場したため、不遇なキャラとなったシンへの救済という感じがします。


思えば、慈母の星を背負って生まれ、幼いころからあらゆる男たちに慈愛のまなざしを向けてきたユリアが、ひとりだけまったくその存在を認めず、ひたすらなじり続けたのがシンだったわけですよ。そういった、北斗初期キャラの悲哀を一身に背負ったのがシンなんだよなあ。ちなみにハート様も天帝ルイの可愛らしさに目を細めていて、単なる優しくて太ったおじさんになっているのが味わい深い。「イチゴ味」では、あのジャギも「兄弟を恨み続ける不毛な人生に嫌気が差し、善人になろうとするもののうまくいかず泣いている」といういいキャラになっているし、アミバすら真面目に医療行為をやっていて、トキから「使い方を間違えなければ人のためになる男」と評されているし、いまのところカイオウ以外のキャラクターはどれも基本的にそんなに悪人じゃないので、どの人物にも救済が用意されているといえなくもないというか。


あと、6巻では修羅の国からシャチがやってきて、ラオウに打倒カイオウを直訴するという展開もあるので、ストーリー的にはそろそろ大詰めという感じもしなくもないのですが、シャチには「一途な愛を熱く語る童貞」というキャラ設定が施されており、羅将ハンとのラブ問答がまた抱腹絶倒の面白さなので、この辺もまた盛り上がりそうです。